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ドラゴン
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「どうしてマツリは、優秀な人たちを動物に変えてしまったの?」
ヘイルータンはそう尋ねた。
キャリッジのなかに広がる部屋。そのロフトにはベッドが置かれていた。大きなベッドで、ヘイルータンとマツリは、ふたりで腰かけていた。
そうしていると窓から景色を見ることが出来るのだった。緑草ゆたかな平原が広がっている。窓からの景色は、馬車の振動に合わせて小刻みに揺れていた。
振動そのものは部屋につたわって来ない。景色の揺れではじめて、馬車のなかにいることを思い出す。
「私のウワサはすごいんでしょうね。機嫌を損ねたらすぐに誰かを動物に変えてしまう悪い大魔術師ってところかしら」
「オレも図書館に来るまでは、そう思ってたかも」
「私が悪いんじゃないのよ」
マツリはそう言って、ヘイルータンの白銀の髪をすくいあげるようにした。ヘイルータンの髪はいまや膝裏にとどきそうなほど伸びていた。頭に重みを感じるほどだった。さすがに散髪しようかと思うのだが、マツリが切って欲しくなさそうなので、ずっとそのままにしていた。
私が悪いんじゃないのよ――と、マツリはもういちどそう言ってつづけた。
「どういうわけか、私が目をかける優秀な人間には間諜が多いのよ。そうよね。この図書館の内情を知ろうと送られてくる間諜は、私に気に入られるために鍛え上げられているんだもの。気に入った人間が間諜だなんて当たり前のこと」
すこし間があった。
マツリの言葉はまだ続くだろうと思って、ヘイルータンは黙っていた。
「気にしていた相手に裏切られるのは、とっても辛いのよ。だから私はそういう人間を間諜に変えた。でも、そういう私の怒りの問題だけじゃないのよ。私には命をかけても守らなくちゃならないものがあるから」
「図書館?」
そう、とマツリはうなずいた。
「図書館はもともと私の御先祖さまが興したもの。ヒトマル族って言うね。私にはその血が流れてる」
と、大魔導師は黒衣をわずかに盛り上げている胸元に、その小さな手を置いていた。
「ルーン文字を使っていた人たちだ」
「そうね。ヒトマル族の血を引く人間は、もうほとんど残ってない。いちおうサルヴィアにもヒトマル族の血が通ってるわ。たしかヒトマル族とジハーダ国の人間との混血だったかしらね」
「そうだったんだ……」
さすがにそこまでは、ヘイルータンにも見抜けなかった。
「先代の大魔導師は私の母だった。私は御先祖さまが大切に守ってきた、あの図書館を命に代えても守らなくちゃいけない。図書館を害そうする人間は、徹底的に排除する」
「だから間諜を動物に?」
「そうよ。サルヴィアは間諜を探り出す能力に長けている。サルヴィアにもヒトマル族の血が流れているから、図書館を守ろうとする意志は強い。個人的には苦手だけど、そういう意味では信用してるのよ」
「……」
サルヴィアはきっと、間諜ではない人間まで、間諜に仕立て上げている。そして濡れ衣を着せて大魔導師に報告している。
ヘイルータンだって、何度か陰湿な罠にはまりそうになっている。
罠にかかりそうなときはいつも、魔窟の獣たちが脳裏でささやきかけてくるのだ。「あの部屋には行くなよ」「あの女とは関わらないほうが良い」「今日のハーブティには下剤が入れられている」……そうやってヘイルータンの脳裏に忠告してくる声音は、たいてい当たっていた。
「でも私とサルヴィアだけじゃ、あの図書館を守るのはトテモ難しいわ。5大国は常に目を光らせているもの」
「ジハーダ。ジハラジャ。イタルカ。ピピ・ポポフ。アパリアルス」
世界地図で見たとき、図書館を中心にその5大国はまるで花弁のように広がっている。
「そう。図書館はどこの国にも属していない。でも我が物にしようと考えている者もいれば、失くしてしまおうと考えている者もいる。どこかの国が図書館を攻め滅ぼそうと軍を送れば、図書館はすぐに陥落してしまう。それほどに脆い」
「魔術師たちも、どこかの国からやって来た人たちだからね。図書館のために戦おうとしてくれるのは、ほんの数人だけかもしれない」
「ジハーダが動けば、ジハラジャが守ってくれる。ジハラジャが動けば、イタルカが守ってくれる。イタルカが動けば、ピピ・ポポフが守ってくれる。ピピ・ポポフが動けば、アパリアルスが守ってくれる。そして――」
「アパリアルスが軍を動かせば、ジハーダが守ってくれる?」
「そう。そうやって世界の均衡のなか、図書館を保つのが大魔導師たる私の仕事」
「あの書簡を取捨選択していくのは、そういう意味が込められていたんだね」
と、ヘイルータンがそう言うと、大魔導師はヘイルータンの脇腹をつねった。
「知ってるくせに、知らないフリをしないの」
「ごめん」
「ヘイルータンも、図書館のために生きてくれる? ヘイルータンの能力は、図書館を維持するためには必要よ」
「買いかぶりすぎだよ」
「そんなことない。あなたは私が見てきたなかでイチバン優秀。そして、イチバン間諜であって欲しくはない」
「オレのことも調べたんでしょ? なら、間諜じゃないってわかるはずだよ」
大魔導師はかぶりを振った。
「調べたわ。でも、なにもわからなかった。どこで生まれて、そこで育ったのか。どこから来て、何をしようとしてるのか。徹底的に調べたのにヘイルータンについては、なにひとつわからなかったわ。間諜ならそれなりの偽造を用意してるはずなのに、それすらもなかった」
「隠してるわけじゃないよ。オレには出自がないからね」
「それってどういう意味?」
イデルの村を焼かれて、家族をうしなった。ヘイルータンの生まれを知る者は、誰もいなくなった。その後に、ダアゴとテンにひろわれたが。ふたりも魔窟で隠れて暮らしていた。ケィアルの村と交流があった程度だ。
サルヴィアによってイデルの村が焼かれたことは、言うつもりはなかった。
当時はサルヴィアに殺気をおぼえていたほどだったが、今ではそれほどの怒りは抱えてはいなかった。
両親のことや姉や妹の記憶は時間をかけてすこしずつ薄まっていった。
それに合わせてヘイルータンのなかにくすぶっていた憎悪も味気ないものに変わっていったのだった。
年月だけが、自分を癒してくれたのではない――とヘイルータンは知っていた。
ダアゴやテンといった獣たちとの出会い。チータイやマオといった友人たちとの日々。そういったものが、ヘイルータンから憎しみを取り除いてくれた。
(すべて打ち明けよう――)
そう思った。
故郷がむかし、サルヴィアたち魔術師によって焼かれたこと。それからダアゴに拾われたこと。ヘイルータンという名前も本名ではないこと。自分は《獣解呪の書》を盗み出すため、図書館に送り込まれた人間であること。
打ち明けたうえで《獣解呪の書》を持ちだしても良いか願いしてみよう。
良い、と。
今なら許してくれそうな気がした。
それを許してもらえるぐらいは、ヘイルータンは大魔導師に献身してきたつもりだった。
「あらためて話があるんだけど……」
「なぁに?」
「はい。オレは……」
ヘイルータンが切り出そうとした瞬間だった。不意に馬車がはげしく揺れた。突風にあおられたような揺られ方だった。大魔導師はヘイルータンに抱きついてきた。
「なにかしら?」
「様子を見に出てみるよ」
「待って。空に何か……」
と、ロフトのおおきな窓を、大魔導師は指差した。ヘイルータンもその指の先へと視線を向けた。
この馬車の頭上に、巨大な影が飛んでいるのが見えた。
「あれが……」
ドラゴン。
その瞬間。ヘイルータンはあらゆることを失念した。
この馬車がドラゴンの被害に遭うかもしれないということも、大魔導師の安全を確保しなければならないということも、これから海を見に行こうとしているということも――すべては後回しになった。
(オレは、あのドラゴンを見たことがある)
イデルの村が焼けたとき、空にはドラゴンが飛んでいた。今になって思い出した。ずっと忘れていたことだった。どうして忘れていたのかわからない。
見間違いだと勝手に納得してしまっていたのかもしれない。
今この空に浮かんでいるドラゴンを、もっとよく見てみたいと思った。
ヘイルータンが視認できたのは、その大きなシルエットだけだった。
馬車がさらに大きく揺れたのだ。
今度の揺れは激しく長いものだった。
「なんなのよ」
ヘイルータンにしがみついている大魔導師が叫ぶようにそう言った。
「しゃべらないで。舌を噛むから」
キャリッジの揺れがおさまるまで、ヘイルータンは大魔導師のカラダを抱きしめていた。大魔導師カラダは華奢で簡単に壊れてしまいそうだった。
「静かになったわね」
揺れがおさまって大魔導師はそう言った。
「でも酷い有様だ」
テーブルやイス。本棚もキッチンもグチャグチャになっていた。まるで巨人がこのキャリッジを振り回したかのようだった。
「なんだったのかしら」
「ドラゴンが出てきて、馬がビックリしてしまったんだと思う。チョット外の様子を見てくるよ」
「待って。私も行く」
「危ないかもしれない」
「ひとりで残されるほうが不安よ」
それもそうだなと思った。
出入口の扉が横向きになっていた。キャリッジが横転してしまっているのだろう。
扉を開けた。
「ここは?」
「どこかの森のなかみたい」
と、ふたりはキャリッジから這うようにして出た。
案の定。キャリッジは横転していた。引いていたはずの馬はいなかった。馬蹄のあとが地面に残されている。
「手綱が切れて、馬はどこかに逃げちゃったみたいだ」
不幸なことに御者は馬に踏まれたかして、死んでしまっていた。
空を見上げてみた。もうドラゴンの姿は、気配すら消え去っていた。
ヘイルータンはそう尋ねた。
キャリッジのなかに広がる部屋。そのロフトにはベッドが置かれていた。大きなベッドで、ヘイルータンとマツリは、ふたりで腰かけていた。
そうしていると窓から景色を見ることが出来るのだった。緑草ゆたかな平原が広がっている。窓からの景色は、馬車の振動に合わせて小刻みに揺れていた。
振動そのものは部屋につたわって来ない。景色の揺れではじめて、馬車のなかにいることを思い出す。
「私のウワサはすごいんでしょうね。機嫌を損ねたらすぐに誰かを動物に変えてしまう悪い大魔術師ってところかしら」
「オレも図書館に来るまでは、そう思ってたかも」
「私が悪いんじゃないのよ」
マツリはそう言って、ヘイルータンの白銀の髪をすくいあげるようにした。ヘイルータンの髪はいまや膝裏にとどきそうなほど伸びていた。頭に重みを感じるほどだった。さすがに散髪しようかと思うのだが、マツリが切って欲しくなさそうなので、ずっとそのままにしていた。
私が悪いんじゃないのよ――と、マツリはもういちどそう言ってつづけた。
「どういうわけか、私が目をかける優秀な人間には間諜が多いのよ。そうよね。この図書館の内情を知ろうと送られてくる間諜は、私に気に入られるために鍛え上げられているんだもの。気に入った人間が間諜だなんて当たり前のこと」
すこし間があった。
マツリの言葉はまだ続くだろうと思って、ヘイルータンは黙っていた。
「気にしていた相手に裏切られるのは、とっても辛いのよ。だから私はそういう人間を間諜に変えた。でも、そういう私の怒りの問題だけじゃないのよ。私には命をかけても守らなくちゃならないものがあるから」
「図書館?」
そう、とマツリはうなずいた。
「図書館はもともと私の御先祖さまが興したもの。ヒトマル族って言うね。私にはその血が流れてる」
と、大魔導師は黒衣をわずかに盛り上げている胸元に、その小さな手を置いていた。
「ルーン文字を使っていた人たちだ」
「そうね。ヒトマル族の血を引く人間は、もうほとんど残ってない。いちおうサルヴィアにもヒトマル族の血が通ってるわ。たしかヒトマル族とジハーダ国の人間との混血だったかしらね」
「そうだったんだ……」
さすがにそこまでは、ヘイルータンにも見抜けなかった。
「先代の大魔導師は私の母だった。私は御先祖さまが大切に守ってきた、あの図書館を命に代えても守らなくちゃいけない。図書館を害そうする人間は、徹底的に排除する」
「だから間諜を動物に?」
「そうよ。サルヴィアは間諜を探り出す能力に長けている。サルヴィアにもヒトマル族の血が流れているから、図書館を守ろうとする意志は強い。個人的には苦手だけど、そういう意味では信用してるのよ」
「……」
サルヴィアはきっと、間諜ではない人間まで、間諜に仕立て上げている。そして濡れ衣を着せて大魔導師に報告している。
ヘイルータンだって、何度か陰湿な罠にはまりそうになっている。
罠にかかりそうなときはいつも、魔窟の獣たちが脳裏でささやきかけてくるのだ。「あの部屋には行くなよ」「あの女とは関わらないほうが良い」「今日のハーブティには下剤が入れられている」……そうやってヘイルータンの脳裏に忠告してくる声音は、たいてい当たっていた。
「でも私とサルヴィアだけじゃ、あの図書館を守るのはトテモ難しいわ。5大国は常に目を光らせているもの」
「ジハーダ。ジハラジャ。イタルカ。ピピ・ポポフ。アパリアルス」
世界地図で見たとき、図書館を中心にその5大国はまるで花弁のように広がっている。
「そう。図書館はどこの国にも属していない。でも我が物にしようと考えている者もいれば、失くしてしまおうと考えている者もいる。どこかの国が図書館を攻め滅ぼそうと軍を送れば、図書館はすぐに陥落してしまう。それほどに脆い」
「魔術師たちも、どこかの国からやって来た人たちだからね。図書館のために戦おうとしてくれるのは、ほんの数人だけかもしれない」
「ジハーダが動けば、ジハラジャが守ってくれる。ジハラジャが動けば、イタルカが守ってくれる。イタルカが動けば、ピピ・ポポフが守ってくれる。ピピ・ポポフが動けば、アパリアルスが守ってくれる。そして――」
「アパリアルスが軍を動かせば、ジハーダが守ってくれる?」
「そう。そうやって世界の均衡のなか、図書館を保つのが大魔導師たる私の仕事」
「あの書簡を取捨選択していくのは、そういう意味が込められていたんだね」
と、ヘイルータンがそう言うと、大魔導師はヘイルータンの脇腹をつねった。
「知ってるくせに、知らないフリをしないの」
「ごめん」
「ヘイルータンも、図書館のために生きてくれる? ヘイルータンの能力は、図書館を維持するためには必要よ」
「買いかぶりすぎだよ」
「そんなことない。あなたは私が見てきたなかでイチバン優秀。そして、イチバン間諜であって欲しくはない」
「オレのことも調べたんでしょ? なら、間諜じゃないってわかるはずだよ」
大魔導師はかぶりを振った。
「調べたわ。でも、なにもわからなかった。どこで生まれて、そこで育ったのか。どこから来て、何をしようとしてるのか。徹底的に調べたのにヘイルータンについては、なにひとつわからなかったわ。間諜ならそれなりの偽造を用意してるはずなのに、それすらもなかった」
「隠してるわけじゃないよ。オレには出自がないからね」
「それってどういう意味?」
イデルの村を焼かれて、家族をうしなった。ヘイルータンの生まれを知る者は、誰もいなくなった。その後に、ダアゴとテンにひろわれたが。ふたりも魔窟で隠れて暮らしていた。ケィアルの村と交流があった程度だ。
サルヴィアによってイデルの村が焼かれたことは、言うつもりはなかった。
当時はサルヴィアに殺気をおぼえていたほどだったが、今ではそれほどの怒りは抱えてはいなかった。
両親のことや姉や妹の記憶は時間をかけてすこしずつ薄まっていった。
それに合わせてヘイルータンのなかにくすぶっていた憎悪も味気ないものに変わっていったのだった。
年月だけが、自分を癒してくれたのではない――とヘイルータンは知っていた。
ダアゴやテンといった獣たちとの出会い。チータイやマオといった友人たちとの日々。そういったものが、ヘイルータンから憎しみを取り除いてくれた。
(すべて打ち明けよう――)
そう思った。
故郷がむかし、サルヴィアたち魔術師によって焼かれたこと。それからダアゴに拾われたこと。ヘイルータンという名前も本名ではないこと。自分は《獣解呪の書》を盗み出すため、図書館に送り込まれた人間であること。
打ち明けたうえで《獣解呪の書》を持ちだしても良いか願いしてみよう。
良い、と。
今なら許してくれそうな気がした。
それを許してもらえるぐらいは、ヘイルータンは大魔導師に献身してきたつもりだった。
「あらためて話があるんだけど……」
「なぁに?」
「はい。オレは……」
ヘイルータンが切り出そうとした瞬間だった。不意に馬車がはげしく揺れた。突風にあおられたような揺られ方だった。大魔導師はヘイルータンに抱きついてきた。
「なにかしら?」
「様子を見に出てみるよ」
「待って。空に何か……」
と、ロフトのおおきな窓を、大魔導師は指差した。ヘイルータンもその指の先へと視線を向けた。
この馬車の頭上に、巨大な影が飛んでいるのが見えた。
「あれが……」
ドラゴン。
その瞬間。ヘイルータンはあらゆることを失念した。
この馬車がドラゴンの被害に遭うかもしれないということも、大魔導師の安全を確保しなければならないということも、これから海を見に行こうとしているということも――すべては後回しになった。
(オレは、あのドラゴンを見たことがある)
イデルの村が焼けたとき、空にはドラゴンが飛んでいた。今になって思い出した。ずっと忘れていたことだった。どうして忘れていたのかわからない。
見間違いだと勝手に納得してしまっていたのかもしれない。
今この空に浮かんでいるドラゴンを、もっとよく見てみたいと思った。
ヘイルータンが視認できたのは、その大きなシルエットだけだった。
馬車がさらに大きく揺れたのだ。
今度の揺れは激しく長いものだった。
「なんなのよ」
ヘイルータンにしがみついている大魔導師が叫ぶようにそう言った。
「しゃべらないで。舌を噛むから」
キャリッジの揺れがおさまるまで、ヘイルータンは大魔導師のカラダを抱きしめていた。大魔導師カラダは華奢で簡単に壊れてしまいそうだった。
「静かになったわね」
揺れがおさまって大魔導師はそう言った。
「でも酷い有様だ」
テーブルやイス。本棚もキッチンもグチャグチャになっていた。まるで巨人がこのキャリッジを振り回したかのようだった。
「なんだったのかしら」
「ドラゴンが出てきて、馬がビックリしてしまったんだと思う。チョット外の様子を見てくるよ」
「待って。私も行く」
「危ないかもしれない」
「ひとりで残されるほうが不安よ」
それもそうだなと思った。
出入口の扉が横向きになっていた。キャリッジが横転してしまっているのだろう。
扉を開けた。
「ここは?」
「どこかの森のなかみたい」
と、ふたりはキャリッジから這うようにして出た。
案の定。キャリッジは横転していた。引いていたはずの馬はいなかった。馬蹄のあとが地面に残されている。
「手綱が切れて、馬はどこかに逃げちゃったみたいだ」
不幸なことに御者は馬に踏まれたかして、死んでしまっていた。
空を見上げてみた。もうドラゴンの姿は、気配すら消え去っていた。
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