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第二章
エレンの災厄
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エレンは目抜き通りから裏通りに入るために角を曲がって細道に入った。
その後をつけるように3つの足音が足早に角を曲がって行く。
しかし、角を曲がった先の細道にエレンの姿はなかった。
「おいっ! いないぞっ!」
「馬鹿なっ! 確かにこの角を曲がったはずだっ!」
「気づかれたか? いや、そんなわけはない。この道は一本道だ。とにかく後を追うぞ!」
男達は細道を走り抜けて裏通りに消えていった。
その姿を屋根の上からエレンは見ていた。
「ちょっと浮かれてましたね。まさか、あんな奴らにつけられているのに気づくのが遅れるなんて……それにしても何者かしら? 身なりとしてはそこまで貧相でもなかった。という事は、貴族の犬? それとも奴隷商人かしら? 捕まえても良かったんだけど、折角の《角マグロ》が台無しになるといけないしね。とりあえず、屋根伝いに店に帰り……」
家路に着こうとしたエレンの背後から人の気配が感じられる。
いや、気配というほど生やさしいものではない。
それはれっきとした殺意だった。
男達に気を取られ、完全に油断していたエレンは自らの失態を嘆いた。
振り向けば殺される。
動けないエレンの頬を汗が滴っていった。
「やれやれ、やはり冒険者とはいってもあの程度か。囮程度にしか役に立たないか」
ゾッとするような女の低い声。
先程まで見事に消していた気配も今は感情剥き出しの禍々しさを感じるほど巨大になっていた。
怒りと哀しみが混じったような複雑な感情がエレンの心に流れ込んでくる。
自然とエレンの呼吸は早くなっていた。
「安心しろ。危害を加える気はない。だが、貴様の主には死んでもらわねばならんがな」
「っ!?」
言葉を聞いた瞬間に固まっていたエレンの身体が一瞬で振り返り、腕を横薙ぎに払いった。
「《激血の大鎌》」
脈打つ真紅の刃が空を切り裂いた。
エレンは荒くなった呼吸を整えもせずに、一点を見つめる。
その先には黒いフード付きのローブを目深に被った人の姿があった。
「はぁはぁはぁ……さ、させない……あの人はっ! あの人だけは絶対に殺させない!」
「奴隷が主人を庇うか? それで? どうするつもりだ?」
変わらない圧倒的な迫力を前にエレンはゆっくり呼吸を整えた。
恐ろしさは今もある。
だが、それを上回る恐怖が今のエレンにはあった。
「あの人が死ぬなんて見たくも考えたくもない……私が守ってみせる! お前を殺してでも絶対に守ってみせる!」
己が魔力を全て解放し、黒き炎を纏って眼前の敵を睨むエレン。
そんなエレンを相手は奥した様子もなく、一瞥してからため息混じりに呟いた。
「半端なお前に出来るの? エレオノーラ」
その後をつけるように3つの足音が足早に角を曲がって行く。
しかし、角を曲がった先の細道にエレンの姿はなかった。
「おいっ! いないぞっ!」
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「気づかれたか? いや、そんなわけはない。この道は一本道だ。とにかく後を追うぞ!」
男達は細道を走り抜けて裏通りに消えていった。
その姿を屋根の上からエレンは見ていた。
「ちょっと浮かれてましたね。まさか、あんな奴らにつけられているのに気づくのが遅れるなんて……それにしても何者かしら? 身なりとしてはそこまで貧相でもなかった。という事は、貴族の犬? それとも奴隷商人かしら? 捕まえても良かったんだけど、折角の《角マグロ》が台無しになるといけないしね。とりあえず、屋根伝いに店に帰り……」
家路に着こうとしたエレンの背後から人の気配が感じられる。
いや、気配というほど生やさしいものではない。
それはれっきとした殺意だった。
男達に気を取られ、完全に油断していたエレンは自らの失態を嘆いた。
振り向けば殺される。
動けないエレンの頬を汗が滴っていった。
「やれやれ、やはり冒険者とはいってもあの程度か。囮程度にしか役に立たないか」
ゾッとするような女の低い声。
先程まで見事に消していた気配も今は感情剥き出しの禍々しさを感じるほど巨大になっていた。
怒りと哀しみが混じったような複雑な感情がエレンの心に流れ込んでくる。
自然とエレンの呼吸は早くなっていた。
「安心しろ。危害を加える気はない。だが、貴様の主には死んでもらわねばならんがな」
「っ!?」
言葉を聞いた瞬間に固まっていたエレンの身体が一瞬で振り返り、腕を横薙ぎに払いった。
「《激血の大鎌》」
脈打つ真紅の刃が空を切り裂いた。
エレンは荒くなった呼吸を整えもせずに、一点を見つめる。
その先には黒いフード付きのローブを目深に被った人の姿があった。
「はぁはぁはぁ……さ、させない……あの人はっ! あの人だけは絶対に殺させない!」
「奴隷が主人を庇うか? それで? どうするつもりだ?」
変わらない圧倒的な迫力を前にエレンはゆっくり呼吸を整えた。
恐ろしさは今もある。
だが、それを上回る恐怖が今のエレンにはあった。
「あの人が死ぬなんて見たくも考えたくもない……私が守ってみせる! お前を殺してでも絶対に守ってみせる!」
己が魔力を全て解放し、黒き炎を纏って眼前の敵を睨むエレン。
そんなエレンを相手は奥した様子もなく、一瞥してからため息混じりに呟いた。
「半端なお前に出来るの? エレオノーラ」
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