きっと私は悪役令嬢

麻生空

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「あれ?」

目を開けると、何故か私はルドルフ様に膝枕をされていた。

「何で?」

辺りを見渡すと、そこは何処かの湖の側。

「えっと……ルドルフ様?」

ぼやけた頭でそう問い掛ける。
すると、とても良い笑顔のルドルフ様は
「ルディだよ。エド」
と訂正して来た。

エド
……
エドワード
お兄様の名前?

エド?

はっとしてルドルフ様を見ると

「そろそろお昼にしようか。丁度良い時間だから」

私が呆けている間に手際よく昼食の準備をするルドルフ様。

流石攻略対象、そつがない。

リュックの中からシートを取り出し、その上に並べられたサンドイッチとマフィン。

その脇では携帯用のコンロでお湯を沸かしている。

「1分位で沸くから少し待っていて下さい」

どうやら魔力を流して沸かすタイプのコンロのようで、ルドルフ様は火の調節をしている様子。

「珍しいですね。魔石を使用しないタイプなんて」

思わずと言う風に言うと

「魔石を入れるタイプの物だと、使用しない時に魔石を取り忘れてしまう事もあるので、滅多に使わない物はこのように直接魔力を流す物にしているのですよ」

魔石とはいわば電池のような物だ。

たまに使わない魔石が爆発してしまう事もある。

滅多にはないけど、ゼロではない。

「ほら、沸いた。カップにお湯を入れるね」

ルドルフ様はそう言うと、既に粉の入ったカップにお湯を注ぐ。

ほんのりと美味しそうな香りが漂って来る。

「携帯用のスープですか」
本当に用意が良い。

「夜営や遠出の時に便利なんですよ。どうぞ、温かい内に。それと、サンドイッチも」

そう言ってルドルフ様がサンドイッチを一つ紙に包んで私に渡してくれる。

「ありがとうございます」

受け取りながらお礼を言うとルドルフ様は顔を赤らめて自身もサンドイッチを取った。

サンドイッチはレタスとお肉を挟んだ物で、パンの方にも味付きのソースが塗られている。

パクンと一口食べると

「美味しい」
ソースが絶妙な味なのだ。

「良かった」
どこかホッとするルドルフ様。
「実は、家のシェフに無理を言ってやらせてもらったから、ちょっと不安だったんだ。なにせ、料理は初めてだったので」
照れたように言うルドルフ様。

マジで手作り?
何処の女子だよ。
今世の令嬢なんて、シェフに作らせて何もしないのに。
ルドルフ様どんだけ女子?
いや、そこじゃないよ。
なんで義理の兄になるエドワードに手料理を振る舞う?
そこだよ。

でも、聞いたらイカン予感しかしない。
ほら、良く言うでしょう?
君子危うきに近寄らずって。
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