鑑定能力で恩を返す

KBT

文字の大きさ
146 / 155
第二章

異文化勘違い

しおりを挟む
「サ、サ、サ、サトサ、サト様っ!? こ、ここここ、これはあ、ああのっ!」

 身体は局地的な地震を思わせる程に震え、およそ言葉とは思えない奇声を発しながらエレンは目を白黒させていた。
 あまりの驚きようにサプライズを仕掛けたサトも困惑を隠せなかった。

「えっと……そんなに驚いた? 俺としては成功せいこうして嬉しいんだけど……」

「せ、せ、せせせ、性交せいこうっ!? わ、わ、わわわた、私はサト様ならいつでも!」

 頭から湯気が立ち上りそうなほどに白い肢体を真っ赤にしたエレンとそのリアクションに若干引き気味のサト。
 それを見ていた老獪なる眼光はその違和感を見逃さなかった。

「待て。サトや、お前さんは何故この首飾りをエレンにと思ったんじゃ?」

「えっ? 帰りに寄った気の良いおばちゃんの店で買ったんですよ。細工も丁寧で綺麗だし、エレンさんに似合うかなぁと思いまして」

「や、やや、やっぱり、ここここ、これは……」

「待ちなさい。エレン。これは下手に喜ぶと、後に尾を引く事になるやもしれんぞ」

 浮かれるエレンとは違い、ロンメルはサトの言葉で違和感の正体を察した。
 そしてロンメルは理解したのである。
 2人の悲しい勘違いを。

「もう一つサトに聞きたいんじゃが、お前さんの世界ではプロポーズの時には何を贈るのじゃ?」

「プ、プロポーズですか? 俺は経験ないですけど、多分指輪です」

「えっ!? ゆ、ゆ、指輪? プロポーズに指輪ですかっ!?」

 サトの言葉に目を見開いてエレンは驚いた。

「えっ? 普通は指輪じゃないですか? だって、ほら? 公爵様の御子息もプロポーズ用の指輪を……」

「お前さんが見つけたあの指輪は恋人に贈るための物ではあるが、プロポーズのための物ではないぞ? あの指輪は公爵家の縁者である事を示すための証としての価値しかない。だいたい公爵家の次期当主のプロポーズの品がたかが1400万ルークで済むわけないじゃろ?」

「じゃ、じゃあ……こっちの世界ではプロポーズに何を……あっ! も、もしかして……」

 何かを察したサトは冷汗を流しながらチラッと横目でエレンを見た。
 そこには先ほどまでの浮かれたエレンはおらず、沈んだ暗い眼をしたエレンがいた。

「はぁ……お前さんの推測通り、この世界でのプロポーズには首飾りを贈るのじゃよ。互いの首に首飾りを付け、永遠の愛を誓い、それをたがえれば首を差し出すという古い習慣からきているのじゃよ」

「なっ!? そ、そんな……」

 あまりの衝撃に仰反り、後ずさるサトは柔らかい何かにぶつかった。
 恐る恐る振り返るサトの視線に映ったのは、世にも恐ろしい顔をしたリサの姿だった。

「サトちゃん……言ったわよね? エレンちゃんを泣かせたら許さない……って?」

「こ、こ、ここ、これには深い理由がっ!?」

「問答無用っ! この痴れ者がぁああああああ! 《電撃制裁おしおきスパーク》!」

「ぎゃあああああああすぅうううう!」

 サトの身体に眩い電気が走り回っていった。

 《電撃制裁おしおきスパーク
 人族の夫にお仕置きするためにリサが独自に編み出した雷魔法。
 魔法抵抗の弱い者に使っても健康被害が出ない程度の軽い電気を流す魔法だが、痛いものは痛い。
しおりを挟む
感想 23

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

異世界転移! 幼女の女神が世界を救う!?

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
アイは鮎川 愛って言うの お父さんとお母さんがアイを置いて、何処かに行ってしまったの。 真っ白なお人形さんがお父さん、お母さんがいるって言ったからついていったの。 気付いたら知らない所にいたの。 とてもこまったの。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

処理中です...