食うために軍人になりました【一人称版】

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第七章

魔族との戦い

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 俺の全力の拳だ。
 いくら魔族でもこの一撃は……

「ぬがぁああああああ!」

「なにっ! うわぁ!」

 いつの間にか壁際まで吹っ飛ばされた。
 そして、左頬に激痛が走る。
 殴られたのか?
 全然見えなかったぞ。

「気を抜くな! 一瞬の油断が命とりになるぞ!」

 ウォーレイク閣下を守るように立っているフォルネアから檄が飛んできた。
 別に気を抜いていたつもりはないんだけどね。
 だけど、気を引き締めないといけないのには変わりない。

「おのれ! 許さんぞ! 人間如きがっ! この私に一撃を与えるなど、なんという傲慢っ! 楽に死ねると思うなよ! 小僧!」

 おいおい、随分と汚い言葉を言ってくれるじゃないか。
 誇り高い戦闘種族って話じゃなかったのか?
 まぁ、どこにでも例外はいるって事なのかもしれないけどね。
 何にしても相手は俺より格上の存在って事に変わりはない。

「おい、リクト! 部屋の中でやるんじゃない! このままだと巻き込むぞ。外でやれ!」

 巻き込む? あっ、閣下は普通の人間だった。
 確かに巻き込まれただけでもヤバい。
 俺は背後の窓から外に出た。

「待てっ!」

 すぐにガラビアも外にやって来る。
 俺が逃げるとでも思ったのか?
 生憎と逃げるつもりはさらさら無い。
 今度はこっちからいくぞ!

「っぁああああああ!」

「下賎なる劣等種がぁああ!」

 全力で突っ込む俺に動じる事なく、ガラビアがカウンターの一撃を繰り出してくる。
 それを紙一重で躱して、死角から勢いをのせた蹴りを放つが、それを受け止めて更に反撃してくるガラビア。
 本当に強い!
 これは本当に気を抜いてる暇なんかないぞ!

「くらえ!」

「ぐぁ! このっ!」

 躱しきれなかった拳が腹に刺さった。
 お返しに顔面に拳を叩き込んでやったけど、腹の痛みは尋常じゃない。
 今まで感じたことのない鈍い痛み。
 気を失えたら楽なんだろうけど、痛過ぎて逆に意識がはっきりしてくる。
 本気の魔族ってこんなに強いのかよ!

「小癪な人間め、少しは出来るようだな」

 乱れた息を整えながら、ガラビアが話しかけてきた。
 ちょうどいい。
 俺も一息つかせてもらおう。
 
「そいつはどうも。俺もアンタみたいに強い人は初めてだよ」

「アンタではない! 私はガラビア・ルーン・コルンガ! アマナ王国第69の侯爵だ! 見下した物言いはやめてもらおう」

 第69の侯爵ってのはよくわからないけど、アマナ王国にも階級があるって事がわかった。
 そういえば、さっきフォルネアにも同じ侯爵とか言ってたな。
 フォルネアも侯爵なんだろうか?

「人間よ、貴様にも名乗る許可をくれてやる。光栄に思え、名乗るがいい」

「ヴァランタイン帝国男爵にして帝国軍少将、リクト・フォン・シュナイデン」

「リクト、か。いいだろう。貴様のことは人間にしてはマシだったとして記憶に残しておいてやる」

「そうかい? 今に忘れられなくなるかもしれないぞ? 負けた相手としてな」

「調子に乗るなっ!」

 怒りの咆哮と共に、ガラビアが凄まじい速度で距離を詰めてきた。
 さぁ、戦いの第二幕の始まりだ!
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