鑑定能力で恩を返す

KBT

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第二章

天然ママ

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「も、もう! 鑑定能力かんていスキル持ちなら最初からそう言ってよね! お、お陰で恥かいちゃったじゃないの!」

 子どものようにムキになって怒るリサ。
 妖艶な大人の色気を醸し出す肉体を持ちながら、あどけない少女のような物言いをするリサに少しドキッとするサト。
 その背中に冷たい視線が刺さった。

「サト様って、そんな顔もされるんですね? 初めて拝見いたしました」

 サトは自分がどんな顔をしていたかはわからない。
 だが、振り返った先にいるエレンが凍てつく氷のような顔をしている事はわかった。

「エ、エレンさん? お、俺は別に何も……」

「ふんっ! ……です! 私だってあと500年もすればあれぐらい……」

『500年もかかるんかいっ!』と心の中でツッコミつつも、口には出さない。

「……エレンちゃんって本当に大事にされてるのね」

 不意にリサが呟いた。
 その様はさっきまで狼狽していたとは思えないほど、落ち着いていた。

「だから言ったでしょ!? 私は幸せだって」

「そう言われても簡単には信用できないわよ。とっても心配したんだから」

 2人はわかったように話すが、サトとロンメルには何のことかわからず、改めて事情を尋ねた。
 リサは人間の夫とエレンと3人でジラノフ帝国の片田舎で暮らしていた。
 それが今から90年程前、当時の皇太子に求婚されたエレンが失踪した。
 リサは最初は帝室に誘拐されたのではないかと思っていたが、調べた限り帝室内にエレンの姿はなかったので、結婚が嫌で身を隠したのではないかと考え、近隣を探しつつも自宅で帰りを待っていた。
 そこに最近になって帝室に仕える宮廷魔術師の1人が凄惨な非業の死を遂げたと情報が入ってきた。
 普通の死に方とはかけ離れた死因に調査したところ、死んだ宮廷魔術師が呪術に長けていた事から、かけた呪いが解かれて呪いが降りかかったのではないかという話だ。
 その魔術師が皇太子と共にエレンの元を訪れていた事を思い出したリサはエレンが呪いを受けて姿を消したのでないかと気づいた。
 そこでエレンを探す旅に出たところ、ブロディア王国から来た商人からたまたま美しい店員がいると聞いて、ハメルンまでやって来てエレンを見つけた。
 だが、ようやく見つけたエレンは奴隷だったので、諸悪の根源が主人だと思い、サトを殺そうとしたのだ。

「90年ぶりにあった娘が奴隷だったのよ? 親なら誰だって怒るでしょ?」

「でも、私はサト様は違うって、私が望んだって言ったでしょ?」

「いや、呪いの後遺症で頭がおかしくなったのかと……」

「呪いが解けてるのにそんなわけでないでしょ! それにだからって私をボコボコにする!? 死にかけたんですけど!?」

「叩けば治るかと……」

「んなわけあるかぁあああああ!」

 母と娘の会話を聞きながら、サトは思った。
 間違いなくリサは天然だと。
 
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