鑑定能力で恩を返す

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第一章

草原の違和感

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 怒りを露わにするミネルバァ。
 アメリアがそっと側に寄り添う。

「御主人様、落ち着いてくださいませ。このような場所で感情に身を委ねるのは良くありませんよ」

 口調がメイドのそれになっているアメリアにミネルバァは深呼吸の後、笑みを返す。

「その口調も久しぶりだな。サトに惚れてからはずっとアレだったからな」

「たまには真面目にします。まぁ、サトの事も真面目ですけどにゃ」

 ウィンクするアメリアのおかげか、ミネルバァの怒りは収まっていた。

「すまん、ジュリアン。みっともないところを見せた」

「いえいえ、犯罪者を忌み嫌う姿に好感を持てましたよ。しかしながら伯爵。この一階層に奴らの根城はないでしょう。この草原エリアは見晴らしがいいため隠れるのが困難ですから」

 確かにジュリアンの言う通り、8人の目の前には見渡す限りの草原が続いている。
 どこまでも続く草原。
 その光景に1人、違和感を持つ者がいた。
 サトである。
 
『なんて言うかわからないけど、なんか気持ち悪いな』

 サトが見ているのは草原の中央、特に草が多く茂っている場所だった。
 理由はわからないが、どうしてもそこが気になった。

「どうしたの? サト。ああ、あそこは泥濘んでいるからあんまり近づかない方がいいよ」

 サトの視線に気づいたヘンリーが説明してくれたが、それが逆にサトの違和感を増大させた。

「ヘンリーさん、あそこは泥濘んでいるんですか?」

「うん、必ずと言っていいほどあそこに新米が足突っ込んで出れなくなってるんだよ」

「足元の注意が疎かだとそういう事になる。サトも気をつけろよ」

 オーバンも捕捉してくれたが、それが更にサトの眼をそこに向けさせる。
 間違いないと確信して。
 サトはその場所を真剣に見る。
 すると、脳裏に言葉が浮かんでくる。

「サト? どうしたんじゃ? 立ち止まっていては……何かあったか?」

 ロンメルがサトに小声で話しかけた。

「ロンメルさん、あそこに誰かいる」

「あの泥濘んでいる所にか? ……わかった。儂が矢を射てみよう」

 ロンメルは背中に背負った弓を持ち出して、草原の中央に狙いをつける。
 当然だが、他の者達はその行動の意味がわからず、それを制した。

「ロンメル爺さん、何の真似だ?」

「そうだよ。矢も貴重な資源なんだからね」

「どういうつもりだ?」

 ジュリアン達が口々に言うがロンメルは意に介さず、弓を引き絞り、矢を放った。
 矢は一直線に草花に向かって飛んでいき、その中に埋もれていった。

「ほら、何にもなかったでしょ? なんでこんな無駄な事を……」

「うぎゃあああああああああ!」

 ヘンリーがロンメルの行動を嗜めようとした時、矢の方向から悲鳴が上がった。
 
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