シンデレラ公子

麻生空

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プロローグ

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その日、たまたま思い出した。

結婚して初夜を迎えた今、この時に。


旦那様になる方を見た時に最初は誰かに似ているな……と、漠然に思っていた。
美しいかんばせは何処かの大衆紙か小説の挿し絵で見たのだと勝手に思っていたのだ。

でも今、そんな旦那様を目の前にして初めて何かのピースが綺麗に填まるのを感じたのだ。


あの柔らかな金髪と翡翠の瞳。
涼し気な目元にはエロスを感じるような泣き黒子があり、とても妖しい雰囲気を醸し出している。

すらりとした体躯をバスローブ一枚で覆ったその姿はもう色気ムンムンで正直鼻血が出そうだった。

だから、旦那様であるハロルド様から言われた言葉で私は雷にでも打たれたような衝撃を受けたのだ。

「私は貴女に求めるものはユリウスの母としての役目だ。私には愛する人が他にいる。だから最初に言っておく。女としての貴女を抱く事はない、と」

そう言って扉を硬く閉められたハロルド様。

一人置いてけぼりの私。

まさかの旦那様による初夜の放棄。

本来なら嘆き悲しむべき所なのだが、私はそれどころではなかった。
目まぐるしく交差した私であって私でない人の記憶。
その情報量に本来なら倒れたり熱を出して然るべきなのだろうが、今の私にはそんな時間の余裕はなった。
「まさか、私があの『シンデレラ公子』の主人公であるユリウス様を女性不信にした淫乱な継母なの?」
愕然とし、私は誰もいなくなった部屋で盛大にベッドへ突っ伏したのだった。

今現在、私は18歳のうら若き乙女。

男爵家の三女として生まれた私は結婚には夢すら抱かなかった。

髪は何処にでもある栗毛色で、目は少し珍しい薄いグレー色だ。

特別に頭が良いわけでもないし、血筋だって貴族の最下層だ。
勿論器量だって良い方ではない。
何か良い面はないか?と聞かれると正直困る。
強いて言えば家が成り上がり男爵と言う事だろうか?
普通の伯爵家よりはお金がある程度だ。
そんな私に先日35歳の公爵様から後妻の打診が父の元へと来た。

今年14歳になった嫡男の母として迎えたいと。

勿論父は小躍りしながら了承した。

多分これが噂に聞くゲーム補正なのだろう。

「旦那から相手にされない私が、ある日4歳下の思春期真っ盛りの義理の息子のユリウス様に手を出し、それがトラウマになってからの女性不信。なんて事なの……」


そう、これはユリウス様が主人公の『シンデレラ公子』と言う名のBLシュミレーションゲーム。

18歳になったユリウス様が王宮の騎士団に入られ、色々な高貴な子息達と寮生活でウハウハするお話だ。

18になった貴族の子息は必ず1年間の兵役の義務がある。
例に漏れずユリウス様も参加されるのだ。

そこで男性に目覚めて行き、やがて……。
そんなお話だ。

まぁ、基本的に騎士団は男だけの集まりで、自然とそういう事が起きると思うけど、何せ攻略対象が豪華なのだ。

「王太子様とか第二王子とか……王弟殿下とかいたわね。後、宰相の息子と将軍の息子。魔術師団長の息子もいたわね」

前世腐女子の私としてはウハウハものだ。
何せ、ドハマリした私は同人誌にまで手を出す程に。
それも、買う方ではなくく方へだ。
そんな私がサブとは言えシンデレラ公子の登場人物へ。

「実は続編ではその父親達が攻略対象って言うんだから、この国もなかなかな腐敗っぷりだわ」

そうなのだ。

私の旦那様も攻略対象。

つまりはゲイなんだよ。

「これじゃぁ女なんて抱けないよね」

悟った私はそう言うと今後の事を考え……はせず。

「それより服よね。こんな透け透けのネグリジェじゃ風邪ひいちゃうわよ」

取り敢えず今晩はバスローブを羽織って寝ようか。

考えるのは明日にしよう。

どうも楽天家な私はそのまま寝るのであった。
そうして布団へ入ろうと思った時に大事な事を思い出した。
「いや、まてよ」

そうじゃない。

これから大事なイベントがあったんだ。

私は寝るのを中断すると急いでレターセットの中から紙を取り出すと、鉛筆片手に部屋を飛び出したのだった。
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