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第一章
鬼のロンメル
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「ほぅ、似合っとるじゃないか」
「素敵です! サト様」
ロンメルとエレンに褒められて些か照れるサトは自分の姿を鏡越しに見る。
ネイビーブルーの生地に白い巻雲のような模様が描かれた隠者のローブ、首元には相反する猩々緋に輝く球を繋いだ首飾り。
そして指にはワンドリングが銀色に輝いていた。
「見た目は一流の魔法使いじゃな。装備ではヘンリーにも引けを取らんぞ?」
「ロンメル様! サト様は神術の遣い手ですよ! それだけで立派な神術使いです。きっと他にも素晴らしい魔法が……」
エレンが眼を輝かせてサトを見るが、サトはスッと視線を逸らした。
「えっ? サ、サト様?」
一抹の不安を覚えるエレンだったが、そこにロンメルが声をかける。
「サトは聖なる神水しか使えんのじゃよ。魔法の初歩であるファイヤーですらな」
「そ、そんな……まさか」
ロンメルの言葉を信じられないエレンはサトを見るが、今度は頷くだけだった。
この世界で魔法を操るものは等しく魔法の基礎である魔力操作を学び、そこから魔法を習得していく。
最も発動しやすい火魔法を基礎として、そこから各々が得意な魔法系統を伸ばしていくのが定石だ。
例えばエレンは火魔法から更に上位の火炎魔法を学び、並行して闇魔法を習得、そこから呪術を習得した事で派生魔法である禁術、地獄の炎を会得していた。
しかし、魔導の叡智により一足飛びに魔法を極めたサトは逆に基礎を学んでおらず、火魔法すら使えないまま神術を会得してしまった。
おまけに魔導の叡智はサトの脳が壊れないように情報量を小出しにしているため、サトが必要な情報しか与えていない。
つまり、自らの危機であったエレンの地獄の炎に対抗する魔法が聖なる神水であり、それ以外の神術は知らなかった。
「で、ですが、神術が使えるなら基礎の魔法なんて簡単に……」
「教える者がおればな。儂はサトには最低限の近接戦闘の技術は教えておるが、魔法は全然じゃからのぅ」
「さ、最低限……あれで?」
サトがこの家に来て以来、ロンメルは時間を見てはサトに戦い方の訓練をしていた。
ロンメルにとっては初歩の初歩の動きでしかないが、サトにとっては過酷な訓練でしかなかった。
「なんじゃ?」
ロンメルがジロっとサトを見る。
普段は好々爺なロンメルも戦闘訓練の時だけは鬼のようであり、サトにとっては訓練の時間はもっとも嫌な時間だった。
「あんなもんは新兵の基礎程度でしかないわい!」
「3回は死にかけましたけど……」
「死んでなければ問題ない」
ロンメルの突き放した言葉にこれ以上の問答は無駄だと悟ったサトはまたやって来る訓練の日を怯えながら待つしかなかった。
「素敵です! サト様」
ロンメルとエレンに褒められて些か照れるサトは自分の姿を鏡越しに見る。
ネイビーブルーの生地に白い巻雲のような模様が描かれた隠者のローブ、首元には相反する猩々緋に輝く球を繋いだ首飾り。
そして指にはワンドリングが銀色に輝いていた。
「見た目は一流の魔法使いじゃな。装備ではヘンリーにも引けを取らんぞ?」
「ロンメル様! サト様は神術の遣い手ですよ! それだけで立派な神術使いです。きっと他にも素晴らしい魔法が……」
エレンが眼を輝かせてサトを見るが、サトはスッと視線を逸らした。
「えっ? サ、サト様?」
一抹の不安を覚えるエレンだったが、そこにロンメルが声をかける。
「サトは聖なる神水しか使えんのじゃよ。魔法の初歩であるファイヤーですらな」
「そ、そんな……まさか」
ロンメルの言葉を信じられないエレンはサトを見るが、今度は頷くだけだった。
この世界で魔法を操るものは等しく魔法の基礎である魔力操作を学び、そこから魔法を習得していく。
最も発動しやすい火魔法を基礎として、そこから各々が得意な魔法系統を伸ばしていくのが定石だ。
例えばエレンは火魔法から更に上位の火炎魔法を学び、並行して闇魔法を習得、そこから呪術を習得した事で派生魔法である禁術、地獄の炎を会得していた。
しかし、魔導の叡智により一足飛びに魔法を極めたサトは逆に基礎を学んでおらず、火魔法すら使えないまま神術を会得してしまった。
おまけに魔導の叡智はサトの脳が壊れないように情報量を小出しにしているため、サトが必要な情報しか与えていない。
つまり、自らの危機であったエレンの地獄の炎に対抗する魔法が聖なる神水であり、それ以外の神術は知らなかった。
「で、ですが、神術が使えるなら基礎の魔法なんて簡単に……」
「教える者がおればな。儂はサトには最低限の近接戦闘の技術は教えておるが、魔法は全然じゃからのぅ」
「さ、最低限……あれで?」
サトがこの家に来て以来、ロンメルは時間を見てはサトに戦い方の訓練をしていた。
ロンメルにとっては初歩の初歩の動きでしかないが、サトにとっては過酷な訓練でしかなかった。
「なんじゃ?」
ロンメルがジロっとサトを見る。
普段は好々爺なロンメルも戦闘訓練の時だけは鬼のようであり、サトにとっては訓練の時間はもっとも嫌な時間だった。
「あんなもんは新兵の基礎程度でしかないわい!」
「3回は死にかけましたけど……」
「死んでなければ問題ない」
ロンメルの突き放した言葉にこれ以上の問答は無駄だと悟ったサトはまたやって来る訓練の日を怯えながら待つしかなかった。
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