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一章 ベロリン王国編
真夜中の旅立ち
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唖然失笑。
俺はいきなり突きつけられた別れに、悲しみを通り越して最早笑うしかなかった。俺は望郷の仲間にまで捨てられるのか? 俺ってそんなにハズレなのか?
「す、すまない! 言葉が足りなかった! 出ていけって言うのはそういう意味じゃない! 避難した方がいいって意味だ!」
「……避難?」
「そうだ。今の段階では推測の域を出ないが、君の特殊能力は間違いなくステータスを上昇させるものだ。でなければ、レベル1でステータス平凡の君が森狼に勝てるわけがない」
「まぁ、そうですね。それと避難がどう関係あるんですか?」
「わからないか? ステータスを上昇させられるって事は戦闘に応用できる特殊能力って事だ。端的に言えば君の特殊能力戦いに役立つ特殊能力なんだよ。もし、ベロリン王が君の特殊能力【四字熟語】の真価に気づいたらどうすると思う?」
げっ!? そ、そういう事か! 俺の特殊能力が戦力になる能力だとバレたら王は絶対に俺を連れ戻そうとする! そうなったら俺は戦場に……冗談じゃない! 絶対に嫌だ!
「わかったみたいだな。今すぐ気付かれる事はないと思うけど、森の主である森狼を見知らぬ旅人が素手で倒したなんて噂が王都に流れたら疑われる可能性はある。そうなる前にこの国を出た方がいい」
「わ、わかりました! でも、何処に行けば……」
「森を抜けた先に街道がある。それを西に行けば今ならまだウィダー王国に行ける筈だ」
「今ならまだ?」
「ベロリン王国は大陸の最南端にある国で北側は二つの国と隣接している。北西がウィダー王国で、北東がマルタン王国だ。マルタン王国とは戦争中だから国境が閉鎖されていて行けないが、ウィダー王国なら行けるだろう。ただ、噂では王はウィダー王国にも戦争を仕掛けようとしているって話だから急いだ方がいい」
あ、あの愚王め! 考え無しに戦争しやがって! 二正面作戦とかあり得ないだろ! そんな事より今はこの国を出るのが優先だ! 俺はこの世界で自由に生きると決めたんだ。戦場で死ぬなんて御免だよ!
「とにかくすぐに出発した方がいい。それから村長は君をこの村に引き止めようとするだろうから誰にも見つからないように出て行くんだよ」
「どうしてですか?」
「森狼を素手で倒せる人だよ? そんな人は今後のトラブル解決要員として使い勝手がいい。だから、娘や村の女達を君にけしかけて、既成事実を作らせて情に訴えるくらいはやるだろうさ」
危なかった! あれって、そういうハニートラップだったの? ありがとう、俺の倫理観! いい仕事しましたよ!
「荷物は村長の家かい? 取りに戻るのはマズいと思うけど」
「大丈夫です。背負袋には大した物は入ってないですし、お金は肌身離さず持ってますから」
「いいね。この世界でその用心深さは大事だよ。じゃあ後は森狼の素材だな。これが皮と牙と爪だ。これを冒険者ギルドに持って行けば買い取ってくれる。商店でも売れなくはないが、ぼったくられるかもしれないからお勧めはしない」
ぼったくり、やっぱりあるんだ。そういや、ぼったくり以前に貨幣価値もわからないんだったっけ。
「お金ってやっぱり銅貨とか銀貨ですか?」
「銅貨や銀貨には違いないけど、各国で発行されていて大陸で統一された通貨はない。とりあえずベロリン通貨の価値はイメージ的にはこんな感じだ」
ベロリン銅貨 100円
ベロリン大銅貨 1000円
ベロリン銀貨 10000円
ベロリン金貨 100000円
ベロリン白金貨 1000000円
統一通貨がないのは面倒だけど、外貨為替取引と思えばそう難しくもないか。このレートだと俺の手持ちは大銅貨3枚と銅貨6枚だから……3600円?
王がケチなのか、兵士が中抜きしたのかわからないけど、どちらにしても酷すぎるだろ?
「統一通貨はないけど、商業ギルドが発行している信用通貨なら一部の国を除いて大抵の国では使えるから、旅を続けるならそっちの方がいいかもしれない。信用通貨の換金は冒険者ギルドか商業ギルドで出来るからね」
「本当に何から何まで、ありがとうございます。御恩は一生忘れません」
「気にしないでくれ。俺も同郷の人をむざむざと戦場に送りたくはないからね。さぁ、この背嚢の中に森狼の素材と旅に使えそうな物を入れてある。早く行くんだ」
「はい。シュウさんもお元気で」
背嚢を受け取り、ショウさんに別れを告げて真夜中になっても騒がしい村をひっそりと出て行った。
孤影悄然。
俺の自由な人生の門出は暗く寂しいものになってしまったが、願わくばこの後の人生は明るく楽しいものになりますように。
俺はいきなり突きつけられた別れに、悲しみを通り越して最早笑うしかなかった。俺は望郷の仲間にまで捨てられるのか? 俺ってそんなにハズレなのか?
「す、すまない! 言葉が足りなかった! 出ていけって言うのはそういう意味じゃない! 避難した方がいいって意味だ!」
「……避難?」
「そうだ。今の段階では推測の域を出ないが、君の特殊能力は間違いなくステータスを上昇させるものだ。でなければ、レベル1でステータス平凡の君が森狼に勝てるわけがない」
「まぁ、そうですね。それと避難がどう関係あるんですか?」
「わからないか? ステータスを上昇させられるって事は戦闘に応用できる特殊能力って事だ。端的に言えば君の特殊能力戦いに役立つ特殊能力なんだよ。もし、ベロリン王が君の特殊能力【四字熟語】の真価に気づいたらどうすると思う?」
げっ!? そ、そういう事か! 俺の特殊能力が戦力になる能力だとバレたら王は絶対に俺を連れ戻そうとする! そうなったら俺は戦場に……冗談じゃない! 絶対に嫌だ!
「わかったみたいだな。今すぐ気付かれる事はないと思うけど、森の主である森狼を見知らぬ旅人が素手で倒したなんて噂が王都に流れたら疑われる可能性はある。そうなる前にこの国を出た方がいい」
「わ、わかりました! でも、何処に行けば……」
「森を抜けた先に街道がある。それを西に行けば今ならまだウィダー王国に行ける筈だ」
「今ならまだ?」
「ベロリン王国は大陸の最南端にある国で北側は二つの国と隣接している。北西がウィダー王国で、北東がマルタン王国だ。マルタン王国とは戦争中だから国境が閉鎖されていて行けないが、ウィダー王国なら行けるだろう。ただ、噂では王はウィダー王国にも戦争を仕掛けようとしているって話だから急いだ方がいい」
あ、あの愚王め! 考え無しに戦争しやがって! 二正面作戦とかあり得ないだろ! そんな事より今はこの国を出るのが優先だ! 俺はこの世界で自由に生きると決めたんだ。戦場で死ぬなんて御免だよ!
「とにかくすぐに出発した方がいい。それから村長は君をこの村に引き止めようとするだろうから誰にも見つからないように出て行くんだよ」
「どうしてですか?」
「森狼を素手で倒せる人だよ? そんな人は今後のトラブル解決要員として使い勝手がいい。だから、娘や村の女達を君にけしかけて、既成事実を作らせて情に訴えるくらいはやるだろうさ」
危なかった! あれって、そういうハニートラップだったの? ありがとう、俺の倫理観! いい仕事しましたよ!
「荷物は村長の家かい? 取りに戻るのはマズいと思うけど」
「大丈夫です。背負袋には大した物は入ってないですし、お金は肌身離さず持ってますから」
「いいね。この世界でその用心深さは大事だよ。じゃあ後は森狼の素材だな。これが皮と牙と爪だ。これを冒険者ギルドに持って行けば買い取ってくれる。商店でも売れなくはないが、ぼったくられるかもしれないからお勧めはしない」
ぼったくり、やっぱりあるんだ。そういや、ぼったくり以前に貨幣価値もわからないんだったっけ。
「お金ってやっぱり銅貨とか銀貨ですか?」
「銅貨や銀貨には違いないけど、各国で発行されていて大陸で統一された通貨はない。とりあえずベロリン通貨の価値はイメージ的にはこんな感じだ」
ベロリン銅貨 100円
ベロリン大銅貨 1000円
ベロリン銀貨 10000円
ベロリン金貨 100000円
ベロリン白金貨 1000000円
統一通貨がないのは面倒だけど、外貨為替取引と思えばそう難しくもないか。このレートだと俺の手持ちは大銅貨3枚と銅貨6枚だから……3600円?
王がケチなのか、兵士が中抜きしたのかわからないけど、どちらにしても酷すぎるだろ?
「統一通貨はないけど、商業ギルドが発行している信用通貨なら一部の国を除いて大抵の国では使えるから、旅を続けるならそっちの方がいいかもしれない。信用通貨の換金は冒険者ギルドか商業ギルドで出来るからね」
「本当に何から何まで、ありがとうございます。御恩は一生忘れません」
「気にしないでくれ。俺も同郷の人をむざむざと戦場に送りたくはないからね。さぁ、この背嚢の中に森狼の素材と旅に使えそうな物を入れてある。早く行くんだ」
「はい。シュウさんもお元気で」
背嚢を受け取り、ショウさんに別れを告げて真夜中になっても騒がしい村をひっそりと出て行った。
孤影悄然。
俺の自由な人生の門出は暗く寂しいものになってしまったが、願わくばこの後の人生は明るく楽しいものになりますように。
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