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38.家に帰りましょう
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「ロズイエの皆様、ありがとうございました。国が落ち着いたら改めてお礼に伺います」
オスタシスの病も山を超え、ティナもいる。そしてアーヴィン殿下がすぐに王座に付くことになった。
殿下の継承の儀は簡略して行われるらしい。その儀式まで見届けていったらどうかと言われたけど、私たちも長くロズイエを空けるわけにはいかないので、ここでお暇させてもらうことにした。
「じゃあ、ティナ、元気でね。ハーブティーと一緒に手紙も送るからね」
「……待ってます」
「ティナも書いてね」
「私がいかに幸せに暮らしているか、いっぱい書いてあげる!」
顔を少し赤らめながら、ティナがいつもの調子で言うので、私は何だか嬉しいやらおかしいやらで、笑ってしまった。
「……だから、私のことは心配なんてしてないで、お姉様自身の幸せを考えてよねっ!」
「ティナ………!」
顔が赤いのは、照れていたからなのね。
私は可愛い妹を抱き締めて、最後のお別れをした。
「元気でね」
「まあ、生きていればまた会えるでしょ!」
オスタシスとロズイエ。違う国に住む私たちは、そう簡単に会えることはないだろう。
涙を滲ませていたら、ティナがそんなことを言ってくれたので、私はすぐに笑顔になった。
ティナも目の端に涙が滲んでいる。
私はそんなティナの涙を拭うと、また彼女を抱き締めた。
「ティナ、今度こそ幸せに」
「……私は幸せですよ」
『お姉様がいて』と消えるように呟いたティナの言葉に、増々涙が出てしまった。
「エルダー、そろそろ」
後ろで見守ってくれていたオリヴァー様が私の肩に手を置いて、合図をする。
ロズイエの馬車がすぐそこまで来ていた。
お義母様はすでに乗り込まれ、ロジャーが乗口の前で待機していた。
私たちはアーヴィン様にお辞儀をすると、馬車に向かった。
「ロズイエの聖女と魔女に祝福を!」
馬車に乗り込もうとしたその時、後ろからティナの声がした。
振り返ると、ティナが手を上げ、同時に王都中から歓声があがった。
「ロズイエ王国、ありがとう!」
「聖女様、魔女様、万歳!」
城を囲む声が、こちらまでこだまして聞こえた。
「こんな、いつの間に……」
オスタシスの城内の人たちも皆出てきて、私たち
を温かく送り出してくれた。
馬車に乗り込んだ私たちは、その歓声に送られ、オスタシス城を後にした。
『魔女』と蔑まれ、この国からはいらないとされて追い出されたあの時とは違う。
温かい歓声に、私は涙が止まらなかった。
そんな私を優しくオリヴァー様が寄り添ってくれていた。
「ロズイエとオスタシスはまたハーブの貿易を再開することになるわ。あなたたちの学校が軌道に乗るまではまだ時間がかかるからね」
馬車の中、お義母様が教えてくれた。
「妹さんの専用ハーブは、エルダーちゃんしか作れないから、ロズイエを通して買い取ってもらうけどね?」
ウインクをして見せたお義母様。私は妹に直接送る気でいたので、ちゃっかりというか、ちゃんとしているというか……。流石王妃様だと思った。
そうして私たちは途中宿を取りながら、ロズイエの国境まで辿り着いた。
国境の入口では一台の馬車が待っていた。
「さ、あなたたちはここで降りてね」
お義母様の言葉に首を傾げると、オリヴァー様から手を取られる。
どういうことだろう?どこか視察でも行かれるのだろうか?
疑問に思いながらオリヴァー様を見ると、彼は優しく微笑んで言った。
「約束、果たせるな」
「約束??」
「あなたたち、新婚旅行もまだでしょ? 良い機会だから、休んでらっしゃい!」
オリヴァー様の言葉にまだ首を傾げていると、お義母様がウインクして言った。
「そういうことだ」
驚く私は手を引かれて、オリヴァー様と馬車を降りる。
馬車の後ろには積荷用の馬車も続いていて、着替えやらが準備万端だ。
「いつの間に……」
「ロズに手配を頼んでおいて正解だったな」
「ありがとうございます」
驚く私を横目に、オリヴァー様とロジャーが会話を進める。
「護衛もロズもいるから二人っきりというわけにはいかないが……」
「当たり前です」
オリヴァー様の言葉に、ロジャーの容赦ない言葉が飛ぶ。
「マーク領の薔薇ももちろん見に行く。約束しただろ?」
「あ……」
それは『サンブカ』とした約束。
覚えてくれていたんだ。
「一緒に行ってくれるか?」
そう言うと、オリヴァー様は私のドレスの胸にブローチを刺した。
薔薇を象ったブローチ。オリヴァー様からサンブカへのプレゼント。
確か、ロジャーに預けていたはず?
ロジャーの方に目線をやれば、彼は優しく微笑んでいた。
「エルダー、君に見せたい場所がいっぱいある。一緒に見て回ろう。俺たちの新婚旅行だ」
ブローチを付け終わったオリヴァー様は、私の手を取ると、甘く、優しい笑顔で言った。
「はい! 約束、守ってくださってありがとうございます!」
私もオリヴァー様に答えるように、満面の笑みを向けた。
オスタシスの病も山を超え、ティナもいる。そしてアーヴィン殿下がすぐに王座に付くことになった。
殿下の継承の儀は簡略して行われるらしい。その儀式まで見届けていったらどうかと言われたけど、私たちも長くロズイエを空けるわけにはいかないので、ここでお暇させてもらうことにした。
「じゃあ、ティナ、元気でね。ハーブティーと一緒に手紙も送るからね」
「……待ってます」
「ティナも書いてね」
「私がいかに幸せに暮らしているか、いっぱい書いてあげる!」
顔を少し赤らめながら、ティナがいつもの調子で言うので、私は何だか嬉しいやらおかしいやらで、笑ってしまった。
「……だから、私のことは心配なんてしてないで、お姉様自身の幸せを考えてよねっ!」
「ティナ………!」
顔が赤いのは、照れていたからなのね。
私は可愛い妹を抱き締めて、最後のお別れをした。
「元気でね」
「まあ、生きていればまた会えるでしょ!」
オスタシスとロズイエ。違う国に住む私たちは、そう簡単に会えることはないだろう。
涙を滲ませていたら、ティナがそんなことを言ってくれたので、私はすぐに笑顔になった。
ティナも目の端に涙が滲んでいる。
私はそんなティナの涙を拭うと、また彼女を抱き締めた。
「ティナ、今度こそ幸せに」
「……私は幸せですよ」
『お姉様がいて』と消えるように呟いたティナの言葉に、増々涙が出てしまった。
「エルダー、そろそろ」
後ろで見守ってくれていたオリヴァー様が私の肩に手を置いて、合図をする。
ロズイエの馬車がすぐそこまで来ていた。
お義母様はすでに乗り込まれ、ロジャーが乗口の前で待機していた。
私たちはアーヴィン様にお辞儀をすると、馬車に向かった。
「ロズイエの聖女と魔女に祝福を!」
馬車に乗り込もうとしたその時、後ろからティナの声がした。
振り返ると、ティナが手を上げ、同時に王都中から歓声があがった。
「ロズイエ王国、ありがとう!」
「聖女様、魔女様、万歳!」
城を囲む声が、こちらまでこだまして聞こえた。
「こんな、いつの間に……」
オスタシスの城内の人たちも皆出てきて、私たち
を温かく送り出してくれた。
馬車に乗り込んだ私たちは、その歓声に送られ、オスタシス城を後にした。
『魔女』と蔑まれ、この国からはいらないとされて追い出されたあの時とは違う。
温かい歓声に、私は涙が止まらなかった。
そんな私を優しくオリヴァー様が寄り添ってくれていた。
「ロズイエとオスタシスはまたハーブの貿易を再開することになるわ。あなたたちの学校が軌道に乗るまではまだ時間がかかるからね」
馬車の中、お義母様が教えてくれた。
「妹さんの専用ハーブは、エルダーちゃんしか作れないから、ロズイエを通して買い取ってもらうけどね?」
ウインクをして見せたお義母様。私は妹に直接送る気でいたので、ちゃっかりというか、ちゃんとしているというか……。流石王妃様だと思った。
そうして私たちは途中宿を取りながら、ロズイエの国境まで辿り着いた。
国境の入口では一台の馬車が待っていた。
「さ、あなたたちはここで降りてね」
お義母様の言葉に首を傾げると、オリヴァー様から手を取られる。
どういうことだろう?どこか視察でも行かれるのだろうか?
疑問に思いながらオリヴァー様を見ると、彼は優しく微笑んで言った。
「約束、果たせるな」
「約束??」
「あなたたち、新婚旅行もまだでしょ? 良い機会だから、休んでらっしゃい!」
オリヴァー様の言葉にまだ首を傾げていると、お義母様がウインクして言った。
「そういうことだ」
驚く私は手を引かれて、オリヴァー様と馬車を降りる。
馬車の後ろには積荷用の馬車も続いていて、着替えやらが準備万端だ。
「いつの間に……」
「ロズに手配を頼んでおいて正解だったな」
「ありがとうございます」
驚く私を横目に、オリヴァー様とロジャーが会話を進める。
「護衛もロズもいるから二人っきりというわけにはいかないが……」
「当たり前です」
オリヴァー様の言葉に、ロジャーの容赦ない言葉が飛ぶ。
「マーク領の薔薇ももちろん見に行く。約束しただろ?」
「あ……」
それは『サンブカ』とした約束。
覚えてくれていたんだ。
「一緒に行ってくれるか?」
そう言うと、オリヴァー様は私のドレスの胸にブローチを刺した。
薔薇を象ったブローチ。オリヴァー様からサンブカへのプレゼント。
確か、ロジャーに預けていたはず?
ロジャーの方に目線をやれば、彼は優しく微笑んでいた。
「エルダー、君に見せたい場所がいっぱいある。一緒に見て回ろう。俺たちの新婚旅行だ」
ブローチを付け終わったオリヴァー様は、私の手を取ると、甘く、優しい笑顔で言った。
「はい! 約束、守ってくださってありがとうございます!」
私もオリヴァー様に答えるように、満面の笑みを向けた。
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