食うために軍人になりました【一人称版】

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第七章

三国揃う

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 スティーグ・ルーストレーム。
 こいつは三年前のファルケンウッドの戦いで、リクトに魔眼をかけ、意識不明の重体に追いやった張本人だ。
 あの時はアリシアとファンティーヌの命がけの治療のおかげで、リクトは一命を取り留めたが、本当に危ないところだったのだ。
 その女が今ここに……

「あら、そんなにジッと見つめられては私、照れてしまいますわ。情熱的な視線をくださる貴女様の御名前をお聞きしてもよろしいでしょうか?」

「……シャーロット・フォン・ジェニングス。帝国軍中将です。スティーグ・ルーストレーム殿」

「これはこれは。光栄ですわ、ジェニングス閣下。まさか【帝国軍の女神】の視線を独占させてくださるなんて、感激して火照ってしまいそうです」

「そうか。ならば、その火照りを冷まさせて差し上げようか?」

 あからさまな挑発。
 だが、敢えて乗ってやる。
 この場で主導権を奴等に取らせるわけにはいかない。
 停戦、同盟、共闘など、そんなものは建前でしかない。
 敵の敵は味方というだけで、敵がいなくなれば味方が敵となる。
 ルークリアに至っては、戦力などほとんど残っていないのだから、デカい顔をさせるものか!

「ふふふっ、面白い方。でも、今日のところは止めておきます。貴女が目的ではないので」

「聞き捨てならないな。では……」

「そこまでにしてください。お茶会に来たのではありませんよ」

 ウォーレイク閣下の冷たい言葉が刺さった。
 しまった、私怨に囚われるなど軍人としてあるまじき行為だ。

「申し訳ありません、閣下。そして、サウデンベルク様にも失礼を致しました。どうかお許しを」

「いえ、こちらこそ失礼を。代わってお詫び申し上げます。それと、この話はこれまでとしましょう。彼の国に付け入る隙を与えるわけにはいきませんから」

 この男、ルークリアの代議士というから無能の塊かと思ったが、意外にまともではないか。
 頭を下げた私に傲る事なく、応じるなんて今までの奴等では考えられん。
 どうやら、篩にかけられて少しはマシな者が残ったようだな。

「これは皆様、お揃いで。お待たせして申し訳ありませぬ」

 見計らったかのようなタイミングで部屋に入ってきたのは、老齢ながら立派な体躯をした御仁と頭の悪そうな巨漢、それと対するような清楚な女だった。
 ようやくお目にかかれたな。
 リクトの仇ども。

「フェンドラを代表して馳せ参じました、グランツと申します。後ろにいるのはガルヴァンとシラナ、どうぞお見知りおきを」

「これはご丁寧に。では、改めましてご挨拶をさせていただきます。私はヴァランタイン帝国元帥、ジークフリード・フォン・ウォーレイク。控えているのはジェニングス中将です。よろしくお願いします」

「ルークリアのアルフォンス・サウデンベルクです。こちらはスティーグ・ルーストレーム、皆様にお会いできて光栄です」

 遂に揃ったな。
 ヴァランタイン帝国、ルークリア共和国、そしてフェンドラ。
 この三国が一堂に会するなど、これまで考えられなかった事だ。
 この事が、後の歴史でどう語られるか。
 それはこれからの話次第となる。
 だが、一つ言えることは、フェンドラの三人は肝を冷やすこととなろう。
 その時が来るのが楽しみだ。
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