鑑定能力で恩を返す

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第二章

魔法鞄

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「な、なんという事じゃ……」

 店の中に所狭しと置かれていた武器が入った大量の木箱が次々とサトの持つ鞄の中へと吸い込まれていくのを見て、ロンメルは言葉を失った。

「どうです? 掘り出し物でしょ? ロンメルさん」

 物理法則を完全に無視し、木箱を鞄に仕舞いながら、サトは誇らしげにそう言った。

「掘り出し物どころではないわい……魔法鞄マジックバックなぞ、この目で見る事すら叶わんと思っておったものを……一体、いくら価値があるかすら検討もつかんぞ」

鑑定能力かんていスキルでは相場は3億だそうです。王都でオークションにかけたらもっと高値がつくと思いますけどね」

「さ、さ、さ、さ、3億じゃと……まったく、とんでもない物を見つけてきたもんじゃ」

 ロンメルは額に汗を浮かべ、珍しく動揺していた。
 それもそのはず、実はロンメルにとって魔法鞄マジックバックは長年の憧れであり、生涯で一度は手に入れたい物でもあった。
 それが今、目の前にあるのだから動揺するのも無理のない事だった。

「ふぅ……お前さんはいつも儂を驚かせてくれるが、今回は特別じゃな。魔法鞄マジックバックに魔法の刺突短剣スティレットが2本、大量の良品武器。凄いという言葉ですら足りん。凄すぎじゃよ、サト」

「ありがとうございます。ロンメルさん! 実はもう一本魔法の武器がありまして……えっと、これです!」

 ロンメルに褒められて上機嫌になったサトは木箱を全て仕舞い込んだ後に鞄の中をゴソゴソと探り、中から一本の武器を取り出して、自信満々にロンメルに見せた。

「これは大市で最初に買った品なんですけど、相場の半値で買えたんですよ。売ってたのが商人じゃなくて使用人だったので、多分貴族の方の放出品かと……」

「ほぅ、素晴らしいのぅ。鮮やかな朱色の柄に刃にはふんだんに金を使った豪華な装飾。実用性は皆無じゃが、見事なじゃわい」

「えっ? グレイブ?」

 ロンメルに言われてサトは自分が持っている武器を改めて見直した。
 サトは一店舗目で買った魔法の斧槍ハルバード氷の大牙アイスファング》を出したつもりだったが、実際手に持っていたのは大きな刃に豪華な装飾が施された長柄武器、グレイブだった。

「あ、あれ? おかしいな? こんなの買った覚えがないんだけど……」

「なんじゃ? 大量に買った武器の良物をそっちにも入れとったのではないのか?」

「それはないです。この鞄の存在が知られたら危ないから、最初に買った斧槍ハルバード以外の武器は入れてないんですよ。それにこんな武器買った覚えもないし、おかしい……」

「それって元の持ち主の品じゃない?」

 訝しむサトに奥から戻ってきたリサがそう声をかけた。
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