魔女の私と聖女と呼ばれる妹〜隣国の王子様は魔女の方がお好きみたいです?!〜

海空里和

文字の大きさ
30 / 39

30.お母様から教わっているはずです

しおりを挟む
「私ね、癒しの聖女として歴代を凌ぐ力を持っていたのね?」

 ふふ、とちょっと自慢げに微笑むお義母様。

 凄い!癒しの聖女ってだけでも凄いのに。

「ロズイエ王家に嫁いで、その力を国民のために使えるのが嬉しくて……気が付けば、皆、癒しの力頼りになっていたの……」
「君は悪くない……」
「あなた……」

 先程までの笑顔が消え、苦しそうな表情のお義母様に、肩を抱いていたお義父様が否定した。

「私の母、王太后が、聖女の力に溺れてハーブを蔑ろにしたのだ。」

 お義父様の説明に、オスタシスが重なる。

 ロズイエでもそんなことがあったなんて……。

「その年の冬、ロズイエでは疫病が流行して、準備をしてこなかった国民たちには私の力が効きづらくなっていたの。そんな中、手を差し伸べてくれたのが、オスタシスの王太后様だった」
「オスタシスの王太后はすぐに腕の良い調合師のハーブを惜しみもなく提供してくれた。」
「それが……」
「そう、貴方のお母様のハーブ」

 お母様のハーブがこのロズイエを救った。

 改めて話を聞けば、本当に凄いと思う。

「あれ…、ということは……」
「そう」

 お義父様とお義母様の話を聞いて、気付いた私に、お義母様が微笑んで言った。

「あのときの貴方のお母様のレシピがあれば、オスタシスも救える可能性があるわ」

 お義母様の言葉に、希望がさす。

 私はそのレシピを知らない。でも、きっと教わっているはず。何故か、そう確信出来た。


 とりあえず、この話は終わり、皆解散になった。

 ロズイエにはオリヴァー様と、お義母様、そしてロジャーが一緒に行ってくれることになった。

 お義兄様がオスタシスに交渉してくれるらしい。

 お義姉様はお子様がいるので、お留守番。「私も行きたかった!」と残念そうに言ってくれていた。

 ロズイエの皆様は本当に温かい。

 私は感謝を胸に、オリヴァー様と王都のお店に向かった。

「お嬢様……! 殿下?!」

 お店に着くと、エミリーが笑顔で迎えてくれるも、オリヴァー様も一緒で驚いていた。

「だから王子殿下が気軽に王都になんかって…」
「君も王族の人間だろ? それに、君を一人でなんて行かせられるか」

 母のレシピのヒントがないか、お店に行くと言った時に、オリヴァー様はお忙しいにも関わらず、一緒行くと言ってくれた。

「ロジャーがいるから大丈夫なのに」

 そう言うと、オリヴァー様はブスッとしてしまった。

 あれ?

「貴方を守るのは自分じゃないと嫌なんですよ」
「うるさいぞ、ロズ!」

 後ろに控えていたロジャーがしれっと言うと、オリヴァー様が慌てて遮った。

「ま、まあ、そういうこと……だ…」

 赤くなりながらもオリヴァー様は私の手をぎゅうっと握った。

 つられて私の顔も赤くなる。そして、幸せな気持ちになる。

 オリヴァー様と想いが通じ合ってから、十分幸せだと思っていた私の人生は、日々、増々幸せなものになっている。

 そんな感謝の気持ちで彼を見つめていると、目が合ったオリヴァー様から優しい微笑みを向けられる。

 うわ……っ!

「それでお嬢様? 今日はどうされたんですか?」

 エミリーの言葉で現実に戻るも、エミリーとロジャーからはニコニコと見守られていた。

 私とオリヴァー様はそれに気付き、パッと手を離す。

 うう、恥ずかしい……!私ってば、幸せボケしてるんじゃないかしら?!

 それに、今はそれどころじゃない。

「エミリー、私のお母様がロズイエを救ったハーブのことだけど……」

 私がそう言うと、エミリーは目を細めた。

「まさか、そんな日が来るなんて……」
「知ってるのね?!」

 エミリーは静かに頷いて、続けた。

「ロズイエを救ったあなたのお母様は、いつかオスタシスもそうなるかもしれないと危惧し、お嬢様にハーブの全てを叩き込まれました」
「そうなの……」

 お母様からはハーブの知識を確かに叩き込まれた。でも、ロズイエを救ったレシピなんて……。

「お母様はオスタシスを信じたかったんだと思います。だからあなたには何も言わなかった。でも、確かにレシピはあなたの中にあります」

 トン、と私の胸に指を当てるエミリー。

「罹る前のエキナセア、罹った後の……」
「エルダーフラワー!」

 エミリーの言葉に私はすぐに反応した。

「何だか呪文のようですね」
「調合師にとっては合言葉みたいなものよ!」

 ロジャーが首を傾げたので、私は笑顔で答える。

「その顔、わかったようだな?」

 オリヴァー様が私の表情を見て微笑む。

「はい! あの、オリヴァー様、エルダーフラワーのドライハーブを大量に用意していただくことは……」
「任せとけ!」

 力いっぱい返事をし、オリヴァー様におずおずと頼めば、彼は当然、といった顔で言ってくれた。

 その顔に、また幸せな気持ちが胸に充満していくのを感じた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

ブスすぎて嫁の貰い手がないから閨勤侍女になれと言われたので縁を切ります、完全に!完全縁切りの先にあったのは孤独ではなくて…

ハートリオ
恋愛
ルフスは結婚が決まった従姉の閨勤侍女になるよう父親に命令されたのをきっかけに父に無視され冷遇されて来た日々を終わらせようとブラコン父と完全に縁を切る決意する。 一方、従姉の結婚相手はアルゲンテウス辺境伯とのことだが、実は手違いがあって辺境伯が結婚したいのはルフス。 そんなこんなの異世界ファンタジーラブです。 読んでいただけると嬉しいです。 2/26 番外編を投稿しました。 読んでいただけると嬉しいです。 思っていたよりずっとたくさん読んでいただいていてとても嬉しいです。 とてもとてもありがとうございます!!   

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

旦那様、離婚しましょう ~私は冒険者になるのでご心配なくっ~

榎夜
恋愛
私と旦那様は白い結婚だ。体の関係どころか手を繋ぐ事もしたことがない。 ある日突然、旦那の子供を身籠ったという女性に離婚を要求された。 別に構いませんが......じゃあ、冒険者にでもなろうかしら? ー全50話ー

婚約破棄された聖女は、愛する恋人との思い出を消すことにした。

石河 翠
恋愛
婚約者である王太子に興味がないと評判の聖女ダナは、冷たい女との結婚は無理だと婚約破棄されてしまう。国外追放となった彼女を助けたのは、美貌の魔術師サリバンだった。 やがて恋人同士になった二人。ある夜、改まったサリバンに呼び出され求婚かと期待したが、彼はダナに自分の願いを叶えてほしいと言ってきた。彼は、ダナが大事な思い出と引き換えに願いを叶えることができる聖女だと知っていたのだ。 失望したダナは思い出を捨てるためにサリバンの願いを叶えることにする。ところがサリバンの願いの内容を知った彼女は彼を幸せにするため賭けに出る。 愛するひとの幸せを願ったヒロインと、世界の平和を願ったヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACより、チョコラテさまの作品(写真のID:4463267)をお借りしています。

「醜い」と婚約破棄された銀鱗の令嬢、氷の悪竜辺境伯に嫁いだら、呪いを癒やす聖女として溺愛されました

黒崎隼人
恋愛
「醜い銀の鱗を持つ呪われた女など、王妃にはふさわしくない!」 衆人環視の夜会で、婚約者の王太子にそう罵られ、アナベルは捨てられた。 実家である公爵家からも疎まれ、孤独に生きてきた彼女に下されたのは、「氷の悪竜」と恐れられる辺境伯・レオニールのもとへ嫁げという非情な王命だった。 彼の体に触れた者は黒い呪いに蝕まれ、死に至るという。それは事実上の死刑宣告。 全てを諦め、死に場所を求めて辺境の地へと赴いたアナベルだったが、そこで待っていたのは冷徹な魔王――ではなく、不器用で誠実な、ひとりの青年だった。 さらに、アナベルが忌み嫌っていた「銀の鱗」には、レオニールの呪いを癒やす聖なる力が秘められていて……?

婚約破棄された宰相です。 正直、婚約者も宰相も辞めたかったので丁度よかったです

鍛高譚
恋愛
内容紹介 「婚約破棄だ! そして宰相もクビだ!」 王宮の舞踏会で突然そう宣言したのは、女性問題を繰り返す問題王太子ユリウス。 婚約者であり王国宰相でもあるレティシアは、静かに答えた。 「かしこまりました」 ――正直、本当に辞めたかったので。 これまで王太子の女性問題の後始末、慰謝料交渉、教会対応、社交界の火消し…… すべて押し付けられていたレティシアは、婚約も宰相職もあっさり辞任。 そしてその瞬間―― 王宮が止まった。 料理人が動かない。 書類が処理されない。 伝令がいない。 ついにはトイレの汚物回収まで止まり、王宮は大混乱。 さらに王太子の新たな女性問題が発覚し、教会は激怒。 噂は王都中に広がり、王宮は完全に統治不能に。 そしてついに―― 教会・貴族・王家が下した決断は、 「王太子廃嫡」 そして。 「レティシア、女王即位」 婚約破棄して宰相をクビにした結果、 王宮を止めてしまった元王太子の末路とは――? これは、婚約破棄された宰相が女王になるまでの 完全自業自得ざまぁ物語。

聖女に負けた侯爵令嬢 (よくある婚約解消もののおはなし)

蒼あかり
恋愛
ティアナは女王主催の茶会で、婚約者である王子クリストファーから婚約解消を告げられる。そして、彼の隣には聖女であるローズの姿が。 聖女として国民に、そしてクリストファーから愛されるローズ。クリストファーとともに並ぶ聖女ローズは美しく眩しいほどだ。そんな二人を見せつけられ、いつしかティアナの中に諦めにも似た思いが込み上げる。 愛する人のために王子妃として支える覚悟を持ってきたのに、それが叶わぬのならその立場を辞したいと願うのに、それが叶う事はない。 いつしか公爵家のアシュトンをも巻き込み、泥沼の様相に……。 ラストは賛否両論あると思います。納得できない方もいらっしゃると思います。 それでも最後まで読んでいただけるとありがたいです。 心より感謝いたします。愛を込めて、ありがとうございました。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

処理中です...