鑑定能力で恩を返す

第二章

サプライズ

「毎度どうも～」

　ロンメルとエレンは数人の男達が店を後にするのを見送ってから息を漏らした。

「やれやれ、サトにも困ったもんじゃ。まさかこんなに勝ってくるとはのぅ」

「ははは……サト様って熱中すると急に周りのことが見えなくなるんですよね」

　ロンメルとエレンは苦笑いを浮かべて目の前にある箱の山を見た。
　大市に出かけたサトの帰りをエレンと待っていたロンメルだったが、陽が落ちかけた頃に複数の男がやって来て、急に店の中に荷物を運び込んできたのだ。
　箱の中身は長剣ロングソードや小剣ショートソードなどの剣をはじめ、槍、斧、弓、短弓、弩弓クロスボウなど様々な種類の武器で、主人の商人曰く、サトが買った物を運んで来たのだと言う。
　その数なんと183点、総額にして700万ルークを超える品々だというではないか。

「これだけの数、サト様はセールでも行うおつもりでしょうか？」

「いや、どれも武器の質としてはかなり良い物ばかりじゃよ。セールにするには勿体ないわい。特にこの2本はのぅ」

　特に厳重に渡されたのが2本の刺突短剣スティレットだった。

「あの商人が言う通り、魔法武器マジックウェポンのようじゃな。しかもかなりの業物わざもの。相変わらずサトの目利きは大したもんじゃ」

「さすがサト様です！　世界一の目利きです！　本当に素晴らしいです！」

　エレンが興奮しながら喚いていると店の扉が開いて、噂の男が入ってきた。

「只今戻りました。エレンさん、随分と興奮されてたみたいですね。外まで声が漏れてましたよ」

「あっ！　し、失礼しました……おかえりなさいませ、サト様」

「おかえり。許してやってくれ。お前さんの素晴らしさに感動しておったんじゃよ」

「ははは……それはそれでちょっと恥ずかしいですね。それにしても、この箱の山はすごい事になっちゃったなぁ」

「うむ。いくら良品ばかりとはいえ、買い過ぎたのではないか？　この大量の品はどうするんじゃ？」

「ちょっと考えがありまして。それよりエレンさん。ちょっといいですか？」

　サトは早る気持ちを抑えられず、エレンを呼んだ。
　サトは昔からサプライズ演出が好きで、早く見せたくて我慢できなくなる癖があった。
　だから目の前の武器より、エレンにプレゼントを渡す事を優先してしまった。

「はい、なんでしょうか？　サト様」

「えっとね……これ、受け取って欲しいんだ」

　サトは小さな宝石飾りがある箱をエレンに渡した。
　
「あの……これは？」

「開けてみて」

　早る気持ちと笑みを必死に抑え、サトはなるべく表情を崩さないようにしていた。
　エレンが箱を開け、中身を見た。

「サ、サト様っ！？　こ、こ、こ、これは……」

「なんと……」

　エレンもロンメルもプレゼントの白金の首飾りに驚き、サトはサプライズの成功を確信した。
　しかし、事態は思わぬ方向に転がり始めた。

「プ、プ、プ、ププ、プロ、プロポーズゥウウウウウウウ！？」

　顔を真っ赤にして破顔したエレンが絶叫した。

「……えっ？」

　事態を飲み込めないサトは呆然と立ち尽くしていた。