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第一章
御心のままに
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アルヴォード伯爵家に伝わる名剣として、置かれた剣をサトの《鑑定能力》が、以前、隣の歌う花嫁亭で見たメッキの剣だと告げていた。
サトは困惑し、固まったまま話せないでいた。
「ほぅ、これは……ミスリルですかな?」
「……その通りだ。我が家に伝わる名剣ベトリューガーはミスリルの名剣。その昔、初代アルヴォード伯爵はこの剣と共に数多の戦場を駆け抜け、数々の武勲を立てた英傑だ」
サトの表情はさらに曇った。
今の話にも不可解な点があるのがわかっているからだ。
ロンメルが話しているミネルバァ嬢を更に見たサトは、《鑑定能力》でアルヴォード家に関する情報も知っていたからだ。
見れば見るほど詳細は鑑定が出来る。
それがサトの鑑定能力の真価であった。
「ふむ。近頃、歳のせいか目が霞んでいかんな。サト、お前に任せる」
「えっ! お、俺にですかっ!?」
「ああ、任せたぞぃ」
そう言うと剣の前にサトを連れ出し、ロンメルは後ろに下がった。
サトは困惑、いや、混乱していた。
この剣が紛い物であるのはわかっている。
前回と同様の説明をすれば鑑定能力の事もバレる事はないだろう。
しかし、相手は貴族である。
自信たっぷりに持ってきた剣をナマクラだと言われて、プライドを傷つけようものなら後で何をされるかわからない。
嫌がらせをされるか、難癖をつけられて潰されるか。
貴族にとって平民などその程度の存在なのである。
サトの額に冷汗が浮かんでいた。
万が一、不快を買って自分だけが処罰されるならまだいい。
もし、そこにロンメルまで巻き込んでしまったら……そう考えるとサトは口を開く事ができなかった。
「どうした? サト、と言ったか? お前が代わって鑑定する事に私も依存ないぞ? さぁ、言うがいい」
ミネルバァに急かされても、サトは黙ったままだった。
自分の中で何が正解かわからないからだ。
正直にガラクタと言うか、それとも偽ってミネルバァ嬢の話に乗るか。
答えの出ない堂々巡りをし、無駄に時間が経過した時、メイドが一言呟いた。
「御心のままに」
サトは伏していた顔をガバッと上げたが、その時すでにメイドは何事もなかったように無表情に戻っていた。
『御心のままにして』
その言葉を信じるなら、ミネルバァ嬢の話に乗るしかない。
これで光明が見えた。
そう思って口を開こうとした瞬間にサトの脳裏に馴染みだったハンター達の顔が浮かんできた。
みんなが、命を賭けて持ってきた物にサトは過小評価はしないまでも、過大評価をした事はなかった。
『明朗会計』
それがサトが今まで大事にしてきたここでの商売である。
サトはチラッとロンメルの顔を見ると、意を決して口を開いた。
「素晴らしいですね。初代アルヴォード伯爵が大切にされていた剣です。それ相応の価値がありますよ」
サトの言葉をミネルバァ嬢は表情を変えないまま聞いていたが、やがて小さく口を開いた。
「……そうか。この剣は素晴らしいか……そうだろう! この剣はミスリルの……」
「ええ、この剣は間違いなく、ミスリルメッキのナマクラの剣です!」
サトはミネルバァ嬢の言葉を遮って、そう強く答えた。
ミネルバァ嬢の顔がみるみると険しいものに変わって行くのを見て、冷汗をかいても、その表情に臆したところは微塵もなかった。
サトは困惑し、固まったまま話せないでいた。
「ほぅ、これは……ミスリルですかな?」
「……その通りだ。我が家に伝わる名剣ベトリューガーはミスリルの名剣。その昔、初代アルヴォード伯爵はこの剣と共に数多の戦場を駆け抜け、数々の武勲を立てた英傑だ」
サトの表情はさらに曇った。
今の話にも不可解な点があるのがわかっているからだ。
ロンメルが話しているミネルバァ嬢を更に見たサトは、《鑑定能力》でアルヴォード家に関する情報も知っていたからだ。
見れば見るほど詳細は鑑定が出来る。
それがサトの鑑定能力の真価であった。
「ふむ。近頃、歳のせいか目が霞んでいかんな。サト、お前に任せる」
「えっ! お、俺にですかっ!?」
「ああ、任せたぞぃ」
そう言うと剣の前にサトを連れ出し、ロンメルは後ろに下がった。
サトは困惑、いや、混乱していた。
この剣が紛い物であるのはわかっている。
前回と同様の説明をすれば鑑定能力の事もバレる事はないだろう。
しかし、相手は貴族である。
自信たっぷりに持ってきた剣をナマクラだと言われて、プライドを傷つけようものなら後で何をされるかわからない。
嫌がらせをされるか、難癖をつけられて潰されるか。
貴族にとって平民などその程度の存在なのである。
サトの額に冷汗が浮かんでいた。
万が一、不快を買って自分だけが処罰されるならまだいい。
もし、そこにロンメルまで巻き込んでしまったら……そう考えるとサトは口を開く事ができなかった。
「どうした? サト、と言ったか? お前が代わって鑑定する事に私も依存ないぞ? さぁ、言うがいい」
ミネルバァに急かされても、サトは黙ったままだった。
自分の中で何が正解かわからないからだ。
正直にガラクタと言うか、それとも偽ってミネルバァ嬢の話に乗るか。
答えの出ない堂々巡りをし、無駄に時間が経過した時、メイドが一言呟いた。
「御心のままに」
サトは伏していた顔をガバッと上げたが、その時すでにメイドは何事もなかったように無表情に戻っていた。
『御心のままにして』
その言葉を信じるなら、ミネルバァ嬢の話に乗るしかない。
これで光明が見えた。
そう思って口を開こうとした瞬間にサトの脳裏に馴染みだったハンター達の顔が浮かんできた。
みんなが、命を賭けて持ってきた物にサトは過小評価はしないまでも、過大評価をした事はなかった。
『明朗会計』
それがサトが今まで大事にしてきたここでの商売である。
サトはチラッとロンメルの顔を見ると、意を決して口を開いた。
「素晴らしいですね。初代アルヴォード伯爵が大切にされていた剣です。それ相応の価値がありますよ」
サトの言葉をミネルバァ嬢は表情を変えないまま聞いていたが、やがて小さく口を開いた。
「……そうか。この剣は素晴らしいか……そうだろう! この剣はミスリルの……」
「ええ、この剣は間違いなく、ミスリルメッキのナマクラの剣です!」
サトはミネルバァ嬢の言葉を遮って、そう強く答えた。
ミネルバァ嬢の顔がみるみると険しいものに変わって行くのを見て、冷汗をかいても、その表情に臆したところは微塵もなかった。
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