食うために軍人になりました【一人称版】

KBT

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第六章

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 この怒りをどうしてくれよう?
 この憎しみをどうしてくれよう?
 この抑えきれない気持ちをどうしてくれよう!?
 のぉおおおおおお!
 リクトォオオオオオオオオオッ!

「そんなに殺気立つな。それこそ、嫁の貰い手がなくなるぞ? 小娘」

 おのれ!
 元凶のくせに忌々しい!
 それに嫁の貰い手がない、だと?
 そんな事、聞き慣れているわ!

「青い子ども殿! 今はリクトと話をしているのであって、貴殿は関係ない! 引っ込んでいてもらおう!」

「おお……僕の圧を跳ね除ける程の怒り……凄まじいな。でも、大事な話だから聞いて欲しいんだけど?」

「手短に!」

「は、はい……あの、僕とリクトは結婚してないよ?」

「失礼しました。青い子ども殿」

 勘違いだったか。
 もう、リクトの馬鹿っ!
 変な事を言うから、取り乱して恥を晒してしまったじゃないか。
 本当に、困った奴だ。

「はははっ! 君、なかなか面白いね。ちょっと興味が湧いたよ。それで? 此処に来た目的はリクト、でいいのかな?」

「はい! 任務中に行方不明となったシュナイデン中佐を捜索しておりました! 出来れば早く帰還して……」

「それは駄目だね」

 ……えっ? な、なぜ?
 だって、この祠の向こうにリクトは無事にいるんだろ?
 なら、すぐに帰ってくればいいじゃないか?
 ま、まさかっ!?

「そ、それは……」

「変なことはしてないよ。まぁ、一回くらいなら相手してやってもいいけど」

 このガキっ!
 敵うなら今すぐにでも、この剣の錆にしてくれるものをっ!

「すぐに怒らないの。冗談だよ、冗談。こいつが僕より強くならない限り、僕は身体を許す気は無いね」

「そ、それは良かっ……えっ? 僕より強くならないと、って……?」

 安堵と同時に一抹の不安が押し寄せてきた。
 今の発言、裏を返せば今の自分はリクトより強いって事か!?

「ジェニングス中将。悔しい話ですが、私が全力で戦っても、ここにいる魔族、フォルネアの足元にも及ばないのです」

 ば、馬鹿な……
 リクトは帝国最強と言っても過言では無いのだぞ?
 それが足元にも及ばない?
 魔族とは……それほどの種族なのか?
 それとも此処にいるフォルネアという魔族が別格なのか?

「まぁね! 僕は【上位種グレーター】だから当然だよ!」

「あの……魔族とは皆が皆、貴女ほどに強いのでしょうか?」

「うーん、僕くらい強い魔族はそう多くはないね。でも、そこにいる君達5人が全力で戦ってなんとか勝てるくらいのなら、たくさんいるよ」

 そんな……あり得ない!
 私達5人で戦えば、バランディンやコクトーにだって勝てるんだぞ!?
 それなのに……
 そんな奴らが大挙して帝国に攻め込んできたら……帝国は終わりだ。

「魔族とは敵対せぬ方がいいな……」

「何言ってんの? もう敵対してるじゃん?」

「……えっ?」

 耳を疑う言葉に私の思考は停止した。
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