鑑定能力で恩を返す

KBT

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第一章

交渉

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「つまり、私に彼女のふりをしてほしいってこと?」

 今日のマイヤーハイム邸での鑑定を終えたサトはある場所に立ち寄った。 
 事情を説明すると、目の前の少女は年相応の小悪魔的な表情でサトを見返す。
 その表情にサトは胸が少し高鳴るのを感じ、後ろの3人の女性は歯軋りをする。

「アテって、この子の事にゃ……」

「確かに条件としては問題ないが……」

「警戒すべき相手でもありますね……」

 4人が思い思いの感情を抱く中でも少女は気にせず、サトに話しかけた。

「でも、ビックリだよねぇ~まさか、サトが貴族の御令嬢に婚約を迫られるなんて」

「その場の勢いだったんだと思うけどね。無礼討ちにはなりたくないし、安全は保証するし、なんとか頼めないかな? クロエ」

 ロンメル商店に隣接する《歌う花嫁亭》の看板娘、クロエはニヤニヤしながら腕組みをして考え込んだ。

「どうしよっかなぁ~ロンメルさんやサトにはお世話になってるし、別にいいんだけど~」

 そう言いながら横目でサトを見つめるクロエ。
 何を言わんとしているか、クロエとの付き合いも長くなってきたサトにはわかった。

「わかってるよ。オーク肉の卸値、少し下げるからさ」

「具体的には?」

「キロ……9000」

「5000は?」

 無邪気な顔で悪魔のような値段を言うクロエにサトは背筋が寒くなるのを感じた。

「……7500」

「5500」

「7000!」

「うーん、まぁいいかな? じゃあ、とりあえず10キロお願いね」

 サトは軽い目眩を覚えながら、必死に耐えた。
 本来オーク肉はハンターの持込でしか仕入方法がなく、買取でキロ6000が相場である。
 そこから加工作業を経て、キロ10000で販売していた。
 10キロと言えば40000の収益があるのに、それがたったの10000。
 加工費を考えれば完全な赤字である。
 それでもまだなんとか黒字で残せただけ良かったと、肩を撫で下ろしたサトだった。

「そうそう、聞いてよ。ウチのお客さんが今度ウチを貸し切ってお祝いするんだ」

「貸切なんて豪勢だな。でも、結構な儲けになるから良かったじゃないか」

「でもね~そのお祝いのメインの食材が無くてさぁ~」

 サトの撫で下ろした肩がピクリと反応する。

「わざわざ貸し切ってくれるのに、普通の食材なんて使えないじゃん。そ・れ・で! オークと一緒に牛の魔物とか有ればいいなぁ~って思うの!」

「う、牛の魔物? ま、まさか、ク、クロエさん? あ、貴女はミノタウロス肉を寄越せとおっしゃるのですか?」

 クロエはそれには答えず、舌をペロッと出しただけだった。
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