鑑定能力で恩を返す

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第二章

葛藤

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「……なんでそうなるんですか?」

 あまりにも突拍子もないリサの言葉にサトは普通にツッコミを返した。

「だって、自分と種族が違う人との生活に不安があるんでしょ? なら、私がお試しさせてあげるわよ」

 リサは絶世の美貌に愛くるしい笑顔をのせてサトに迫った。
 普通の男であれば簡単に堕ちるだろう。
 しかし、サトは揺るがなかった。

「別に子どもが出来るかどうかの問題じゃないんですよ?」

「でもサトちゃんってこっちの世界に来てから誰か抱いた事あるの?」

 ない。
 はっきり言って全くない。
 強いて言えばエレンに裸で迫られた時に未遂があった程度だ。
 あの時は奴隷としてエレンを買った事に罪悪感を感じていた事もあって抵抗できたが、今同じ事をされたら……。
 サトはちょっと自信がなくなった。

「駄目よ。経験が無いまま本番を迎えて、その時にうまく出来なかったらそれこそ困るでしょ?」

「そうなんですけど……別に経験が無いわけじゃ……」

「ちなみに言っとくけど、獣人族はすごいわよ?」

「うっ! す、凄い……とは?」

「すごく凄いんだって」

 サトの身近にいる獣人と言えばアメリアである。
 あの性格、そして獣人特有の凄い……サトは生唾を飲み込んだ。

「そ、そんなに凄いのか……はっ! だ、駄目ですよ! なんでアメリアさんとそんな事になるんですかっ!」

「あら? 私はアメリアちゃんなんて一言も言ってないわよ?」

 安い挑発とは思いながらもサトは顔を赤くして唇を噛んだ。

「まぁ、揶揄うのはこれくらいにしてもあんまり考え過ぎるのも駄目よ。貴方は変なところで真面目だから、少し気を抜くくらいで丁度いいの」

「そうでしょうか……まぁ、考えておきます」

「『前向きに』考えてね。じゃあ、そろそろ私は行くわ。またね~」

 リサは美しい肢体を振り返して周りの男達の視線を集めながら、何処かへと行ってしまった。

「やれやれ、結局何だったんだ? あの人っていつも唐突なんだよなぁ。でも、考え過ぎ……か。ロンメルさんにも言われた事があったっけ。頑固だって」

 サトは特に恋愛に奥手なわけでは無いし、どちらかと言えば難しく考える事のは嫌いな方だった。
 異世界転移という自身のおかれた状況が慎重にならざるをえなくしているだけだった。
 しかし、リサの言うことにも一理ある事は理解していた。

「ロンメル商店も繁盛してるし、今はそれなりの収入もある。うーん、異世界こっちでの結婚とかも考えていい……のか? うーん」

 サトは首を捻りながら自分もその場を後にした。
 
 

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