115 / 155
第二章
悩んで
しおりを挟む
「さて、いつまでも頭を抱えとるわけにもいかんぞ、サト。なんなら普通に装備を売ってからバァラダに請求かけるか?」
「バァラダさんに返済能力あると思いますか? あの人の方がいつもカツカツですよ」
能天気な中年ハンターに悪態を吐きながら、サトはライズとアリアの2人を改めて見た。
するとアンバランスな装備をしている事に気づいた。
「君達って鎧やローブは論外なのに、武器だけはまともなのを持ってるのは何故なんだい?」
ライズは革鎧こそ粗悪品だが、腰に差している剣は普通に見えた。
「この剣は村を出る時に村にいた元ハンターの人がくれた物なんです。古いから価値はないって言ってましたけど」
「私の杖もです。村の薬師さんがお古をくれたんです」
「すまないが、少し見せてくれないか?」
サトは2人から剣と杖を受け取ると改めて2人の武器を見た。
鉄のハンティングソード
主に狩猟用に用いられる片刃の剣。手入れがしっかりしてあるため、新品と変わらない状態。
相場 8000ルーク。
エルダートレントの杖
魔法を操るエルダートレントから作られた杖。魔力の収束を高め、魔法発動が早くなる効果がある。
相場 30000ルーク。
「……ほぅ」
「お古だから価値ないでしょ? 市の商人にも『そんな反りのないカトラスと古いだけの杖は駄目だ』って言われました」
サトは見る目のない商人に対してほんのり殺意を覚えた。
「粗悪品を売るわ、目利きは出来ないわでロクな奴じゃないな」
「市にいる奴等なんぞほとんどがそんな奴らじゃよ。残りはそいつらをカモにしようとする更に悪どい奴じゃな」
救いようがないなとサトは思いながら、思考を切り替えて2人の事を考えた。
思いの外、武器の方はまともなため防具だけを揃えれば良いのだが、流石に2人で10000ルークは厳しかった。
ライズの着ているウッドピックの鎧ですら新品なら一式で50000ルークはするのだ。
魔法使いと思われるアリアの魔法のローブともなれば一番低ランクの素材にしても50000はする。
つまり、最低でも10万ルークは必要となる。
しかし、2人の手持ちは10000のみ。
武器を買い取って装備に回す事も出来るが、全てが中途半端な装備にしかならないためそれも出来ない。
サトが市に行って掘り出し物を探せば揃うかもしれないが、流石にそれはやり過ぎだ。
本来であれば命を預ける装備を他人に任せようとするのは間違いである。
己の身の安全は己で守るのがハンターの鉄則だ。
その第一歩である装備を他人任せというのは、酷いようだが2人の責任だであって、それで痛い目を見ても自業自得だ。
しかし、同じ街に住む商人が詐欺紛いのことをして騙したというのもサトには看過出来ないことだった。
そのため見捨てる事もできず、サトは悩んだ。
悩んで悩んで悩んで悩んで。
「……仕方ない。なんとかするか」
そう決断すると、サトは店の奥の倉庫に向かい、物色を始めるのだった。
「バァラダさんに返済能力あると思いますか? あの人の方がいつもカツカツですよ」
能天気な中年ハンターに悪態を吐きながら、サトはライズとアリアの2人を改めて見た。
するとアンバランスな装備をしている事に気づいた。
「君達って鎧やローブは論外なのに、武器だけはまともなのを持ってるのは何故なんだい?」
ライズは革鎧こそ粗悪品だが、腰に差している剣は普通に見えた。
「この剣は村を出る時に村にいた元ハンターの人がくれた物なんです。古いから価値はないって言ってましたけど」
「私の杖もです。村の薬師さんがお古をくれたんです」
「すまないが、少し見せてくれないか?」
サトは2人から剣と杖を受け取ると改めて2人の武器を見た。
鉄のハンティングソード
主に狩猟用に用いられる片刃の剣。手入れがしっかりしてあるため、新品と変わらない状態。
相場 8000ルーク。
エルダートレントの杖
魔法を操るエルダートレントから作られた杖。魔力の収束を高め、魔法発動が早くなる効果がある。
相場 30000ルーク。
「……ほぅ」
「お古だから価値ないでしょ? 市の商人にも『そんな反りのないカトラスと古いだけの杖は駄目だ』って言われました」
サトは見る目のない商人に対してほんのり殺意を覚えた。
「粗悪品を売るわ、目利きは出来ないわでロクな奴じゃないな」
「市にいる奴等なんぞほとんどがそんな奴らじゃよ。残りはそいつらをカモにしようとする更に悪どい奴じゃな」
救いようがないなとサトは思いながら、思考を切り替えて2人の事を考えた。
思いの外、武器の方はまともなため防具だけを揃えれば良いのだが、流石に2人で10000ルークは厳しかった。
ライズの着ているウッドピックの鎧ですら新品なら一式で50000ルークはするのだ。
魔法使いと思われるアリアの魔法のローブともなれば一番低ランクの素材にしても50000はする。
つまり、最低でも10万ルークは必要となる。
しかし、2人の手持ちは10000のみ。
武器を買い取って装備に回す事も出来るが、全てが中途半端な装備にしかならないためそれも出来ない。
サトが市に行って掘り出し物を探せば揃うかもしれないが、流石にそれはやり過ぎだ。
本来であれば命を預ける装備を他人に任せようとするのは間違いである。
己の身の安全は己で守るのがハンターの鉄則だ。
その第一歩である装備を他人任せというのは、酷いようだが2人の責任だであって、それで痛い目を見ても自業自得だ。
しかし、同じ街に住む商人が詐欺紛いのことをして騙したというのもサトには看過出来ないことだった。
そのため見捨てる事もできず、サトは悩んだ。
悩んで悩んで悩んで悩んで。
「……仕方ない。なんとかするか」
そう決断すると、サトは店の奥の倉庫に向かい、物色を始めるのだった。
17
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
異世界転移! 幼女の女神が世界を救う!?
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
アイは鮎川 愛って言うの
お父さんとお母さんがアイを置いて、何処かに行ってしまったの。
真っ白なお人形さんがお父さん、お母さんがいるって言ったからついていったの。
気付いたら知らない所にいたの。
とてもこまったの。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる