鑑定能力で恩を返す

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第一章

3人組との邂逅

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 ロンメルの店は閑古鳥が鳴いていた。
 開店してから約2時間が経過するが、まだ客は1人も来ていない。
 そんな状況でもロンメルは焦った様子もなく、のんびりとお茶を飲み、サトはソワソワしながら掃除を繰り返していた。

「これこれ、サト。そんなにせかせか動かんでええぞ。こっちが落ち着かんわい」

「で、ですが、朝から1人もお客さん来てないじゃないですか? 大丈夫なんでしょうか? まさか昨日の事が原因で……」

「気にし過ぎじゃよ。ウチはこれがいつも通りなんじゃ。中央通りの店でもひっきりなしに客が来る事などないわい」

 現代日本に生きてきたサトにとって、開店から2時間経っても客が来ないのは死活問題に近かった。
 しかし、ここは異世界である。
 いくら大都市である公都ハメルンでも裕福なのは貴族か大商人だけで、他の市民達はそれほど余裕がある生活をしているわけではない。
 気軽にショッピングを楽しむ事などあり得ないのだ。

「それにウチはハンター相手の商売がメインじゃからな。ハンターの大半は外に出ておる時間じゃから、来なくて当たり前じゃよ」

「じゃあ、帰ってくる時間に合わせて店を開ければいいんじゃないんですか? その分、深夜まで開けておくとか」

「朝方にダンジョンに篭っておる奴らが帰ってくる事もあるからの。それと深夜なんぞ開けておったら、酔ったハンター達に店中荒らされるわい」

 この辺りも現代日本との違いである。
 この世界には警察はおらず、騎士団が治安を守っているが、広大な領地に対してその数は少ない。
 結果として夜間などは特に治安が悪くなるのだ。

「まぁ、朝早くから開けて昼過ぎに閉める店もあるがの。ウチは他と一緒じゃよ。おっ、客が来たようじゃぞ」

「えっ?」

 ロンメルの言葉にサトは扉の方を向くと、そこには3人組の男が立っていた。

「よぉ、爺さん。元気だったかい?」

「お久しぶりで~す。あれ? そっちの人は見た事ないなぁ」

「むっ? 誰だ?」

 3人組の男達はロンメルに挨拶しながらカウンター前にやってきた。

「お前さん達も元気そうで何よりじゃ。隣におるのはサト。ウチで働くことになった男じゃ。まぁ、よろしくの」

「よ、よろしくお願いします」

「そういうことか。俺の名前はジュリアン。凄腕のハンターだ。よろしく!」

 ジュリアンは目と鼻をマスクで隠していたが、口調は穏やかで陰険な印象はない。
 
「僕はヘンリー。魔法使いのハンターだよ。よろしくね」

 ヘンリーは小柄で細身の体躯に童顔、更に口調が軽いためか子供っぽい印象を持った。

「……オーバンだ」

 オーバンは寡黙な筋肉質の大男で、背負った大剣が似合う、まさにハンターという印象だった。

「こいつらは物好きなウチの常連じゃ。よく顔を合わせるじゃろう。それで、今日は何の用じゃ?」

「おお、そうだった。実はよくわからん物を見つけちまってな。爺さんの知恵を借りようと思ってよ」

 そう言うと、ジュリアンは荷物からある物を取り出してカウンターに置いた。
 それは尖った石のような物体だった。

 
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