食うために軍人になりました【一人称版】

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第六章

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「という事は、また裏工作か。我々の出番は無さそうだな」

「だぁあああ! なぁ! グランツさんよぉ! 誰でもいいから始末していい敵はいないのかよぉ! 最近全然暴れてねぇんだ! 暇で暇で堪らねぇんだよ!」

 この戯け者が!
 此度の作戦でも十分に暴れられたというのに、性に合わないと来なかったのは貴様ではないかっ!
 何を勝手な事をほざいておるのか!?
 これだから最近の若造は困るのである!

「今は帝国と表立って構えるのはマズい。共和国も下手に軍事面で衝突すれば代議士どもの評判を上げる事になるやもしれん」

「だったら南の連邦はどうよ? あそこには強い獣人がいるんだろ? なんならついでに愛玩商品用に何匹か攫ってきてやるぜ?」

「やめよ! 今は水面下とはいえ帝国と共和国の2国と争っておるのだ! これ以上敵対国家を増やす事はならん!」

「いつも通り帝国に擦りつければいいだろ? 帝国人を装って獣人を攫い、帝国のクズどもに売りつける。そんで何匹かは途中で助けたフリをして連邦に送り届けるんだろ? 帝国の評判を下げて、フェンドラうちの評判を上げるいつものセコい作戦をやりゃあいいじゃねえか」

「なんだ? そんな事までしていたのか? 海神の誇りとやらが聞いて呆れるな」

「黙れ! 小童どもめっ! 何のためにそのような搦め手をしておるのかわかっておるのかっ!? フェンドラは海戦においての戦力は大陸でも屈指であろうが、大陸を支配するにはそれだけでは不可能である! 陸を支配するには陸戦の戦力が必要。しかし、我がフェンドラは島国であり、大陸と違って資源には限度があるのだ! 故に大陸を支配するには大陸の既存の戦力を利用するしかないのだ!」

「うるせぇ! そうやって影からコソコソとやってるのが気にいらねぇんだよ!」

「ならば貴様1人で乗り込んで敵を全て殴り飛ばしてみるがいい!」

「この老害爺が! だったら最初にテメェから殴り飛ばしてやろうか!」

「やれるものならやってみるがいいわ!」

 互いに胸ぐらを掴み合って睨み合い。
 この歳になってもまだこのような事をせねばならんとは!
 海神十二将の名折れである!

「やめろ。暑苦しくてかなわん。それに今はそんな事をしている程暇なのか?」

 ゴルオンめ。
 素知らぬ顔でのらりと言いおって!
 ……だが、確かにこのような蛮行をしておる場合ではないのである。

「ガルヴァン。貴様の意見はわかった。ならば、貴様にお似合いの仕事を一つくれてやるのである」

「あぁ? なんだよ?」

「共和国の百勇士どもを狩るのである。ただし、正体を悟られぬようにな。それさえ守ればやり方は任せるのである」

 ルークリア攻略最大の障害は百勇士。
 特に1から10までの奴等は国民に絶大な人気がある。
 代議士どもの評判が落ちても奴等がいる限り攻略は易々とは行くまい。
 ならば、今の内に排除しておくのもよかろう。

「いいじゃねぇか! それだよ、それ! そういう仕事をくれなきゃな! 百勇士なら誰でも構わないんだよなぁ?」

「構わぬ。だが、下位の者ではただ首が変わるだけで意味がない。上位の者を狙え。上位の首はそう簡単には変えられないからな」

「ますます良いじゃねぇか! だったら俺の狙いは決まってるぜ! 百勇士第二席! スティーグ・ルーストレームだ!」

 スティーグ・ルーストレームか。
 標的として不足はないのである。
 しかし、ガルヴァンめ。
 どこまでもシュナイデン男爵と張り合うか。
 それが仇となる日が来ねば良いがな。
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