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第一章
黒竜様とチャラ男
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それから、私は度々黒竜様の広場に行くようになった。黒竜様はいないことが多いが、稀に広場で羽を休めておられることがある。いや、私を待っていてくださったのではないかという錯覚にすら陥る。
黒竜様と会話出来ないのをいいことに、私は悩みを黒竜様に打ち明けるようになっていた。黒竜様は私の言葉を理解出来るのであろう、いつも黙って私の話を聞いてくださる。
「黒竜様、私はどうしたらもとの世界に戻れるんでしょうか」
などという話から始まり、今はもっと深い話をするようになっている。
「男なんて信用出来ません。
どうせ裏切られるんですから」
「この国の人は、波長が合うなどと結婚相手を決めるようですが、私には理解出来ません。
私は、心から好きな人と結婚したいんです!」
こんな私の愚痴を、黒竜様はただ黙って聞いてくださった。私は黒竜様に身を寄せ、その温もりを感じながら、こうやって悩みを打ち明け続ける。黒竜様の隣は居心地が良く、ずっと隣にいたいとさえ思うのであった。
朝、黒竜様と話をする。そして食堂で働き、夕方……
「エマ。食事の時間だ」
いつものように、豪華な食事とともにクリフさんが訪れる。私はテーブルを挟んでクリフさんと距離を取り、容易く触れられないようにと注意する。というのも、クリフさんに触れると気持ちが満たされてしまうからだ。
「今日の夕食は、魔魚のフライと、恋人草のサラダ、ドラゴンミールのミネストローネだ」
「わーい、ありがとうございます」
喜びながらも、いつまでもクリフさんの世話になっていてもいけないと思う。どういうわけかクリフさんは私を気に入り、こうして毎日食事の世話をしてくれるが……
(これって私、ヒモじゃん)
そう思うようになっていた。
クリフさんは、私が黒竜様を助けたからという理由で、私に良くしてくれている。きっと、黒竜様はこの国の守り神だからだ。だが、癒しの力があれば、傷ついている人を助けるのは当然だ。
「クリフさん、今日初めて給料をもらったんです!」
クリフさんに、今月の給料の入った封筒を見せる。
「良かったな」
クリフさんは目を細めて愛しそうに私を見る。そんな風に見られると、誤解してしまう。まるで、クリフさんが私を好きなのではないかと思ってしまう。だが、クリフさんが私を好きになる理由などない。
「こうして生活費を稼ぐことが出来るのですから、もうそろそろクリフさんに頼るのもやめようと思います」
そう言いながらも、もの寂しさを感じる。食堂で働いているのも楽しい。だが、今やこうしてクリフさんと食事をし、他愛のない話をするのも日課となっていた。
(……いや、違う。
これ以上クリフさんといるのは危険だ。
少しずつ、心を許してしまっているのだから! )
クリフさんは、悲しげな瞳で私を見る。
「エマは俺が嫌なのか? 」
そんなに切なげな声で聞かないで欲しい。クリフさんから離れる決心をしたのに、この決心が揺らいでしまうから。
「俺は、こうしてエマと話がしたい」
深い青い瞳で見つめられると、胸の中がざわっとする。
不意にクリフさんは手を伸ばし、テーブル越しに私の手を握る。優しく包むように、そっと。その瞬間、胸が温かくなり心地よい気分が押し寄せる。
「やっ、やめてください!」
クリフさんに触れられると、変な気分になってしまうから。だが、クリフさんが止めるはずもない。甘く切ない瞳で私を見つめながら、そっと優しく告げた。
「波長が合うってことは、こういうことなんだ。
嫌でも惹かれてしまう。その運命に抗うことは出来ない」
「そう言っておいて、どうせ飽きたら捨てるんだから」
苦し紛れにぼやく私を、なおも甘い瞳で見るクリフさん。
「エマの世界と俺の世界の常識は違う。だから、エマにこの世界の常識に従えと言っても無理なんだろう」
甘い声で囁かれ、手をぎゅっと握られ、それだけで気持ちが安らいでしまう。だが、私は必死に気を張って、クリフさんに流されないようにする。
「エマの世界では、好きになった人と結婚すると聞いた。
それなら、俺のことを好きになってもらうしかない」
「そ……それは……無理です」
必死に抵抗する私を見て、クリフさんは余裕の表情で笑った。
「そう言っても、分かっているだろう?
エマは心の奥底で、もう俺のことを好きになっている」
(な……なにこのナルシスト!!
自信過剰のチャラ男なんてもってのほか!! )
ぷいっとそっぽを向くが、クリフさんはその綺麗な瞳を細めて私を見る。その視線が、まるで好きだ好きだと言っているようにすら思う。
(こういうのがいけないんだ)
そして、食事を終えてクリフさんが帰る時間となる。クリフさんなんて好きなはずがないのに、別れるのがなんだか辛い。きっと、『波長が合う』せいなのだ。
「おやすみ、エマ」
クリフさんは目を細め、名残惜しそうにそっと私の髪を撫でる。それだけで幸せを感じ、もっとクリフさんと一緒にいたいと思ってしまうのであった。
(釣られちゃ駄目だ、釣られちゃ駄目だ)
必死に心の中で言い聞かせた。
黒竜様と会話出来ないのをいいことに、私は悩みを黒竜様に打ち明けるようになっていた。黒竜様は私の言葉を理解出来るのであろう、いつも黙って私の話を聞いてくださる。
「黒竜様、私はどうしたらもとの世界に戻れるんでしょうか」
などという話から始まり、今はもっと深い話をするようになっている。
「男なんて信用出来ません。
どうせ裏切られるんですから」
「この国の人は、波長が合うなどと結婚相手を決めるようですが、私には理解出来ません。
私は、心から好きな人と結婚したいんです!」
こんな私の愚痴を、黒竜様はただ黙って聞いてくださった。私は黒竜様に身を寄せ、その温もりを感じながら、こうやって悩みを打ち明け続ける。黒竜様の隣は居心地が良く、ずっと隣にいたいとさえ思うのであった。
朝、黒竜様と話をする。そして食堂で働き、夕方……
「エマ。食事の時間だ」
いつものように、豪華な食事とともにクリフさんが訪れる。私はテーブルを挟んでクリフさんと距離を取り、容易く触れられないようにと注意する。というのも、クリフさんに触れると気持ちが満たされてしまうからだ。
「今日の夕食は、魔魚のフライと、恋人草のサラダ、ドラゴンミールのミネストローネだ」
「わーい、ありがとうございます」
喜びながらも、いつまでもクリフさんの世話になっていてもいけないと思う。どういうわけかクリフさんは私を気に入り、こうして毎日食事の世話をしてくれるが……
(これって私、ヒモじゃん)
そう思うようになっていた。
クリフさんは、私が黒竜様を助けたからという理由で、私に良くしてくれている。きっと、黒竜様はこの国の守り神だからだ。だが、癒しの力があれば、傷ついている人を助けるのは当然だ。
「クリフさん、今日初めて給料をもらったんです!」
クリフさんに、今月の給料の入った封筒を見せる。
「良かったな」
クリフさんは目を細めて愛しそうに私を見る。そんな風に見られると、誤解してしまう。まるで、クリフさんが私を好きなのではないかと思ってしまう。だが、クリフさんが私を好きになる理由などない。
「こうして生活費を稼ぐことが出来るのですから、もうそろそろクリフさんに頼るのもやめようと思います」
そう言いながらも、もの寂しさを感じる。食堂で働いているのも楽しい。だが、今やこうしてクリフさんと食事をし、他愛のない話をするのも日課となっていた。
(……いや、違う。
これ以上クリフさんといるのは危険だ。
少しずつ、心を許してしまっているのだから! )
クリフさんは、悲しげな瞳で私を見る。
「エマは俺が嫌なのか? 」
そんなに切なげな声で聞かないで欲しい。クリフさんから離れる決心をしたのに、この決心が揺らいでしまうから。
「俺は、こうしてエマと話がしたい」
深い青い瞳で見つめられると、胸の中がざわっとする。
不意にクリフさんは手を伸ばし、テーブル越しに私の手を握る。優しく包むように、そっと。その瞬間、胸が温かくなり心地よい気分が押し寄せる。
「やっ、やめてください!」
クリフさんに触れられると、変な気分になってしまうから。だが、クリフさんが止めるはずもない。甘く切ない瞳で私を見つめながら、そっと優しく告げた。
「波長が合うってことは、こういうことなんだ。
嫌でも惹かれてしまう。その運命に抗うことは出来ない」
「そう言っておいて、どうせ飽きたら捨てるんだから」
苦し紛れにぼやく私を、なおも甘い瞳で見るクリフさん。
「エマの世界と俺の世界の常識は違う。だから、エマにこの世界の常識に従えと言っても無理なんだろう」
甘い声で囁かれ、手をぎゅっと握られ、それだけで気持ちが安らいでしまう。だが、私は必死に気を張って、クリフさんに流されないようにする。
「エマの世界では、好きになった人と結婚すると聞いた。
それなら、俺のことを好きになってもらうしかない」
「そ……それは……無理です」
必死に抵抗する私を見て、クリフさんは余裕の表情で笑った。
「そう言っても、分かっているだろう?
エマは心の奥底で、もう俺のことを好きになっている」
(な……なにこのナルシスト!!
自信過剰のチャラ男なんてもってのほか!! )
ぷいっとそっぽを向くが、クリフさんはその綺麗な瞳を細めて私を見る。その視線が、まるで好きだ好きだと言っているようにすら思う。
(こういうのがいけないんだ)
そして、食事を終えてクリフさんが帰る時間となる。クリフさんなんて好きなはずがないのに、別れるのがなんだか辛い。きっと、『波長が合う』せいなのだ。
「おやすみ、エマ」
クリフさんは目を細め、名残惜しそうにそっと私の髪を撫でる。それだけで幸せを感じ、もっとクリフさんと一緒にいたいと思ってしまうのであった。
(釣られちゃ駄目だ、釣られちゃ駄目だ)
必死に心の中で言い聞かせた。
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