鑑定能力で恩を返す

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第二章

商人として

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「しょ、商人失格?」

 いつもとは違うリサの雰囲気にサトは息を呑んだ。
 黙っていれば絶世の美女である。
 静かに佇む凛とした姿に不覚にもサトは見惚れていた。

「そうよ。さっきの刺突短剣スティレット。あれはかなり希少レアな武器よ? 最初に提示された金額でもかなり良心的な値段だったわよ」

「いや、でも……」

「でもじゃないのっ! 確か鑑定能力かんていスキルって物の価値がわかるのよね?」

「は、はい。相場価格が……」

「それって大魔法馬鹿マーセルが言ってたけど、アレはあくまで相場であって地域的な差は反映されないの。例えば塩とかだと海岸沿いの街と内陸の山間の街では流通価格が違うでしょ? でも鑑定能力かんていスキルではどちらでも同じ価格が出ちゃうのよ」

「なっ!? そ、そうだったんですか……」

 サトは己の失態に気づいた。
 サトはこれまで鑑定能力かんていスキルで出た価格がこの世界での相場だと思っており、地域差による価格変動について考えていなかった。
 要は必要経費を失念していたのである。
 行商人は商品の価格を決める際には仕入れ値、管理費、人件費、輸送費それに利益を加えて販売価格を決めている。
 ところがサトは公都に店を構えているロンメル商店で働いており、商品の仕入れはハンター達からの買取が主で、輸送費は必要ない。
 更に管理費や人件費といっても働いているのは自分とロンメルとエレンの3人だけで、エレンに至っては奴隷という立場のため人件費はタダである。
 店舗を構えているという事は行商人より生活が安定しているのだ。
 
「行商人は大切な外部との繋がりなのよ。例えば公都である品が品薄になったとしたら、他の街から仕入れないとダメでしょ? そんな時に普段から行商人と付き合いがないと取引してもらえないのよ。だから普段からちゃんとお付き合いしておくことが大切なの。それなのにサトちゃんったら!」

「す、すいません……」

「私に謝らなくていいから、次からは気をつけてね。ウチも旦那が行商やってたから雑な扱いされると腹が立つのよ。まぁ、サトちゃんならもう大丈夫だと思うけど」

「俺は注意すると言いながら鑑定能力かんていスキルに頼り過ぎてたみたいです。行商の方と取引する際には注意するようにします。旦那さんはもう引退されたんですか?」

 サトは今後は行商人とも繋がりを持とうと思い、まずはリサの旦那でエレンの父である方と面識を持とうと考えた。

「引退って言うか、もう死んじゃってるわよ」

「えっ?」

 リサのサラッとした答えにサトは固まった。
 
 
 

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