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3巻
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しおりを挟む第5章 勇者の称号とは 勇者は不幸の塊!?
第47話 自分の修行は終わった!! 次は……
最強スライム、グランの異世界空間での修行を終えて、僕は自宅に戻ってきた。
グランは僕が『召喚魔法』を使った時に現れた「災厄」と呼ばれるグラトニースライムで、僕よりも強い。テイムしたというよりも、グランが僕に従ってくれている、という表現の方が合うかもしれない。
「スイム! クイン! 久しぶりだね」
スイムは僕が初めてテイムしたスライムだ。今では『人化』も覚えて、普段はメイドとして家を管理してくれている。
クインはスイムより少し幼いスライムで、僕がA級ダンジョンを攻略した時に最下層にいたボスだった。倒すと仲間になりたそうな目でこちらを見ていたので、テイムした。スイムと同じように『人化』して、一緒にこの家を管理してくれている。
「久しぶり? マスター、昨日も会ったですよ~」
「クインも、マスターとは毎日一緒にいますよ」
「ちょっと別空間で一年間修行してきたんだよ。だからスイムとクインに会うのも、僕からしたら一年ぶりなんだ」
「「?」」
まあわからないよね。僕ですらよくわかってないんだから……。それにしてもあの空間はやばいな。スイムとクインの反応からすると、本当にこっちでは一日しか経ってないみたいだ。前世で読んだ小説では、何度も使うと出られなくなるっていうのが仕様だったけど……
「グラン! あの空間って何度でも使えるの?」
「もちろんじゃ。我の魔力で作っておるからの。また修行したくなったら、いつでも言ってくれていいぞ」
「いや……それは遠慮しておくよ」
あとは下界で大丈夫です……
「それにしてもマスターは強くなったものじゃ。ステータスは確認したのか?」
「そういやまだ見てなかったよ。今から見てみるね」
僕は自分のステータスを確認した。
【名 前】 クリフ・ボールド
【年 齢】 14歳
【種 族】 人族ではないかもしれません【NEW!】
【身 分】 辺境伯家次男
【性 別】 男
【属 性】 全属性
【加 護】 創生神の加護・魔法神の加護・剣神の加護・武神の加護
戦神の加護・愛情神の加護・スライム神の加護
【称 号】 (転生者)・神童・大魔導士・Sランク冒険者
大賢者の再来・Aランクダンジョン攻略者・学校首席
王国の守護者・ドラゴンスレイヤー・スライム愛好家
セリーヌの婚約者・女たらし・ハーレム野郎
真の勇者!?・人類最強!?・グランの弟子
【レベル】 300 → 800
【H P】 350000 → 900000
【M P】 900000 → 2000000
【体 力】 99999 → 400000
【筋 力】 99999 → 350000
【敏 捷】 99999 → 300000
【知 力】 99999 → 300000
【魔 力】 299999 → 1000000
【スキル】 鑑定・アイテムボックス・全魔法適性・隠蔽・全武器適性
無詠唱・身体強化・気配察知・消費MP軽減・戦闘補正S
状態異常無効・転移魔法・創造魔法・限界突破Ⅱ【NEW!】
全魔法LV10・全武器LV10・精神耐性LV10【NEW!】
「おー!! レベルが800になってるよ。それに無事限界を突破してるよ! やったぁ」
「そうじゃろ。マスターの努力の結果じゃ」
「良かった~。ステータスも軒並み上がってるから、これで三大国交流戦も勇者との戦闘もだいじょ……!? ねえグラン! 種族のところがおかしなことになってるんだけど?」
「どれどれ……ほぉー。マスターも人族を卒業したようじゃな」
「卒業!? って『人族ではないかもしれません』って書かれてるんだけど……」
「そりゃあマスターよ、人族でそのステータスはあり得んじゃろ」
「そんな……」
人じゃないって、僕はなんなの? 異世界テンプレなら半神とか新人類とか? でもまだ完全に『人族ではない』とは書かれてないから、大丈夫なのかな……不安だ……
「まあ安心するのじゃ。別に種族なんぞ生きていく上で重要ではないしのぉ」
他におかしいところはないか……『限界突破』はⅡにレベルアップしてるし、『精神耐性』は多分スライムにボコボコにされたから取得したんだろう。他におかしなところはないな。
人族じゃなくなりかけていることに不安を覚えつつも、ひとまず目標は達成したので、僕は次の行動に出ることにした。
「僕自身のレベルアップは無事できたから、あとはクラスのみんなのレベルも上げようと思うんだ。グラン、スイム、クイン。力を貸してくれるかな?」
「もちろんじゃ」
「マスターのお手伝いするですー」
「クインも手伝います」
「ありがとう」
「で、マスターよ。クラスメイトのレベルアップとは何をするのじゃ。同じように我の空間でレベルを上げるのか?」
「いや、それは遠慮しておくよ。クラスのみんなには『限界突破』云々は必要ないからね。とりあえず二十人いるから、五人ずつ四グループに分けようかと思ってるんだ。で、僕、グラン、スイム、クインがそれぞれ付き添って、ダンジョンを攻略しながらレベル上げしようかと思ってるよ」
「ほ~、ダンジョンか。久しぶりじゃな」
「スイムもがんばるです」
「クインも」
「王都周辺のAランクからCランクのダンジョンに分かれて、一週間ぐらいかな。まだ先生に許可は取ってないけど、合宿みたいな感じで泊まり込みで行けたらいいなって思ってるんだ」
「我とマスターがいるチームはAランクダンジョンでも大丈夫じゃな。スイムとクインにはAランクダンジョンはちょっと危険ではないか?」
「そうだね。だからスイムとクインには、BランクかCランクのダンジョンに同行してもらおうと思ってるよ。Sクラスって、『武』が得意な生徒と『文』が得意な生徒がちょうど十人ずついるからね」
「なるほど。腕に覚えがある生徒はAランクダンジョンでがっつりレベルを上げて、そうでない生徒は身を守るぐらいの力を身につける感じじゃな」
「その通り!!」
「よし。我はマスターに協力するぞ。おもしろくなりそうじゃな」
こうして僕は三大国交流戦に向けてSクラスのみんなとダンジョン合宿を行うため、計画を立てることにしたのだった。
☆
僕は早速、担任のフローラ先生にホームルームで合宿の許可を取ることにした。
「先生、三大国交流戦に向けてSクラスの全員で合宿を行いたいんですが、いいですか?」
「合宿ですか?」
「はい。全員でダンジョンに行って、それぞれのレベルを上げてもらおうと思ってます」
「ダンジョン……ですか?」
「はい。戦力アップのためにはレベルを上げるのが近道だと思います。それでダンジョンなら魔物も溢れているから、みんなでダンジョン攻略をしてレベルを上げようと考えてます」
「そうですか……え~と……それは危険ではないのですか?」
「僕と従魔のグラン、スイム、クインが同行しますし、安全には十分配慮するつもりです」
「わかりました。私だけでは決められないので、学校長に相談してみます」
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
☆
僕がフローラ先生にダンジョン合宿のことを提案して三日後……
「クリフくん。前に言っていたダンジョン合宿の件ですが、学校長の許可が下りましたよ」
「本当ですか!?」
「はい。でも安全には十分配慮してくださいね。それと実力以上のダンジョンには行かないこと! いいですね」
「わかりました。ありがとうございます」
合宿の許可を得た僕は、早速クラスのみんなに合宿のことを伝えた。
「みんな、聞いてくれるかな。三大国交流戦で優勝するために、個人個人の戦力アップを考えてるんだ。フローラ先生には許可を取ったから、一週間ぐらいダンジョン合宿をしたいんだけど、どうかな?」
「「「「ダンジョン合宿!?」」」」
僕の言葉に、クラスのみんなは驚きの声を上げた。
「うん。ダンジョンなら魔物がたくさんいるから、レベルを上げるのに手っ取り早いかな……って……え~っと、ダメかな?」
すると、王女で僕の婚約者でもあるセリーヌが口を開く。
「クリフ様! 戦力アップのためにレベルを上げるのはいいことだと思いますが、ダンジョンは危険ではないですか?」
「大丈夫だよ。一応、僕か従魔のグラン、スイム、クインが同行するからね。そこまで危険じゃないと思ってるよ」
「グランさんも同行するのか!?」
クラスメイトのマッシュが、グランの名前に反応する……
「俺はダンジョンでレベルを上げるのに賛成だ!」
「クリフ様が同行して危険がないのであれば……」
「その点はフローラ先生からも念を押されてるからね。安全に配慮することと、実力以上のダンジョンには行かないようにと言われてるよ」
「わかりました。なら私も賛成です」
セリーヌとマッシュが賛成したので、他のメンバーも同意してくれた。
「とりあえず実力以上のダンジョンに行くことは禁止されているから、それぞれのレベルを教えてくれるかな」
「私はレベル10です」
「えっ!?」
「私もレベル10です」
「俺はレベル15だな」
「僕はレベル20だよ」
「私はレベル18です」
「私はレベル10です」
「俺はレベル30だ」
「俺はレベル23だな」
えっ……みんな、レベル低くない? セリーヌとか『文』の人たちがだいたいレベル10で、マッシュでようやくレベル30……
「クリフのレベルはどれぐらいあるんだ?」
「え~と……内緒で」
この雰囲気で「レベル800です」とはさすがに言えないよ……
「クリフ、メンバー分けはどうする? 俺はDランクのダンジョンなら問題ないと思うから、できればCランクダンジョンに挑戦してみたいな」
「みんなはダンジョンには行ったことあるの?」
「Sクラスのメンバーなら、何度かは行ったことあるはずだぜ。クリフの言うようにダンジョンの方がレベル上げには向いてるからな」
「セリーヌもダンジョンに行ったことあるの?」
「はい。Eランクダンジョンですが、騎士の方と一緒に何度か行ったことがあります」
なるほど。貴族は騎士とか護衛と一緒にダンジョンに行って、レベルを上げるわけか。でも積極的にレベル上げをしているわけじゃないから、そこまで高くないってことか……やばい……みんなの常識と僕の常識が違いすぎる……。まあでも実際はそんなものなのか。レベルが低いってことはそれだけ伸びしろが大きいってことだし、前向きに捉えよう。
「え~っと、じゃあDランクとCランクのダンジョンに分かれて一週間合宿しようか。僕とグラン、スイム、クインは『アイテムボックス』を持ってるから食事も泊まる所も用意できるし、危険はないと思うから」
「「「「了解」」」」
ダンジョン合宿は『武』のメンバーがCランクダンジョンに、『文』のメンバーがDランクダンジョンに行くことになった。何かあった時に『転移』が使えるようにということで、僕とスイムがDランクダンジョンに、グランとクインがCランクダンジョンにそれぞれ同行することになった。
ダンジョンを本格的に攻略したことがないメンバーばかりで、しかも貴族が多くいるので僕はグラン、スイム、クインと同行に関して綿密に打ち合わせをした。
なるべく危険がないように、戦闘時は僕たちが魔物を抑えて、みんなに遠くから魔法を使って魔物を倒してもらったり、二体以上魔物が現れた時は間引いたり、夜の食事は飽きないように色んな種類のあったかい食事を『アイテムボックス』に用意したり、寝る時に不満が出ないように大きなコテージを準備したりして、快適に過ごせるように。さらにお風呂の準備も……
これってダンジョン攻略っていうより、パワーレベリングに近いな……でもレベルが上がれば戦力も上がるし、ここはパワレベでいいか。なんかあったら大変だもんな。うんうん。快適さ重視で行くことにしよう。
こうして準備が整い、Sクラスのダンジョン合宿が始まったのだった。
☆
僕は『文』のメンバーとともに、王都近くのDランクダンジョンに向かった。
参加メンバーはセリーヌ、ユウリ(伯爵家次女、セリーヌの親友)、アリス(平民、生徒会書記)、シェリー(子爵家次女)、ジャンヌ(公爵家次女)、ソフィア(侯爵家次女)、リーネ(男爵家長女)、ポロン(平民、ミラクル商会会長の息子)、ロイド(平民、魔道具研究会部長)、バネッサ(平民、図書委員長)の十人だ。
ポロンとロイド以外は女性である。周りから見れば、見事に「ハーレム野郎参上!!」と妬みを受けること間違いなしのメンバー構成だった。
「とりあえず二チームに分かれて探索していこうか。Dランクダンジョンは三十階層あるから、一週間で攻略すると考えると、一日五階層を目標に進んでいこうと思う。片方は僕が同行して、もう片方はスイムに同行してもらう」
「はいは~い。スイムに任せてください」
「それじゃ、どうやって二チームに分けようか?」
「はい! 私はクリフ様と一緒がいいです」
「あっ!! それなら私もクリフ様と一緒がいいです」
「「「「私も!!」」」」
「いやいや……え~っと……。そうだ! ポロン! チーム分けはどうしようか?」
「僕!? そうだね、セリーヌさんやジャンヌさん、ソフィアさんはクリフくんと一緒でいいと思うよ。ていうかあまりレベルも変わらないし、どの組み合わせでもあまり変わらないと思うよ」
そうなんだよな~。貴族令嬢たちは見事にレベル10だし……多分レベル10まで上げることが貴族間の暗黙の了解で決まってるんだろうな……
「そうだね。じゃあポロンとロイドとバネッサとアリスとシェリーでチームを組もうか。アリス! そっちのチームのリーダーを任せていい?」
「OK。だいたい平民と貴族で分ける感じだね。まあその方がわかりやすいかもね。シェリーは私と仲がいいからこっちのチームに入ったのかな?」
「まあそんなところだね。アリスの方にはスイムを同行させるから。スイム! 頼んだよ」
「はいは~い」
「じゃあこっちはセリーヌ、ユウリ、ジャンヌ、ソフィア、リーネでチームを組もうか。僕が同行するから、僕がリーダーでいいよね」
「「「「「はい」」」」」
チーム分けが決まったので、ダンジョンに入ることにした。
「スイム! 何かあったら念話で知らせてね。一応僕も『気配察知』でどこにいるかはわかるから。とりあえず今日は、五階層を目指そう。合流できそうだったら、夜は合流して一緒に休もうか」
「は~い」
そして僕たちはダンジョンの攻略を開始した。
セリーヌたちに無理はさせられない。とりあえずMPポーションは大量に持ってきてるから、順番に魔法を使って魔物を倒していくのが簡単かな。僕が前で索敵して、魔物を見つけたらヘイト管理する感じだな。多分グランやスイム、クインも同じ方法で行くと思うし。
「クリフくん。隊列はどうするの?」
「そうだね。とりあえずみんなは戦闘にまだ慣れてないだろうから、僕が前衛で魔物を見つけるよ。見つけたら順番に魔法を使って魔物を倒してくれるかな?」
「そんなんでいいの?」
「無理はさせられないからね。MPポーションはいっぱい持ってきてるから、ひたすら魔物を倒して、まずはレベルを上げていこう。セリーヌとユウリは交流戦の競技で戦う可能性もあるから、慣れてきたら接近戦も練習してみようか?」
「そうですね。クリフ様がいてくれるなら安心なのでやれそうです」
「セリーヌ様に危ないことは……でも練習しておかないと交流戦で恥をかく可能性も……」
「クリフ様。私たちは魔法で魔物を倒すだけでいいのかしら?」
「そうだね。ジャンヌとソフィアとリーネは、今回は後ろから魔法で魔物を倒すだけで大丈夫だよ。まあこれだと、ジャンヌたちが護衛とか騎士と一緒にレベル上げしてたのと変わらないかもしれないけど」
「そんなことありませんわ。クリフ様と一緒にダンジョンに行けるのですもの。それに夜も一緒ですし……」
「えっ!?」
「なんでもありませんわ」
「ソフィア! これはチャンスですわよ。今日から七日間はクリフ様とずっと一緒ですわ」
「なるほど。ジャンヌ、わかったわ。一緒にがんばりましょう」
いやいや、聞こえてるんですけど……まあなるようになるか。
そんなことを気にしながら、魔物を見つけながら一階層を進んでいった。
☆
一方その頃『武』の生徒たちは……
「グランさん。二チームに分けるんですよね。チーム分けはどうするんですか?」
「ん? そうじゃな。あまりレベルも変わらんみたいだし、好きに分けていいぞ」
「了解です。じゃあ俺のチームと、そうだな……ルイン! もう片方のチームのリーダーをしてくれるか?」
「俺か? 構わないぞ」
「OK。じゃあバランスを考えて振り分けていこうか」
マッシュと男爵家長男で彼の親友でもあるルインは、Cランクダンジョンを攻略するメンバーを振り分けていった。
マッシュチームはマッシュ、ソロン(子爵家次男、魔法研究会部長)、マロン(男爵家長男、マッシュの親友)、ドラン(平民、『土魔法』使いでゴーレム使い)の四人でグランが同行し、ルインチームは、ルイン、フレイ(侯爵家長女、クリフの弟子)、マーク(子爵家長男、セリーヌの護衛)、フィル(エルフ、風紀委員長)、タフマン(男爵家長男、クリフの弟子)の五人でクインが同行することになった。
「Cランクダンジョンは四十階層らしいから、一日六階層ほど進んでいけばこの合宿中に攻略できるな」
「マッシュの言う通りじゃ。じゃが攻略できるかはわからんぞ。マスターから無理はするなと言われておるからな。とりあえず魔物と戦ってみて判断する。ただ、我とクインがいればCランクダンジョンぐらいは危険もないだろうから安心していいぞ」
「よし! 行こうぜ」
マッシュとルインは『武』のメンバーを引き連れてCランクダンジョンの攻略を開始したのだった。
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