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一章 ベロリン王国編
特殊能力
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「秀島脩、か。久しぶりに聞くと、何だか他人みたいだな」
遠くをぼんやりと眺める脩さんは少し寂しそうに呟いた。それだけでこの世界に来たのが昨日や今日じゃないって事がわかる。子どもまでいるんだもんなぁ。
「それで、成吾君……」
「セイゴでいいですよ。その方がお互いにしっくり来るでしょうし」
日本名で話し続けて、脩さんに望郷を感じさせるのは避けた方がいいだろうし、俺も慣れないといけないからな。俺の意図が伝わったのか、軽く頭を下げてシュウさんは俺を椅子に促した。
「一応、先に言っておくよ。俺は元の世界に帰る方法は知らないからね」
「別に構いませんよ。どうせ帰ってもつまらない人生が待ってるだけなんで」
「そうかい? なら良かったよ。昔会った子は『隠さずに教えろ!』って結構大変だったからさ」
まぁ、帰りたい人もいるだろう。みんながみんな異世界に憧れているわけじゃない。努力して幸せな生活を築いた人からすれば、異世界転生なんて最悪でしかないからな。
「じゃあ、セイゴは何が聞きたくてここへ来たんだい?」
「俺達の身に起こった事について。それと特殊能力についても出来れば教えて欲しいです。なんせ『ハズレ』呼ばわりで捨てられたもんで」
「あははははっ! 相変わらずだな、あの一族は。まるで変わっちゃいない。いいよ。俺が知ってる限りの話をしよう」
それからシュウさんは自分の身に起こった事を静かに語り始めた。シュウさんは今から20年も前、先代の王の時代にこの世界に召喚されたらしい。召喚された理由は俺と同じ。戦争のための戦力として召喚されたんだそうだ。だけどステータスは平凡で、戦力にはならないと判断されたそうだけど、俺みたいにすぐに捨てられるような事はなく、何かの役に立つんじゃないかと城で兵士として働かされたらしい。
それから一年後、次に召喚された人がかなり優秀だったそうで、シュウさんは兵士から下働きに降格させられ、更に一年後には『お前のようなハズレはいらん』と城からも追い出されたそうだ。うん、先代も今代もマジで王はクソだな!
「城から追い出されたけど、特殊能力があったから何とか王都の冒険者ギルドで働けてね。おかげで寝食に困る事はなかったよ」
「不幸中の幸いですね。ちなみにシュウさんの特殊能力って何ですか?」
「俺の特殊能力は【解体】だ。どんな生物でも解体できるって特殊能力だよ」
「ええっ! めちゃくちゃ使える特殊能力じゃないですか! それが何でハズレなんて言われるんですか!?」
「この世界はいわゆるファンタジーの世界だ。つまり熟練の解体職人なんて城にも冒険者ギルドにもたくさんいるんだよ。実際、知識と経験で俺より早く解体出来る人もいるからね。それに奴等に必要なのは戦力になる特殊能力だ。だから、戦闘に使えない物は全部ハズレなんだよ」
戦いに役立つ特殊能力だけが必要で、それ以外はハズレって……勝手し放題のクソッタレ共が! 本当に人の上に立つ器量があるのか? いや、絶対にない! あるわけがない! 世襲制ってマジでクソだわ!
「まぁ、ハズレで良かったと思うよ。戦いに役立つ特殊能力を持った人や、ステータスが高い人達は有無を言わさずに全員戦場に送られたからね。俺が追い出された原因になった人も、何年か前に戦死したって聞いた。他の人達もどうなったかわからない事を考えると、ハズレで良かったのさ」
「い、言われてみれば……何人くらいが戦場に送られたんですか?」
「異世界人の召喚は儀式の特性上、年に一度しかできないらしい。俺が最初で、君でちょうど20人目になる。戦場に送られたのは俺が知っているだけでも10人はいたと思うよ」
10人以上が戦場に行かされたのか、最悪だな。平和な生活から一転していきなり戦場なんて地獄でしかないだろうし、そもそも戦う理由がない。俺も万が一、当たりとか言われていたら、今頃戦場に送り込まれて、見知らぬ世界の見知らぬ人間を殺す羽目になっていたのかもしれない。そういう意味ではシュウさんの言うとおり、ハズレで良かったのかもしれないな。
「ところでセイゴ君の特殊能力を聞いてもいいか?」
「はい、【四字熟語】です」
「よ、四字熟語? それはまた日本独特の能力を授かったな。どんな力があるんだい?」
「それがよくわからないですよ。城でもわけがわからないって言われましたし、ただ俺の推察で言うと、四字熟語の意味を顕現出来る能力じゃないかなと」
「四字熟語の意味を顕現?」
俺は森狼と戦った時の状況を伝えて、その上で特殊能力【四字熟語】の効果の推察を話した。
すると、シュウさんの顔が段々と険しくなり、やがて眼を閉じて考え込んでしまった。なんかヤバい事を言ったかな? 営業の時、契約が破談にされる時と同じような緊迫した雰囲気が倉庫内に流れる。やがて徐ろに目を開けたシュウさんが重たい口を開けた。
「セイゴ。今すぐ出て行きなさい」
えぇえええええええ!
こ、孤立無縁。
俺はいきなり同郷の仲間を失った。
遠くをぼんやりと眺める脩さんは少し寂しそうに呟いた。それだけでこの世界に来たのが昨日や今日じゃないって事がわかる。子どもまでいるんだもんなぁ。
「それで、成吾君……」
「セイゴでいいですよ。その方がお互いにしっくり来るでしょうし」
日本名で話し続けて、脩さんに望郷を感じさせるのは避けた方がいいだろうし、俺も慣れないといけないからな。俺の意図が伝わったのか、軽く頭を下げてシュウさんは俺を椅子に促した。
「一応、先に言っておくよ。俺は元の世界に帰る方法は知らないからね」
「別に構いませんよ。どうせ帰ってもつまらない人生が待ってるだけなんで」
「そうかい? なら良かったよ。昔会った子は『隠さずに教えろ!』って結構大変だったからさ」
まぁ、帰りたい人もいるだろう。みんながみんな異世界に憧れているわけじゃない。努力して幸せな生活を築いた人からすれば、異世界転生なんて最悪でしかないからな。
「じゃあ、セイゴは何が聞きたくてここへ来たんだい?」
「俺達の身に起こった事について。それと特殊能力についても出来れば教えて欲しいです。なんせ『ハズレ』呼ばわりで捨てられたもんで」
「あははははっ! 相変わらずだな、あの一族は。まるで変わっちゃいない。いいよ。俺が知ってる限りの話をしよう」
それからシュウさんは自分の身に起こった事を静かに語り始めた。シュウさんは今から20年も前、先代の王の時代にこの世界に召喚されたらしい。召喚された理由は俺と同じ。戦争のための戦力として召喚されたんだそうだ。だけどステータスは平凡で、戦力にはならないと判断されたそうだけど、俺みたいにすぐに捨てられるような事はなく、何かの役に立つんじゃないかと城で兵士として働かされたらしい。
それから一年後、次に召喚された人がかなり優秀だったそうで、シュウさんは兵士から下働きに降格させられ、更に一年後には『お前のようなハズレはいらん』と城からも追い出されたそうだ。うん、先代も今代もマジで王はクソだな!
「城から追い出されたけど、特殊能力があったから何とか王都の冒険者ギルドで働けてね。おかげで寝食に困る事はなかったよ」
「不幸中の幸いですね。ちなみにシュウさんの特殊能力って何ですか?」
「俺の特殊能力は【解体】だ。どんな生物でも解体できるって特殊能力だよ」
「ええっ! めちゃくちゃ使える特殊能力じゃないですか! それが何でハズレなんて言われるんですか!?」
「この世界はいわゆるファンタジーの世界だ。つまり熟練の解体職人なんて城にも冒険者ギルドにもたくさんいるんだよ。実際、知識と経験で俺より早く解体出来る人もいるからね。それに奴等に必要なのは戦力になる特殊能力だ。だから、戦闘に使えない物は全部ハズレなんだよ」
戦いに役立つ特殊能力だけが必要で、それ以外はハズレって……勝手し放題のクソッタレ共が! 本当に人の上に立つ器量があるのか? いや、絶対にない! あるわけがない! 世襲制ってマジでクソだわ!
「まぁ、ハズレで良かったと思うよ。戦いに役立つ特殊能力を持った人や、ステータスが高い人達は有無を言わさずに全員戦場に送られたからね。俺が追い出された原因になった人も、何年か前に戦死したって聞いた。他の人達もどうなったかわからない事を考えると、ハズレで良かったのさ」
「い、言われてみれば……何人くらいが戦場に送られたんですか?」
「異世界人の召喚は儀式の特性上、年に一度しかできないらしい。俺が最初で、君でちょうど20人目になる。戦場に送られたのは俺が知っているだけでも10人はいたと思うよ」
10人以上が戦場に行かされたのか、最悪だな。平和な生活から一転していきなり戦場なんて地獄でしかないだろうし、そもそも戦う理由がない。俺も万が一、当たりとか言われていたら、今頃戦場に送り込まれて、見知らぬ世界の見知らぬ人間を殺す羽目になっていたのかもしれない。そういう意味ではシュウさんの言うとおり、ハズレで良かったのかもしれないな。
「ところでセイゴ君の特殊能力を聞いてもいいか?」
「はい、【四字熟語】です」
「よ、四字熟語? それはまた日本独特の能力を授かったな。どんな力があるんだい?」
「それがよくわからないですよ。城でもわけがわからないって言われましたし、ただ俺の推察で言うと、四字熟語の意味を顕現出来る能力じゃないかなと」
「四字熟語の意味を顕現?」
俺は森狼と戦った時の状況を伝えて、その上で特殊能力【四字熟語】の効果の推察を話した。
すると、シュウさんの顔が段々と険しくなり、やがて眼を閉じて考え込んでしまった。なんかヤバい事を言ったかな? 営業の時、契約が破談にされる時と同じような緊迫した雰囲気が倉庫内に流れる。やがて徐ろに目を開けたシュウさんが重たい口を開けた。
「セイゴ。今すぐ出て行きなさい」
えぇえええええええ!
こ、孤立無縁。
俺はいきなり同郷の仲間を失った。
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