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第一章
信頼を得た者
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「お、俺の働き次第って、どういう意味ですか!?」
許容できない言葉にサトはロンメルに詰め寄って問いただした。
自分に2人の子どもの命運がかかっているなど重すぎる話だったからだ。
「御子息のリハルト様は12歳、御息女のオリーヴィア様は10歳。すでにマイヤーハイム伯爵が処罰されておるし、2人は年齢的に罪には問われないじゃろう」
「な、なら……」
安堵の表情を見せるサトに、ロンメルは冷たい視線を向けた。
それは話がこれだけで終わりではないことを物語っているようだった。
「じゃが、それは不当に得た財産を返還出来ればの話じゃ。返還出来なくば伯爵家は廃爵となり、貴族暮らししかした事のない2人は露頭に迷う事になるのじゃ」
「なっ!? し、親戚の人とかは? そうですよ! 父方でも母方でも親戚の方が面倒を見てくだされば……」
サトの悲痛な叫びをロンメルは無言の首振りで答えた。
「縁戚の方もおるじゃろうが、関係を持てば、借金を肩代わりさせられる可能性もある。おまけに王家に不敬を働いた者の子じゃ。引き取り手もないじゃろうなぁ」
「そ、そんな……子どもに罪はないって……」
「貴族社会とはそういうものなんじゃよ。お前さんも知っておるじゃろ? どうして他家のミネルバァ様がアルヴォード家を継げたかを」
ミネルバァはヴァイデンフェラー家の令嬢であったが、アルヴォード前伯爵が政略結婚のために裏工作し、養女にしたのだった。
家督を守るためであれば、貴族にとって人道などあってないようなものなのである。
サトはこの世界の残酷さに少し嫌気がさした。
「そう暗い顔をするな。それでは救えるものも救えなくなってしまうぞ?」
「っ!? そ、そうだ! 俺次第では2人を救えるんですよねっ!? それにはどうしたらいいんですかっ!?」
「これこれ、そう詰め寄るでない。わかりやすく言うならお前さんの鑑定次第じゃな」
「俺の鑑定次第?」
サトは意味を理解できず首を傾げた。
「そうじゃ。マイヤーハイム伯爵家から価値のある物を見つけ出し、それを高値で売却。その金で横領した金額を返還出来ればマイヤーハイム伯爵家は残るじゃろう。降格はあるかもしれんが、貴族として残れば再興の機会もあるからのぅ」
「そ、そんな大役を……俺が……?」
責任の重さを痛感し、腰が引けるサトだったが、ロンメルは更にサトに追い打ちをかけた。
「ちなみにじゃが、この話は断れんぞ?」
「えっ!? なぜですかっ!?」
「貴族家の存亡がかかったこんな依頼、普通ならウチみたいな店に回ってくるはずがないからのぅ。となれば、誰かが儂等を指名したとしか考えられん。恐らくこの地を治めるシュタイエール公爵様かマイヤーハイム家と親交のあったアルヴォード伯爵家のカミル様あたりかのぅ」
「何で2人はウチに依頼を……」
「鑑定士の中にはでっち上げで高い品を安く買い叩く物もおるでな。それを防ぐために信頼できる者に任せようとされたんじゃよ。つまり、お前さんはお2人からの信頼を得ておるという事じゃよ。良かったのぅ」
『ぜ、全然良くねぇええええええっ!』
サトの声なき声はサトの脳内に反響し、いつまでも響き渡った。
許容できない言葉にサトはロンメルに詰め寄って問いただした。
自分に2人の子どもの命運がかかっているなど重すぎる話だったからだ。
「御子息のリハルト様は12歳、御息女のオリーヴィア様は10歳。すでにマイヤーハイム伯爵が処罰されておるし、2人は年齢的に罪には問われないじゃろう」
「な、なら……」
安堵の表情を見せるサトに、ロンメルは冷たい視線を向けた。
それは話がこれだけで終わりではないことを物語っているようだった。
「じゃが、それは不当に得た財産を返還出来ればの話じゃ。返還出来なくば伯爵家は廃爵となり、貴族暮らししかした事のない2人は露頭に迷う事になるのじゃ」
「なっ!? し、親戚の人とかは? そうですよ! 父方でも母方でも親戚の方が面倒を見てくだされば……」
サトの悲痛な叫びをロンメルは無言の首振りで答えた。
「縁戚の方もおるじゃろうが、関係を持てば、借金を肩代わりさせられる可能性もある。おまけに王家に不敬を働いた者の子じゃ。引き取り手もないじゃろうなぁ」
「そ、そんな……子どもに罪はないって……」
「貴族社会とはそういうものなんじゃよ。お前さんも知っておるじゃろ? どうして他家のミネルバァ様がアルヴォード家を継げたかを」
ミネルバァはヴァイデンフェラー家の令嬢であったが、アルヴォード前伯爵が政略結婚のために裏工作し、養女にしたのだった。
家督を守るためであれば、貴族にとって人道などあってないようなものなのである。
サトはこの世界の残酷さに少し嫌気がさした。
「そう暗い顔をするな。それでは救えるものも救えなくなってしまうぞ?」
「っ!? そ、そうだ! 俺次第では2人を救えるんですよねっ!? それにはどうしたらいいんですかっ!?」
「これこれ、そう詰め寄るでない。わかりやすく言うならお前さんの鑑定次第じゃな」
「俺の鑑定次第?」
サトは意味を理解できず首を傾げた。
「そうじゃ。マイヤーハイム伯爵家から価値のある物を見つけ出し、それを高値で売却。その金で横領した金額を返還出来ればマイヤーハイム伯爵家は残るじゃろう。降格はあるかもしれんが、貴族として残れば再興の機会もあるからのぅ」
「そ、そんな大役を……俺が……?」
責任の重さを痛感し、腰が引けるサトだったが、ロンメルは更にサトに追い打ちをかけた。
「ちなみにじゃが、この話は断れんぞ?」
「えっ!? なぜですかっ!?」
「貴族家の存亡がかかったこんな依頼、普通ならウチみたいな店に回ってくるはずがないからのぅ。となれば、誰かが儂等を指名したとしか考えられん。恐らくこの地を治めるシュタイエール公爵様かマイヤーハイム家と親交のあったアルヴォード伯爵家のカミル様あたりかのぅ」
「何で2人はウチに依頼を……」
「鑑定士の中にはでっち上げで高い品を安く買い叩く物もおるでな。それを防ぐために信頼できる者に任せようとされたんじゃよ。つまり、お前さんはお2人からの信頼を得ておるという事じゃよ。良かったのぅ」
『ぜ、全然良くねぇええええええっ!』
サトの声なき声はサトの脳内に反響し、いつまでも響き渡った。
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