タヌキ食堂へようこそ

んが

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おいしいって素敵だね

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「おいしいって素敵」
 カスガの奥さんはそういって白い歯を見せて笑いました。
「カスガのお土産はいつもすてき。おばちゃんの作ったブルーベリーパイやどんぐりクッキーもおいしいし。昨日のかごの中にはカボチャのプリンも入っていたの。それで、奥さんもお店にどうぞってメッセージカードも入っていたの。ねえ、私も行っていい?」
 カスガは久しぶりにマミのうきうきした声を聞いた気がしました。
「もちろんだよ。しっかり熱を測ってから行って、帰ってからもよく手を消毒してすぐにお風呂に入れば大丈夫だよ。僕もマミと一緒に行きたいと思っていたんだ」
 二人はそっとお互いの背中に手をまわしました。
「それにおばちゃんが話していたんだけど、森の中は安全らしいんだ。森の中まで感染症はやってこないみたいだよ」
 カスガが奥さんの頭をなでながら言いました。
「そうなの? マイナスイオンが飛び交っているから? それともみんなおばちゃんたちの料理を食べてるから?」
「わからないけど、みんな動物だからかも?」
 カスガが考え込んだ後言うと、奥さんは急に唇をキュッと結びました。
「私たちも動物だけど……私が行って感染主になったらやだな」
 奥さんがまたテンション低くなってきたので、カスガは慌てました。
「感染主なんて……僕は何回か行っているけど、タヌキさんもトガリネズミさんも元気だよ。それに森の中に感染症はないって言っても、ちゃんとお店の中に消毒薬は置いてくれているし、行ってみようよ。森の中では人とすれ違うことはほぼないし、マスクを外しても平気だよ」
 カスガは安心させようと言いましたが、行かないモードに入ってしまった奥さんに言葉は届きませんでした。
「ごめん。カスガ。やっぱりおなかの赤ちゃんに何かあったら取り返しのつかないことになっちゃう。私が行ったことが原因で森に感染症が広まったりしたら、私たちここにも暮らせなくなってしまう。おなかの赤ちゃんも含めて私たちが犯人扱いされちゃうかもしれないのよ」
 奥さんはだんだん興奮してきて、手に持っていたパイをそっとお皿に戻しました。
「そうか。残念だな。でも、気が進まないまま遊びに行っても楽しくないものね。また気が向いたとき一緒に行こう。だけど、お医者さんもお散歩は大丈夫だと言っていたんだけど……」
 カスガは、静かに微笑みました。
 モンキチョウがひらひらと窓の隙間から入ってきて、そっとテーブルの隅にとまりました。
 カスガはテーブルに置かれてマミの小さな手をそっと握りました。


 
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