19 / 155
第一章
御伽噺級
しおりを挟む
カウンターの上に置かれた尖った石は尖った石としか表現が出来ない物だった。
少し曲がった円錐形で牙のようにも見えるが、特に硬いわけでもなく、所々が朽ちて穴が開いていた。
「なんじゃ? このボロボロの石は?」
「いやぁ、それが《ハメルンのダンジョン》の中層の宝箱から出てきたんだ。ただの石にしか見えないが、宝箱から出てきたもんだから捨てるのも惜しくてね。そこで鑑定を頼みにきたってわけだ」
「魔力が微妙に感じられるんだよねぇ。でも、それだけなんだ。年代物っぽいなら何かの祭器か呪具の可能性もあるけどねぇ」
「呪具はまずい。すぐに教会で浄化しないと俺達がヤバいぞ」
ブロディア王国では呪われた品の都市内への持込禁止となっている。
ダンジョンから出た物であれば持込みはできるが、すぐに鑑定を行い、呪具または判別不能であれば教会にいる高司祭に浄化の魔法をかけてもらわねばならないと法律で決まっている。
ただし、浄化にはお布施が必要となる。
「呪具でも浄化してもらえば聖具として使える場合もあるからな。呪具でも構わないんだが、教会に持込むと高い鑑定料とられるからな。浄化のお布施と合わせると結構痛いんだが、ここなら割安で鑑定してもらえるだろ?」
「というわけで、お願いねぇ」
「頼む」
「調子のいい奴らじゃのぅ。まぁ、ええわい。サト、まずはお前さんが鑑定してみるがええ。儂は隣で見ておるからな」
ロンメルはサトの前に石を置いた。
ジュリアン達はロンメルが鑑定しない事に少し不安そうな顔をしたが、隣で見ているなら大丈夫だろうと任せる事にした。
サトが目の前の石を見ると、脳裏に言葉が浮かんでくる。
ハメルンの魔笛(呪具)
かつて、ハメルンを恐怖に陥れた魔人が持っていた笛。魔力を込めて吹くと魔物を呼び寄せる事ができる。吹く強さによっては魔王すら呼び寄せることができる古代の秘宝。相場3000万ルーク。
「あかぁあああああああああん!」
サトは絶叫し、ロンメルの腕を引っ張って店の奥に走ったいった。
「な、なんだ!? どうした!?」
「なになになになになに!?」
「何事だっ!」
突然のことに驚きを隠せない3人を放置してサトとロンメルは店の奥にある倉庫の一室に入った。
鬼気迫るサトの迫力に圧されながらもロンメルはサトに問いかけた。
「な、なんじゃ? サト、どうしたんじゃ?」
「ダメです! ダメです! あれはダメです! ヤバいブツですよ! やば過ぎですよ! ロンメルさん! 早いとこなんとかしないと危険ですよ!」
「お、お、落ち着かんか! それと年寄りの胸ぐらを掴んで揺さぶるのはやめい!」
慌てるサトをロンメルはなんとか宥めて、鑑定結果を尋ねる。
サトは恐怖に怯えながらも包み隠さず鑑定結果の全て伝えた。
「な、なにぃ! ハメルンの魔笛じゃと!? あの御伽噺の笛が実在するというのかっ!」
「御伽噺とか知りませんけど、とにかくヤバいブツですよ! 魔王とかってあり得ないでしょ!」
「むむむ……これはマズイぞい。まさか、1発目からこんな大物が来るとは……どうやって奴等に説明するかのぅ……」
サトの鑑定能力は対象物を見れば見るほど正確に鑑定できる能力である。
しかし、この能力をサトが持っている事は秘密であり、当然だが鑑定能力でわかったと伝えるわけにはいかない。
能力で知り得た結果をそれっぽい言葉で説明し、相手を納得させないといけないのだ。
昨日の酒場ではサトがほろ酔いながらもそれっぽく伝えていたから良かったが、今回は別である。
「御伽噺級の古代の秘宝となると、適当な説明では納得せんじゃろうな。何か根拠のようなものが無いとのぅ」
サトとロンメルが頭を抱えていると、倉庫の外からジュリアンの声がする。
「おーい、急にどうしたんだ? 何かわかったのか?」
「「ヤ、ヤバいなぁ……」」
サトとロンメルは互いに顔を見合わせて冷汗を流した。
少し曲がった円錐形で牙のようにも見えるが、特に硬いわけでもなく、所々が朽ちて穴が開いていた。
「なんじゃ? このボロボロの石は?」
「いやぁ、それが《ハメルンのダンジョン》の中層の宝箱から出てきたんだ。ただの石にしか見えないが、宝箱から出てきたもんだから捨てるのも惜しくてね。そこで鑑定を頼みにきたってわけだ」
「魔力が微妙に感じられるんだよねぇ。でも、それだけなんだ。年代物っぽいなら何かの祭器か呪具の可能性もあるけどねぇ」
「呪具はまずい。すぐに教会で浄化しないと俺達がヤバいぞ」
ブロディア王国では呪われた品の都市内への持込禁止となっている。
ダンジョンから出た物であれば持込みはできるが、すぐに鑑定を行い、呪具または判別不能であれば教会にいる高司祭に浄化の魔法をかけてもらわねばならないと法律で決まっている。
ただし、浄化にはお布施が必要となる。
「呪具でも浄化してもらえば聖具として使える場合もあるからな。呪具でも構わないんだが、教会に持込むと高い鑑定料とられるからな。浄化のお布施と合わせると結構痛いんだが、ここなら割安で鑑定してもらえるだろ?」
「というわけで、お願いねぇ」
「頼む」
「調子のいい奴らじゃのぅ。まぁ、ええわい。サト、まずはお前さんが鑑定してみるがええ。儂は隣で見ておるからな」
ロンメルはサトの前に石を置いた。
ジュリアン達はロンメルが鑑定しない事に少し不安そうな顔をしたが、隣で見ているなら大丈夫だろうと任せる事にした。
サトが目の前の石を見ると、脳裏に言葉が浮かんでくる。
ハメルンの魔笛(呪具)
かつて、ハメルンを恐怖に陥れた魔人が持っていた笛。魔力を込めて吹くと魔物を呼び寄せる事ができる。吹く強さによっては魔王すら呼び寄せることができる古代の秘宝。相場3000万ルーク。
「あかぁあああああああああん!」
サトは絶叫し、ロンメルの腕を引っ張って店の奥に走ったいった。
「な、なんだ!? どうした!?」
「なになになになになに!?」
「何事だっ!」
突然のことに驚きを隠せない3人を放置してサトとロンメルは店の奥にある倉庫の一室に入った。
鬼気迫るサトの迫力に圧されながらもロンメルはサトに問いかけた。
「な、なんじゃ? サト、どうしたんじゃ?」
「ダメです! ダメです! あれはダメです! ヤバいブツですよ! やば過ぎですよ! ロンメルさん! 早いとこなんとかしないと危険ですよ!」
「お、お、落ち着かんか! それと年寄りの胸ぐらを掴んで揺さぶるのはやめい!」
慌てるサトをロンメルはなんとか宥めて、鑑定結果を尋ねる。
サトは恐怖に怯えながらも包み隠さず鑑定結果の全て伝えた。
「な、なにぃ! ハメルンの魔笛じゃと!? あの御伽噺の笛が実在するというのかっ!」
「御伽噺とか知りませんけど、とにかくヤバいブツですよ! 魔王とかってあり得ないでしょ!」
「むむむ……これはマズイぞい。まさか、1発目からこんな大物が来るとは……どうやって奴等に説明するかのぅ……」
サトの鑑定能力は対象物を見れば見るほど正確に鑑定できる能力である。
しかし、この能力をサトが持っている事は秘密であり、当然だが鑑定能力でわかったと伝えるわけにはいかない。
能力で知り得た結果をそれっぽい言葉で説明し、相手を納得させないといけないのだ。
昨日の酒場ではサトがほろ酔いながらもそれっぽく伝えていたから良かったが、今回は別である。
「御伽噺級の古代の秘宝となると、適当な説明では納得せんじゃろうな。何か根拠のようなものが無いとのぅ」
サトとロンメルが頭を抱えていると、倉庫の外からジュリアンの声がする。
「おーい、急にどうしたんだ? 何かわかったのか?」
「「ヤ、ヤバいなぁ……」」
サトとロンメルは互いに顔を見合わせて冷汗を流した。
19
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
異世界転移! 幼女の女神が世界を救う!?
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
アイは鮎川 愛って言うの
お父さんとお母さんがアイを置いて、何処かに行ってしまったの。
真っ白なお人形さんがお父さん、お母さんがいるって言ったからついていったの。
気付いたら知らない所にいたの。
とてもこまったの。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる