鑑定能力で恩を返す

KBT

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第一章

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「うわぁああああああああ! うぁりがとうぉおおおおおおおお! サト殿ぉおおおおおお! あ、貴方は……あ、貴方こそは我が家のぉおおおおお!」

「お兄様、落ち着いてください。何を言ってるかわかりませんわ」

 滂沱の涙と大量の鼻水を流しながら感謝の言葉を言い放つリハルトを横目に、ため息混じりに悪態をつくオリーヴィア。
 その表情はまんざらでもないようで、瞳を潤ませているのは誰の目にも明らかだった。

「お力になれたようで良かったです。マイヤーハイム卿」

「うううっ……ほ、本当にありがとう……本当に……」

 涙と鼻水を拭い、ビチャビチャになった手でサトの手を握るリハルトをサトは嫌な顔一つせずに受け入れた。
 流石にこの場面で『汚いからやめてください』と言うほど朴念仁でもなかった。
 拝むようにサトの手を力強く握り、涙を流し続けるだけのリハルトだったが、しばらくして落ち着いたのか、名残惜しそうにしながらも手を離した。

「サト殿の素晴らしい働きに、このリハルト・フォン・マイヤーハイム最大級の感謝と尊敬を。まさか……返納分を完済しただけでなく、これ程の資産を残してもらえるとは思わなかった」

「ご、ご期待に添えたようで何よりです……」

 鑑定開始から1週間、ほぼ不眠不休で動いていたサトは疲労困憊していた。
 返納までの期間はともかく出品するオークションまでの日数が迫っていたこともあって、商品の手入れや鑑定書の作成を急がねばならなかった。
 総鑑定数275点、その内価値のあった物は112点、それら全てをサトは1人で最高の状態で仕上げた。
 エレンの手を借りる事も出来たが、管理方法や手入れの仕方を教える時間もなかったので、エレンには整理のみ手伝ってもらい、あとは鑑定能力かんていスキルと魔導の叡智をフル活用して、なんとかオークションに間に合わせたのだ。

「でも、本当に凄いと思います。王宮の筆頭鑑定士より凄いんじゃないかと思いましたわ」

「それは褒め過ぎではありませんか? オリーヴィア様」

「いや! 今回ばかりはオリーヴィアの言う通りだよ! だって返納金50億ルークあれば良かったんだよ? それが72億6230万ルークだよ! 返納しても22億以上残るんだ! これなら辞めていった使用人達を呼び戻せる!」

「お兄様、それはダメですよ。我が家の危機に我先に逃げ出した者達です。いつ裏切るかわかったものではありませんわ。今残っている使用人達を手厚く優遇し、後は新たに雇い入れましょう」

「それもそうか。新しいマイヤーハイム伯爵家の始まりだしな。よし、そうしよう!」

「ええ、お兄様。それに我が家には新しい家族も増えますし。そうですよね? サト」

 オリーヴィアがサトに迫ってきた。
 しかし、それを後ろから現れた3人が阻んだ。
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