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第二章
エレンの災難
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「えっと……うん、これで全部揃ったわね。あとは夕食の買い出しだけね」
エレンは手提げ籠の中身をメモを見ながら確認した。
いつもなら主人であるサトの側で仕事をしているエレンだったが、今日は買い出しのため、1人で目抜き通りの商店を回っていたのだ。
「さて、今日の夕食は何にしよう? サト様とロンメル様って好みが似ておられるから助かるんだけど、それだと同じものばかり食べることになっちゃうのよねぇ。たまには趣向を変えてみようかな?」
そう言うとエレンは目抜き通り沿いにある食料品店に入った。
ロンメル商店のある裏通り沿いにも食料品店はあるのだが、目抜き通り沿いにある店の方が商品の種類も豊富で質も良かった。
本来なら一流ハンターや富豪、貴族が通う店だが、ロンメル商店は近頃商売が上手くいっており、懐に余裕があるため目抜き通り沿いの店で買い物をする事も多くなっていた。
エレンは店に入るなり、慣れた様子で商品を物色し始めた。
「うーん……最近はお肉ばっかりだし、《歌う花嫁亭》に行っても、お肉料理ばっかりなのよね。まぁ、流石に裏通りの酒場では魚料理は稀だから仕方ないんだけど」
公都ハメルンは大陸の中央部に位置するため、海からはかなりの距離がある。
そのため新鮮な海の魚は滅多に入ってこず、たとえ入って来ても高価な値段で取引されるので、安さと量が売りの裏通りの酒場で扱えるような代物ではなかった。
「いらっしゃいませ、エレンさん。相変わらず今日もお美しいですな」
軽い感じでエレンに声をかけて来たのは、この店の主人だった。
「お邪魔してます、フーバーさん。お魚で何か良い物は入ってませんか?」
「おっ! 魚だったらちょうどお勧めがあるよ! 実は《角マグロ》を仕入れてね。脂がのってて美味いよ!」
《角マグロ》は沖合に生息する大型の回遊魚で、最高級の赤身として貴族にも人気の魚である。
「《角マグロ》ですか? よく仕入れれましたね。海でもかなり沖合の魚ですよ?」
「商船の護衛をしていた冒険者が、交易の途中で襲って来た《角マグロ》を氷漬けにしたのが交易品と一緒に入ってきたんだよ。だから鮮度は抜群だ! どうだい? エレンさんなら1キロ20000のところ……18000でいいよ?」
エレンは悩んだ。
山育ちのエレンは魚の目利きには自信がなかった。
自らの主人であれば見ただけで全てを見通せるというのに、自分の無能さを悔やみつつ、主人の素晴らしさを再確認した。
しばらく考えていたエレンだったが、同じ商会組合に属するフーバーがぼったくる事もないと考えて、解凍した《角マグロ》を1キロ購入した。
「ちょっと高かったけど、サト様は魚もお好きみたいだし、喜んでくれるならいいかな。ふふっ、早く帰りましょ」
主人の喜ぶ顔を想像して、エレンは上機嫌で家路へと着いた。
その後ろ姿を見つめる男の視線に気づかずに。
エレンは手提げ籠の中身をメモを見ながら確認した。
いつもなら主人であるサトの側で仕事をしているエレンだったが、今日は買い出しのため、1人で目抜き通りの商店を回っていたのだ。
「さて、今日の夕食は何にしよう? サト様とロンメル様って好みが似ておられるから助かるんだけど、それだと同じものばかり食べることになっちゃうのよねぇ。たまには趣向を変えてみようかな?」
そう言うとエレンは目抜き通り沿いにある食料品店に入った。
ロンメル商店のある裏通り沿いにも食料品店はあるのだが、目抜き通り沿いにある店の方が商品の種類も豊富で質も良かった。
本来なら一流ハンターや富豪、貴族が通う店だが、ロンメル商店は近頃商売が上手くいっており、懐に余裕があるため目抜き通り沿いの店で買い物をする事も多くなっていた。
エレンは店に入るなり、慣れた様子で商品を物色し始めた。
「うーん……最近はお肉ばっかりだし、《歌う花嫁亭》に行っても、お肉料理ばっかりなのよね。まぁ、流石に裏通りの酒場では魚料理は稀だから仕方ないんだけど」
公都ハメルンは大陸の中央部に位置するため、海からはかなりの距離がある。
そのため新鮮な海の魚は滅多に入ってこず、たとえ入って来ても高価な値段で取引されるので、安さと量が売りの裏通りの酒場で扱えるような代物ではなかった。
「いらっしゃいませ、エレンさん。相変わらず今日もお美しいですな」
軽い感じでエレンに声をかけて来たのは、この店の主人だった。
「お邪魔してます、フーバーさん。お魚で何か良い物は入ってませんか?」
「おっ! 魚だったらちょうどお勧めがあるよ! 実は《角マグロ》を仕入れてね。脂がのってて美味いよ!」
《角マグロ》は沖合に生息する大型の回遊魚で、最高級の赤身として貴族にも人気の魚である。
「《角マグロ》ですか? よく仕入れれましたね。海でもかなり沖合の魚ですよ?」
「商船の護衛をしていた冒険者が、交易の途中で襲って来た《角マグロ》を氷漬けにしたのが交易品と一緒に入ってきたんだよ。だから鮮度は抜群だ! どうだい? エレンさんなら1キロ20000のところ……18000でいいよ?」
エレンは悩んだ。
山育ちのエレンは魚の目利きには自信がなかった。
自らの主人であれば見ただけで全てを見通せるというのに、自分の無能さを悔やみつつ、主人の素晴らしさを再確認した。
しばらく考えていたエレンだったが、同じ商会組合に属するフーバーがぼったくる事もないと考えて、解凍した《角マグロ》を1キロ購入した。
「ちょっと高かったけど、サト様は魚もお好きみたいだし、喜んでくれるならいいかな。ふふっ、早く帰りましょ」
主人の喜ぶ顔を想像して、エレンは上機嫌で家路へと着いた。
その後ろ姿を見つめる男の視線に気づかずに。
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