鑑定能力で恩を返す

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第二章

あの件

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 プシュゥウウウウ

 今のサトを表す擬音があるとすればこれしかない。
 リサの《電撃制裁おしおきスパーク》で心身ともに疲れ果て床に寝そべるサト。
 漫画的な表現であれば黒焦げになって、煙が上がっているだろうが、《電撃制裁おしおきスパーク》の威力は低周波治療器程度であり、それを卓越した魔法使いであるリサが操る限り死ぬことはないのだ。

「まったく、もう! エレンちゃん泣かせたらダメって言ったのに! 悪い子!」

「ちょ、ちょっとした……いや、壮大な勘違いがあっただけでして……」
 
 まだ痺れてるような感覚ながらサトはリサに事のあらましを説明した。
 求婚プロポーズに首飾りを贈る風習を知らなかった事。
 元いた世界では指輪を贈る事。
 そして勘違いでエレンを悲しませた事。

「勉強不足でした。すいません」

「なるほどねぇ、それにしても求婚プロポーズに指輪とは意外ね。だって指は10本もあるのよ? 異種族の中には指がもっと沢山ある人達もいるから大変よ」

「左手の薬指って決まりがあるんですよ」

「それって人族でしょ? 中には指が7本あったり、4本しかなかったりする種族もいるのよ。その点、首は基本的に一個だからね。わかりやすいでしょ?」

 ここは現代社会でなく、異世界であり、そこに棲むのは人族だけではない。
 そして棲む人に合った風習や習慣があるという事をサトは改めて知らされた。

「まぁ、サトちゃんはこれからもっと勉強が必要ね」

「はい……そうします。エレンさんもすいませんでした」

「いいえ、私も早とちりでした。求婚プロポーズ以外でも首飾りを贈ることはあるのですから……ですから、これは有り難く頂戴します。ですから……」

 エレンは首飾りをギュッと握りしめてながら、上目遣いにサトを見た。

「ひ、左手の薬指は開けておきますから……いつか、そこに指輪をくださいませ……」

「っ!? あ、いや……その……」

 ドキッとしたサトはうまく言葉が出てこず、俯いて頭をかくしか出来なかった。

「あらあら。まったく脈がないってわけじゃなさそうね。これならあの件も進めてよさそうね」

「あの件? それは何の事ですかな?」

「同じ場所に立ってないのはフェアじゃない……ふふっ、エレンちゃんったら良いお友達がたくさんできたのね。ママはとっても嬉しいわ」

 リサはそう言って笑った。
 ロンメルも何のことかはわからなかったが、その優しい微笑みに悪い事ではないと思い、微笑ましくその場を見守った。


 
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