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31.妹だから助けに行きます
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「エルダーフラワー届きましたー!」
「ありがとうございます!」
あれから。すぐにオリヴァー様は、エルダーフラワーを手配してくれた。
それから調合室に籠って私はひたすらオスタシスのための調合をしている。
もちろん、ロズイエも安心、という訳ではないので、ロズイエの調合もしている。
王都のお店は一時休業して、エミリーには助手として王宮に来てもらうことにした。
ロズイエの国民には国からハーブが支給され、外にも出歩かなくなっているため、お店を閉めても大丈夫だろう、という判断と、他のハーブが必要な人にはロジャーが直接家に届けられるよう手配してくれた。
今、お店のハーブまで手が回らないので、ありがたい。
「でもお嬢様、オスタシスはあなたを売った国なのに、良いんですか……」
エミリーが手伝いながらも不満そうに話す。
「エミリーも私に巻き込まれたものね。ごめんなさい。でも、オスタシスも私にとっては大切な国だから…」
「私は良いんです! ただ、私はお嬢様を蔑ろにしてきたオスタシスの王族やジンセン伯が許せなくて……あなたのお母様だって……」
母の代から付いていてくれたエミリーにとっては複雑なのだろう。
母がいながら、ずっと愛人として繋がっていたお義母様とお義父様。
確かに、許せないと思う部分もある。でも。
「でもね、許せないと思う以上に、救けたいと思ってしまうの」
「お嬢様………」
にこりとエミリーに笑みを向けると、彼女はまだ悔しそうにしていた。
「妹のティナ様だって、お嬢様を侮辱して、婚約者まで奪い取って、家まで追い出して……なのに、なんであんな女なんか……」
私のためにここまで怒ってくれるエミリーが愛おしくて、彼女をそっと抱きしめた。
「ありがとう、エミリー。でも、あなたのその優しい心を、私のために怒りで満たさないで」
「お嬢様……」
「それに、ジェム殿下が婚約破棄してくれたおかげで、私はオリヴァー様と出会えたのよ?」
悔しそうに顔をしかめていた彼女の表情が、ゆるゆると解けていく。
「ロズイエに来られて私、凄く幸せなんだから! オスタシスには感謝しないとね?」
片目を瞑ってエミリーに言えば、彼女から笑みが溢れた。
「ふふ、そうですね。私はお嬢様が幸せなら、それで良いのです」
「ありがとう」
エミリーの言葉に微笑むと、私たちは再び抱き合った。
お母様のように優しくて支えてくれた、温かい人。エミリーには本当に感謝している。お母様が亡くなって、ハーブにのめり込む私をずっと支えてくれていた人。
「私も幸せです」
ずっとエミリーも幸せかどうかが気掛かりだった。
エミリーが優しい表情でそう言ってくれたので、私は嬉しくて、安心して、涙ぐんでしまった。
そんな私をエミリーが優しく頭を撫でてくれていると、調合室のドアがノックされた。
「エルダー、いるか?」
「オリヴァー様?」
ドアのノックの主はオリヴァー様だった。
「少し、休憩しないか?」
入口で外に親指を向け、オリヴァー様からお誘いされるも、私はちらりと調合室を見る。
オスタシスへの調合がまだまだ足りない……。
「あんまり根を詰めると、上手くいくものもいきませんよ」
私を撫でていたエミリーがそっと私の背中を押して言った。
「ここは少し任せて、休憩してきてください」
「エミリー……」
エミリーの言葉を聞いたオリヴァー様は、私の手を引くと、「行こう!」と言って私を外に連れ出した。
連れて来られたのは、私の大好きな王宮の薔薇の中庭。
この庭のベンチで私たちは想いを確かめあった。
オリヴァー様に手を引かれ、大切な想い出が蘇る。
今日もベンチに座ってお話かな?と思っていると、案内されたのは、あのガゼボだった。
ガゼボにはすでにロジャーがいて、私たちの姿を見ると、お辞儀をした。
ガゼボのテーブルには真っ白なテーブルマット。
その上には三段に重ねられたお皿。スコーン、サンドイッチ、ケーキが色とりどりに添えられている。
オリヴァー様に手を引かれ、私は整えられたテーブルに促される。
「ここで薔薇を見ながらハーブティーを飲みたいと思っていただろ?」
「! 何でわかったんですか……?!」
私が思い描いていたことをオリヴァー様に言い当てられて、思わず彼に聞いた。
「エルダーのことならわかるさ」
彼は私の疑問にふわりと笑って答えた。
その優しい微笑みに胸が跳ねる。
オリヴァー様に椅子を引いてもらい、テーブルに着く。
オリヴァー様も向かいの席に着くと、ロジャーがカップを差し出してくれた。
「これ……」
「エルダー様の調合されたものです」
今、ロズイエの国中で私の調合した、予防ハーブが飲まれている。それは王家も同様で。
でも差し出された物はそれとは違うもので。
「王都の店で俺が買って来たものだ」
「ええ?!」
確かに私の調合したものだけど、どうしたのだろう?と疑問に思っていると、オリヴァー様がボソッと言った。
「殿下はエミリー殿に随分アドバイスを聞いて選んでいらっしゃいました」
「言うなよ!」
オリヴァー様が?
目をぱちくりとさせていると、オリヴァー様は顔を赤くしながら、バツが悪そうに言った。
「君に気分転換して欲しくて、買っていたものなんだ。まあ、君が調合したものだから、効能はお墨付きなんだが…、結局は君が作ったもので……」
ゴニョゴニョと一生懸命に説明するオリヴァー様。
私は思わず、ふふ、と笑ってしまった。
「あ、やっぱり君が作った物を出すなんておかしいよな」
焦るオリヴァー様に、私は首を振った。
「いえ、どんな顔して選ばれていたのかな、って考えたら何だか微笑ましくて」
私の言葉にオリヴァー様はむうっ、としてしまった。
「オリヴァー様、ありがとうございます! 私、嬉しいです! だって私の調合を信頼してくれてるってことですもんね?」
「君を信頼するのは当たり前だ」
オリヴァー様はまだむっとした顔のまま、当たり前のように言った。
「嬉しいです!」
オリヴァー様の言葉が嬉しくて。
満面の笑みでそう言えば、彼も口元を緩めた。
「君には敵わないな」
私たちは薔薇を眺めながら、ゆったりとハーブティーを飲んだ。
オリヴァー様のおかげで気分転換出来た私は、また意欲的に調合に取り組むことが出来た。
「ありがとうございます!」
あれから。すぐにオリヴァー様は、エルダーフラワーを手配してくれた。
それから調合室に籠って私はひたすらオスタシスのための調合をしている。
もちろん、ロズイエも安心、という訳ではないので、ロズイエの調合もしている。
王都のお店は一時休業して、エミリーには助手として王宮に来てもらうことにした。
ロズイエの国民には国からハーブが支給され、外にも出歩かなくなっているため、お店を閉めても大丈夫だろう、という判断と、他のハーブが必要な人にはロジャーが直接家に届けられるよう手配してくれた。
今、お店のハーブまで手が回らないので、ありがたい。
「でもお嬢様、オスタシスはあなたを売った国なのに、良いんですか……」
エミリーが手伝いながらも不満そうに話す。
「エミリーも私に巻き込まれたものね。ごめんなさい。でも、オスタシスも私にとっては大切な国だから…」
「私は良いんです! ただ、私はお嬢様を蔑ろにしてきたオスタシスの王族やジンセン伯が許せなくて……あなたのお母様だって……」
母の代から付いていてくれたエミリーにとっては複雑なのだろう。
母がいながら、ずっと愛人として繋がっていたお義母様とお義父様。
確かに、許せないと思う部分もある。でも。
「でもね、許せないと思う以上に、救けたいと思ってしまうの」
「お嬢様………」
にこりとエミリーに笑みを向けると、彼女はまだ悔しそうにしていた。
「妹のティナ様だって、お嬢様を侮辱して、婚約者まで奪い取って、家まで追い出して……なのに、なんであんな女なんか……」
私のためにここまで怒ってくれるエミリーが愛おしくて、彼女をそっと抱きしめた。
「ありがとう、エミリー。でも、あなたのその優しい心を、私のために怒りで満たさないで」
「お嬢様……」
「それに、ジェム殿下が婚約破棄してくれたおかげで、私はオリヴァー様と出会えたのよ?」
悔しそうに顔をしかめていた彼女の表情が、ゆるゆると解けていく。
「ロズイエに来られて私、凄く幸せなんだから! オスタシスには感謝しないとね?」
片目を瞑ってエミリーに言えば、彼女から笑みが溢れた。
「ふふ、そうですね。私はお嬢様が幸せなら、それで良いのです」
「ありがとう」
エミリーの言葉に微笑むと、私たちは再び抱き合った。
お母様のように優しくて支えてくれた、温かい人。エミリーには本当に感謝している。お母様が亡くなって、ハーブにのめり込む私をずっと支えてくれていた人。
「私も幸せです」
ずっとエミリーも幸せかどうかが気掛かりだった。
エミリーが優しい表情でそう言ってくれたので、私は嬉しくて、安心して、涙ぐんでしまった。
そんな私をエミリーが優しく頭を撫でてくれていると、調合室のドアがノックされた。
「エルダー、いるか?」
「オリヴァー様?」
ドアのノックの主はオリヴァー様だった。
「少し、休憩しないか?」
入口で外に親指を向け、オリヴァー様からお誘いされるも、私はちらりと調合室を見る。
オスタシスへの調合がまだまだ足りない……。
「あんまり根を詰めると、上手くいくものもいきませんよ」
私を撫でていたエミリーがそっと私の背中を押して言った。
「ここは少し任せて、休憩してきてください」
「エミリー……」
エミリーの言葉を聞いたオリヴァー様は、私の手を引くと、「行こう!」と言って私を外に連れ出した。
連れて来られたのは、私の大好きな王宮の薔薇の中庭。
この庭のベンチで私たちは想いを確かめあった。
オリヴァー様に手を引かれ、大切な想い出が蘇る。
今日もベンチに座ってお話かな?と思っていると、案内されたのは、あのガゼボだった。
ガゼボにはすでにロジャーがいて、私たちの姿を見ると、お辞儀をした。
ガゼボのテーブルには真っ白なテーブルマット。
その上には三段に重ねられたお皿。スコーン、サンドイッチ、ケーキが色とりどりに添えられている。
オリヴァー様に手を引かれ、私は整えられたテーブルに促される。
「ここで薔薇を見ながらハーブティーを飲みたいと思っていただろ?」
「! 何でわかったんですか……?!」
私が思い描いていたことをオリヴァー様に言い当てられて、思わず彼に聞いた。
「エルダーのことならわかるさ」
彼は私の疑問にふわりと笑って答えた。
その優しい微笑みに胸が跳ねる。
オリヴァー様に椅子を引いてもらい、テーブルに着く。
オリヴァー様も向かいの席に着くと、ロジャーがカップを差し出してくれた。
「これ……」
「エルダー様の調合されたものです」
今、ロズイエの国中で私の調合した、予防ハーブが飲まれている。それは王家も同様で。
でも差し出された物はそれとは違うもので。
「王都の店で俺が買って来たものだ」
「ええ?!」
確かに私の調合したものだけど、どうしたのだろう?と疑問に思っていると、オリヴァー様がボソッと言った。
「殿下はエミリー殿に随分アドバイスを聞いて選んでいらっしゃいました」
「言うなよ!」
オリヴァー様が?
目をぱちくりとさせていると、オリヴァー様は顔を赤くしながら、バツが悪そうに言った。
「君に気分転換して欲しくて、買っていたものなんだ。まあ、君が調合したものだから、効能はお墨付きなんだが…、結局は君が作ったもので……」
ゴニョゴニョと一生懸命に説明するオリヴァー様。
私は思わず、ふふ、と笑ってしまった。
「あ、やっぱり君が作った物を出すなんておかしいよな」
焦るオリヴァー様に、私は首を振った。
「いえ、どんな顔して選ばれていたのかな、って考えたら何だか微笑ましくて」
私の言葉にオリヴァー様はむうっ、としてしまった。
「オリヴァー様、ありがとうございます! 私、嬉しいです! だって私の調合を信頼してくれてるってことですもんね?」
「君を信頼するのは当たり前だ」
オリヴァー様はまだむっとした顔のまま、当たり前のように言った。
「嬉しいです!」
オリヴァー様の言葉が嬉しくて。
満面の笑みでそう言えば、彼も口元を緩めた。
「君には敵わないな」
私たちは薔薇を眺めながら、ゆったりとハーブティーを飲んだ。
オリヴァー様のおかげで気分転換出来た私は、また意欲的に調合に取り組むことが出来た。
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