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夜会会場へ再入場すると、何故かお祝いムードになっていた。
招待客は会場の前の方に集まりお祝いの言葉口々に述べている。
が、生憎あまりにもの人の数少なくにその中心にいる人物は見えない。
「今日は何かのお祝いなのかな?」
そう言って隣を歩くミランダさんに問い掛ける。
「ええっと、確か王族の方のお誕生日だったかと……エリス様、申し訳ございません。わたくし、娘達のように情勢に強くはなくって……」
困ったように眉根を下げるミランダさん。
流石は美女なだけありその困った顔も美しい。
きっと、遠くから見たらその辺の男は一目で恋に墜ちるのだろう。
丁度祝いを述べて終わっただろう貴族達がダンスホールの方へと移動している。
多分、第二部のダンスが始まるのだろう。
「ミランダさん、私達も一曲踊りませんか?」
どうせエドとしては王族に挨拶に伺う理由もないし、後でカナリア様にだけご挨拶すれば良いだろう。
そう思い、折角だからとミランダさんを誘う。
一応この日の為に密かに男性のパートも覚えて来たんだし、そのお披露目にも良いかも。
「身長差もあるから上手くリード出来なかったらご免なさい。先に謝っておくね」
そう言って微笑めばミランダさんは目を潤ませて
「エリス様……わたくし果報者ですわ」
と呟く。
泣きそうな顔になるミランダさんにそっと手を差し出しクイッと私の方へと誘う。
そして、顔を近付けて囁くように言った。
「エリスじゃなく『エド』ですよ」
すると、回りにいた婦人方の黄色い悲鳴が響く。
何故に?
単にミランダさんに忠告しただけなのに……。
「エド様……」
ミランダさんが何かを言おうとした時、音楽が流れ出し、私はミランダさんをエスコートしながらホールの中央へと移動した。
エスコートの仕方は先程のアレンデル殿下を参考にさせて貰った。
何せミランダさんは私より背が高いのだから。
ゆっくりと場所を確保すると恭しくミランダさんへお辞儀する。
「ミランダさん。どうぞ私の手を」
そう言って差し出した手にミランダさんはそっと自身の手を乗せる。
そして、曲に合わせるように私はミランダさんの腰に手を伸ばし引き寄せた。
「嬉しいです、エド様。わたくし女になってからこのように夜会で意中の殿方と踊るのを楽しみにしていましたの」
まるで告白するかのように話し出すミランダさん。
「そんな大袈裟な、夜会へ来ればこうやって誰とでも踊れるんですよ。私で良いなら何時でもお相手しますから」
クルクルと遠ざかって近付いてそして寄り添うようにステップを踏む。
「やはり、エド様は他の方とは違いますわ。大抵の殿方はわたくしの声を聞いただけで去って行きますわよ」
確かに、声は女性にしては低すぎる。
ハスキーボイスって言ってもこれでは男とバレてしまう。
黙っていれば美女なだけに勿体ない。
そう言えば声を高くする物質があったよなぁ、あれは確かヘリウムガス。
でも、容量を間違うと死んでしまう事もあって色々論議された事もあったよな。
折角の魔法の世界なんだから何かないかな……そうだ、風の魔法って空気に影響させられるから。
「ミランダさん。今夜は私が貴方に素敵な魔法を掛けてあげましょう」
躍りながらそう囁くように言えばミランダさんは不思議そうな顔になる。
「風よ……」
私は私の具象させたい事をイメージしながら魔力を紡ぎ出した。
誰にも気付かれる事がなく試行された魔法。
王宮の警備にあたっていた魔術師さえ気付かないほどゆっくりと、でもスムーズに発動させられた魔法。
「ミランダさんに今夜は女としての楽しみを堪能させてあげますね」
そう言って微笑んでやる。
招待客は会場の前の方に集まりお祝いの言葉口々に述べている。
が、生憎あまりにもの人の数少なくにその中心にいる人物は見えない。
「今日は何かのお祝いなのかな?」
そう言って隣を歩くミランダさんに問い掛ける。
「ええっと、確か王族の方のお誕生日だったかと……エリス様、申し訳ございません。わたくし、娘達のように情勢に強くはなくって……」
困ったように眉根を下げるミランダさん。
流石は美女なだけありその困った顔も美しい。
きっと、遠くから見たらその辺の男は一目で恋に墜ちるのだろう。
丁度祝いを述べて終わっただろう貴族達がダンスホールの方へと移動している。
多分、第二部のダンスが始まるのだろう。
「ミランダさん、私達も一曲踊りませんか?」
どうせエドとしては王族に挨拶に伺う理由もないし、後でカナリア様にだけご挨拶すれば良いだろう。
そう思い、折角だからとミランダさんを誘う。
一応この日の為に密かに男性のパートも覚えて来たんだし、そのお披露目にも良いかも。
「身長差もあるから上手くリード出来なかったらご免なさい。先に謝っておくね」
そう言って微笑めばミランダさんは目を潤ませて
「エリス様……わたくし果報者ですわ」
と呟く。
泣きそうな顔になるミランダさんにそっと手を差し出しクイッと私の方へと誘う。
そして、顔を近付けて囁くように言った。
「エリスじゃなく『エド』ですよ」
すると、回りにいた婦人方の黄色い悲鳴が響く。
何故に?
単にミランダさんに忠告しただけなのに……。
「エド様……」
ミランダさんが何かを言おうとした時、音楽が流れ出し、私はミランダさんをエスコートしながらホールの中央へと移動した。
エスコートの仕方は先程のアレンデル殿下を参考にさせて貰った。
何せミランダさんは私より背が高いのだから。
ゆっくりと場所を確保すると恭しくミランダさんへお辞儀する。
「ミランダさん。どうぞ私の手を」
そう言って差し出した手にミランダさんはそっと自身の手を乗せる。
そして、曲に合わせるように私はミランダさんの腰に手を伸ばし引き寄せた。
「嬉しいです、エド様。わたくし女になってからこのように夜会で意中の殿方と踊るのを楽しみにしていましたの」
まるで告白するかのように話し出すミランダさん。
「そんな大袈裟な、夜会へ来ればこうやって誰とでも踊れるんですよ。私で良いなら何時でもお相手しますから」
クルクルと遠ざかって近付いてそして寄り添うようにステップを踏む。
「やはり、エド様は他の方とは違いますわ。大抵の殿方はわたくしの声を聞いただけで去って行きますわよ」
確かに、声は女性にしては低すぎる。
ハスキーボイスって言ってもこれでは男とバレてしまう。
黙っていれば美女なだけに勿体ない。
そう言えば声を高くする物質があったよなぁ、あれは確かヘリウムガス。
でも、容量を間違うと死んでしまう事もあって色々論議された事もあったよな。
折角の魔法の世界なんだから何かないかな……そうだ、風の魔法って空気に影響させられるから。
「ミランダさん。今夜は私が貴方に素敵な魔法を掛けてあげましょう」
躍りながらそう囁くように言えばミランダさんは不思議そうな顔になる。
「風よ……」
私は私の具象させたい事をイメージしながら魔力を紡ぎ出した。
誰にも気付かれる事がなく試行された魔法。
王宮の警備にあたっていた魔術師さえ気付かないほどゆっくりと、でもスムーズに発動させられた魔法。
「ミランダさんに今夜は女としての楽しみを堪能させてあげますね」
そう言って微笑んでやる。
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