476 / 480
第七章
決定
しおりを挟む
「……ヴァレフォール公爵」
ガレス公爵にとっても意外だったのか、表情に歪みが見える。
もっとも、それは俺も同じだがな。
「珍しいですね。卿が意見を出すなんて」
「今までは話す理由がなかっただけですよ。ですが、今回は私なりの色々思うところがありまして。僭越ながらルバス総統の御意見に賛成させていただきます」
こやつ、はっきりと言いおった。
どういうつもりだ。
正直、俺はここにいる者達の中でこいつを一番信用していない。
巧みな話術で他者を陥れて、その成果を掠め取るような、俺が最も唾棄すべき行為を平然とやる男だからな。
だからこそ、読めない。
こいつの真意が。
「ガレス公爵。ルバス総統の再侵攻計画よりも先に、アーモン侯爵の祭り期間における戦闘行為についての裁定が先にではありませんか?」
「なんですと?」
「そもそも今回の侵攻はアーモン侯爵の独断ですよね? それがなければ滞りなく祭りは終わり、ルバス総統の再侵攻計画も無かったわけです。事の発端はアーモン侯爵にあるのに、ルバス総統を責めるのは御門違いでしょう」
「むっ……」
「アーモン侯爵の意見は個人的な見解によるもので、魔族の神が推奨されたものではない。となると、祭りを穢したのは誰か? 侵攻計画の変更議題が発生したのは誰のせいか? 火を見るより明らかかと」
「こ、こいつ……」
ガレス公爵とアーモン侯爵の顔が更に歪む。
嫌いな男ではあるが、こういう場ではこいつに勝る者はいないだろう。
謀略の公爵ヴァレフォール。
恐ろしい男だ。
「し、しかし……」
「それともガレス公爵はアーモン侯爵の行いを容認していたのですか?」
ガレス公爵が反論を試みたが、機先を制したのはヴァレフォールだった。
そして、ヴァレフォールの言葉に黙っていた他の奴らが口を開く。
「おいおい、それだと話が変わってくるぜ? 祭りの最中に筆頭公爵が独断で軍を動かしたんだからな!」
「確かに私達の意見もバール王の意見も聞かずに動いたのであれば、それは私達に対する裏切りですわね。どういうおつもりかしら?」
ミジンとバイモンが口々にガレスに詰め寄った。
アーモンの独断なら奴を懲罰すれば事足りるが、筆頭公爵であるガレスが容認したとなれば話は別だ。
筆頭公爵は王に次ぐ権力を持っているが、同時に他の魔族を統括する役目を負っているのだ。
それが一魔族の蛮行を許したとなれば、それは役目を放棄したも同然の行為。
与えられた職責を全うしないの、魔族の神と王に対する背任となる。
だからこそ、先ほどまで我関せずだったミジンとバイモンが熱り立っているのだ。
口を開いていないが、ブエールの顔も険しいし、こうなってはガレスも厳しいだろう。
「……私がアーモン侯爵の行動を容認した事実はありません。ただ、行動に対する裁定を怠ったのは認めます」
「それはそれは。では、今すぐ裁定をお願いします」
ヴァレフォールが即座に畳み掛ける。
これで裁定を次回に持ち越す事は出来なくなった。
「わかりました……アーモン侯爵は当分の間謹慎とし、その間は自衛以外の戦闘行為を禁じます。そして、ヴァランタイン帝国に対しての再侵攻は……ルバス総統の提案に従い、半年後とします」
「わかりました」
やれやれ、これで奴らとの約束を違えずに済む。
しかし、高い代償となった。
ヴァレフォールには貸を作る形になり、アーモンとガレスからは睨まれる事になるだろう。
だが、いい。
一度、上位種魔族とも本当の闘いをしたかったからな。
人間どもの次の標的とするのも、また一興か。
ガレス公爵にとっても意外だったのか、表情に歪みが見える。
もっとも、それは俺も同じだがな。
「珍しいですね。卿が意見を出すなんて」
「今までは話す理由がなかっただけですよ。ですが、今回は私なりの色々思うところがありまして。僭越ながらルバス総統の御意見に賛成させていただきます」
こやつ、はっきりと言いおった。
どういうつもりだ。
正直、俺はここにいる者達の中でこいつを一番信用していない。
巧みな話術で他者を陥れて、その成果を掠め取るような、俺が最も唾棄すべき行為を平然とやる男だからな。
だからこそ、読めない。
こいつの真意が。
「ガレス公爵。ルバス総統の再侵攻計画よりも先に、アーモン侯爵の祭り期間における戦闘行為についての裁定が先にではありませんか?」
「なんですと?」
「そもそも今回の侵攻はアーモン侯爵の独断ですよね? それがなければ滞りなく祭りは終わり、ルバス総統の再侵攻計画も無かったわけです。事の発端はアーモン侯爵にあるのに、ルバス総統を責めるのは御門違いでしょう」
「むっ……」
「アーモン侯爵の意見は個人的な見解によるもので、魔族の神が推奨されたものではない。となると、祭りを穢したのは誰か? 侵攻計画の変更議題が発生したのは誰のせいか? 火を見るより明らかかと」
「こ、こいつ……」
ガレス公爵とアーモン侯爵の顔が更に歪む。
嫌いな男ではあるが、こういう場ではこいつに勝る者はいないだろう。
謀略の公爵ヴァレフォール。
恐ろしい男だ。
「し、しかし……」
「それともガレス公爵はアーモン侯爵の行いを容認していたのですか?」
ガレス公爵が反論を試みたが、機先を制したのはヴァレフォールだった。
そして、ヴァレフォールの言葉に黙っていた他の奴らが口を開く。
「おいおい、それだと話が変わってくるぜ? 祭りの最中に筆頭公爵が独断で軍を動かしたんだからな!」
「確かに私達の意見もバール王の意見も聞かずに動いたのであれば、それは私達に対する裏切りですわね。どういうおつもりかしら?」
ミジンとバイモンが口々にガレスに詰め寄った。
アーモンの独断なら奴を懲罰すれば事足りるが、筆頭公爵であるガレスが容認したとなれば話は別だ。
筆頭公爵は王に次ぐ権力を持っているが、同時に他の魔族を統括する役目を負っているのだ。
それが一魔族の蛮行を許したとなれば、それは役目を放棄したも同然の行為。
与えられた職責を全うしないの、魔族の神と王に対する背任となる。
だからこそ、先ほどまで我関せずだったミジンとバイモンが熱り立っているのだ。
口を開いていないが、ブエールの顔も険しいし、こうなってはガレスも厳しいだろう。
「……私がアーモン侯爵の行動を容認した事実はありません。ただ、行動に対する裁定を怠ったのは認めます」
「それはそれは。では、今すぐ裁定をお願いします」
ヴァレフォールが即座に畳み掛ける。
これで裁定を次回に持ち越す事は出来なくなった。
「わかりました……アーモン侯爵は当分の間謹慎とし、その間は自衛以外の戦闘行為を禁じます。そして、ヴァランタイン帝国に対しての再侵攻は……ルバス総統の提案に従い、半年後とします」
「わかりました」
やれやれ、これで奴らとの約束を違えずに済む。
しかし、高い代償となった。
ヴァレフォールには貸を作る形になり、アーモンとガレスからは睨まれる事になるだろう。
だが、いい。
一度、上位種魔族とも本当の闘いをしたかったからな。
人間どもの次の標的とするのも、また一興か。
1
あなたにおすすめの小説
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜
霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!!
「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」
回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。
フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。
しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを……
途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。
フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。
フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった……
これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である!
(160話で完結予定)
元タイトル
「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」
最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)
みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。
在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる