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第一章
歌う花嫁亭
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酒が入れば気が大きくなる。
それは元の世界も異世界も変わりは無い。
いや、ハンターなど明日をも知れない肉体労働者が大半の異世界ではその喧騒はより大きなものとなろう。
ここ《歌う花嫁亭》でも店の壁が揺れんばかりの酒の混じった大歓声が裏通り中に響くほど上がっていた。
しかし、そんな中にあって辛気臭い空気を漂わせながら酒をあおる一人の男がいた。
もちろんサトである。
「はぁ……」
「そう落ち込むで無い。まだまだこれからじゃよ」
落ち込むサトの肩にロンメルは手を置いて励まそうとするが、今のサトには響かなかった。
自分に合った武器を探す事になり、ロンメルの店中の武器を試したが、サトにはどれもしっくりこなかった。
パワーが足りない。
バランス感覚が悪い。
体幹が弱い。
柔軟性がない。
手先が不器用。
サトはどこまでも荒事に向いていなかったのだ。
こんな自分が異世界でやっていけるのか心配になり、すっかり自信を無くしてしまったのだった。
「何もそこまで落ち込まんでもええじゃろ。まだ試しておらん武器もあるからのぅ」
「ううぅ……お、俺は駄目な男なんだ……」
「やれやれ、おまけに泣き上戸とは厄介なやつじゃ……とんでもないやつを拾ってしまったのかも知れんな」
酒に強く無いことをサトは自覚していたが、落ち込むあまり酒に手を出してしまったのだ。
「ロンメル爺さん! あっ? なんだ? どうしたんだ、こいつは?」
ロンメルに声をかけたのは、如何にもハンターと言わんばかりのスケイルメイルを着込んだ男だった。
「いや、気にせんでええ。明日からはウチで働く従業員のサトじゃ。よろしくの」
「こいつが? 大丈夫なのかよ? 爺さんの眼は信頼してっけど、こいつの眼はなぁ……」
男が不安がるのも当然だった。
ハンター達は自身が命懸けで狩ってきた魔物の素材を売る事で金を得ている。
いい加減な査定をされて自分達の取り分が減ってしまっては目も当てられない。
しかし、これは店側にとっても同様だ。
店は買い取った品を加工や装飾を施して他者に売る事で利益を得る。
査定をいい加減にしていると、その評判はハンター達にすぐに知れ渡ってしまう。
持込みがなくなれば在庫が無くなってしまい、商売が成り立たなくなる。
買取査定とは客と店の双方にとって重要な柱なのである。
「爺さん。俺はアンタの眼は信用してるけど、こいつの眼は信用できない。悪いがしばらくの間は他の店に買取を……」
「メッキか……」
自身の声にかき消されそうな程の小さな声を男は聞き逃さなかった。
「おい、兄さんよ。メッキとはどう言う事だ?」
「どうも何も、貴方の剣がメッキだからそういうのもアリなんだと思っただけだよ」
「な、なんだとぉおおおお!」
男の悲鳴にも似た声が店内を支配した
それは元の世界も異世界も変わりは無い。
いや、ハンターなど明日をも知れない肉体労働者が大半の異世界ではその喧騒はより大きなものとなろう。
ここ《歌う花嫁亭》でも店の壁が揺れんばかりの酒の混じった大歓声が裏通り中に響くほど上がっていた。
しかし、そんな中にあって辛気臭い空気を漂わせながら酒をあおる一人の男がいた。
もちろんサトである。
「はぁ……」
「そう落ち込むで無い。まだまだこれからじゃよ」
落ち込むサトの肩にロンメルは手を置いて励まそうとするが、今のサトには響かなかった。
自分に合った武器を探す事になり、ロンメルの店中の武器を試したが、サトにはどれもしっくりこなかった。
パワーが足りない。
バランス感覚が悪い。
体幹が弱い。
柔軟性がない。
手先が不器用。
サトはどこまでも荒事に向いていなかったのだ。
こんな自分が異世界でやっていけるのか心配になり、すっかり自信を無くしてしまったのだった。
「何もそこまで落ち込まんでもええじゃろ。まだ試しておらん武器もあるからのぅ」
「ううぅ……お、俺は駄目な男なんだ……」
「やれやれ、おまけに泣き上戸とは厄介なやつじゃ……とんでもないやつを拾ってしまったのかも知れんな」
酒に強く無いことをサトは自覚していたが、落ち込むあまり酒に手を出してしまったのだ。
「ロンメル爺さん! あっ? なんだ? どうしたんだ、こいつは?」
ロンメルに声をかけたのは、如何にもハンターと言わんばかりのスケイルメイルを着込んだ男だった。
「いや、気にせんでええ。明日からはウチで働く従業員のサトじゃ。よろしくの」
「こいつが? 大丈夫なのかよ? 爺さんの眼は信頼してっけど、こいつの眼はなぁ……」
男が不安がるのも当然だった。
ハンター達は自身が命懸けで狩ってきた魔物の素材を売る事で金を得ている。
いい加減な査定をされて自分達の取り分が減ってしまっては目も当てられない。
しかし、これは店側にとっても同様だ。
店は買い取った品を加工や装飾を施して他者に売る事で利益を得る。
査定をいい加減にしていると、その評判はハンター達にすぐに知れ渡ってしまう。
持込みがなくなれば在庫が無くなってしまい、商売が成り立たなくなる。
買取査定とは客と店の双方にとって重要な柱なのである。
「爺さん。俺はアンタの眼は信用してるけど、こいつの眼は信用できない。悪いがしばらくの間は他の店に買取を……」
「メッキか……」
自身の声にかき消されそうな程の小さな声を男は聞き逃さなかった。
「おい、兄さんよ。メッキとはどう言う事だ?」
「どうも何も、貴方の剣がメッキだからそういうのもアリなんだと思っただけだよ」
「な、なんだとぉおおおお!」
男の悲鳴にも似た声が店内を支配した
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