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第二章
不穏な計画と、急な転居
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「それはそうとして……」
クリフさんは急に真顔になり、私の頬から手を離す。その瞬間、一気に寂しさが押し寄せる。もっとクリフさんに触れて欲しいと思ってしまう。
私はきっと、悲しげな顔をしていたのだろう。クリフさんはふっと笑い、次はそっと髪を撫でてくれる。するとまた、幸せな気分が押し寄せるのであった。こうして私は、完全にクリフさんの”波長”の虜となっている。
だが、私の幸せな気持ちは、
「シャーマニアの聖女が、黒竜国を訪れるらしい」
その言葉で吹っ飛んでしまった。
焦った私は、咄嗟にクリフさんに聞いていた。
「シャーマニアの聖女って、里果のことですよね!? 」
二度と里果に会うつもりはなかった。里果は白竜王と共に人生を歩むものだと思っていた。だが、その里果が黒竜国に来る!?
(絶対、クリフさんを狙ってるんだ)
その思いは確信に近い。
里果は去り際までクリフさんを気にしていた。それに、こうやって里果は、私から全てを奪っていく。友達も、勇輝も、クリフさんだって……
私は、ぎゅっとクリフさんの服を掴んでいた。いつの間にかクリフさんへの思いは膨れ上がり、私にとって大切な人となっていた。このクリフさんを、里果に奪われたくない。
クリフさんは一瞬驚いた顔をした。そして、頬を緩めて私を見る。その大きな手で、そっと髪を撫でながら。
「大丈夫だ。俺はユウキとかいう男とは違う」
そうであって欲しい。だが、そうである証拠はない。いずれにせよ、里果を侮ってはいけない。里果は顔もいいし、驚くほど男性からモテるからだ。
(分かるよ。素直になれない私より、小動物みたいな表情豊かな里果が可愛いの……)
不安な私を諭すように、クリフさんは静かに話す。
「俺としては、あの聖女の入国を禁じたい。だが、シャーマニアの奴らは聖女による慈善事業だと言い張り、聖女が修道院を巡って治療を行う計画表を提出した。
これを断ることは、一国の王として出来ない」
それに頷くしかない私。
「俺はエマからあの聖女の話を聞いているから、聖女の行動を見張るつもりではいる。
それにあの聖女は、敵対する白竜国の王の妻となる予定だから」
そうだ。里果は白竜王の妻となるのだ。それなのになぜ、黒竜国へ来るのだろう。
自問自答して、やはり思い当たることはクリフさんだ。第六妻となることに乗り気でない里果は、あわよくばクリフさんの妻になろうとしているのだ。
(そんなの嫌だ!! )
「だから、提案だ」
クリフさんは甘い声で囁き、髪に触れていた手をそっと私の背中に回す。クリフさんとの距離が近くなり、さらに大きな幸せが襲ってくる。
「エマ。もうそろそろ、城に住んだらどうだ? 」
「……え? 」
見上げると、深い青色の綺麗な瞳と視線が絡まる。
「エマも俺の近くにいたら、安心だろう」
「……」
「そして、聖女ご一行にはこの家に泊まってもらうとしよう。
俺としては、城内に泊まられるのは避けたい。
だが、聖女は特別な存在だ。街に泊まらせて万が一の事態があったら……
白竜国はそれを理由に、また黒竜国に攻め込んでくるだろう」
王城に住むのは嫌だった。私はただの異世界人であるし、周りの人々の視線が気になるから。それに何より、クリフさんとの距離が近付いてしまうから。私はクリフさんに惚れないように、必死だった。
(でも、もう惚れてしまった……)
だから私が、王城に住むことを避ける理由はもはやない。
「分かりました」
頷くと、
「やけに素直だな」
クリフさんは優しく笑い、そっと私に身を寄せる。そんなクリフさんを拒否することも出来ず、私はその甘くて心地よい幸せに酔う。
「だって、里果にクリフさんまで奪われたくないんですから」
苦し紛れに吐き出すと、
「だから大丈夫だと言ってるだろう」
彼は低くて甘い声でぼやき、私に回した腕に力を込める。不覚にもクリフさんの胸に顔を埋めるような形となり、心臓が破裂しそうなほどバクバクと音を立てる。
だが……クリフさんから感じる鼓動も、私と同じように激しく脈打っているのだ。
(ドキドキしているのは、私だけじゃない……)
そう思うと、さらにクリフさんの存在が愛しく思える。
(駄目だな。私、クリフさん中毒だ)
こうやって、この甘い幸せに浸るのであった。
そういうわけで、私はとうとう王城に住むこととなった。クリフさんと食事をした後、メイド服や執事服を着た人々にあれよあれよと身の回りのものを運ばれる。
そして、案内されて初めて入る王城は、予想以上に広くて壮大だった。
大きな竜の像に、遥か高い場所にある天井。城を支える柱は、まるで竜の足のように太い。そしてこの巨大な空間を、黒い騎士服姿の男性たちがいそいそと行き交っている。その中を、クリフさんは私の手を引いて歩く。すると騎士たちは決まってクリフさんに敬礼し、頭を下げる。
分かっていたことだが、クリフさんは一国の王である。私が想像しているよりもずっと崇高で偉い人だということを、目の当たりにするのだった。
クリフさんは急に真顔になり、私の頬から手を離す。その瞬間、一気に寂しさが押し寄せる。もっとクリフさんに触れて欲しいと思ってしまう。
私はきっと、悲しげな顔をしていたのだろう。クリフさんはふっと笑い、次はそっと髪を撫でてくれる。するとまた、幸せな気分が押し寄せるのであった。こうして私は、完全にクリフさんの”波長”の虜となっている。
だが、私の幸せな気持ちは、
「シャーマニアの聖女が、黒竜国を訪れるらしい」
その言葉で吹っ飛んでしまった。
焦った私は、咄嗟にクリフさんに聞いていた。
「シャーマニアの聖女って、里果のことですよね!? 」
二度と里果に会うつもりはなかった。里果は白竜王と共に人生を歩むものだと思っていた。だが、その里果が黒竜国に来る!?
(絶対、クリフさんを狙ってるんだ)
その思いは確信に近い。
里果は去り際までクリフさんを気にしていた。それに、こうやって里果は、私から全てを奪っていく。友達も、勇輝も、クリフさんだって……
私は、ぎゅっとクリフさんの服を掴んでいた。いつの間にかクリフさんへの思いは膨れ上がり、私にとって大切な人となっていた。このクリフさんを、里果に奪われたくない。
クリフさんは一瞬驚いた顔をした。そして、頬を緩めて私を見る。その大きな手で、そっと髪を撫でながら。
「大丈夫だ。俺はユウキとかいう男とは違う」
そうであって欲しい。だが、そうである証拠はない。いずれにせよ、里果を侮ってはいけない。里果は顔もいいし、驚くほど男性からモテるからだ。
(分かるよ。素直になれない私より、小動物みたいな表情豊かな里果が可愛いの……)
不安な私を諭すように、クリフさんは静かに話す。
「俺としては、あの聖女の入国を禁じたい。だが、シャーマニアの奴らは聖女による慈善事業だと言い張り、聖女が修道院を巡って治療を行う計画表を提出した。
これを断ることは、一国の王として出来ない」
それに頷くしかない私。
「俺はエマからあの聖女の話を聞いているから、聖女の行動を見張るつもりではいる。
それにあの聖女は、敵対する白竜国の王の妻となる予定だから」
そうだ。里果は白竜王の妻となるのだ。それなのになぜ、黒竜国へ来るのだろう。
自問自答して、やはり思い当たることはクリフさんだ。第六妻となることに乗り気でない里果は、あわよくばクリフさんの妻になろうとしているのだ。
(そんなの嫌だ!! )
「だから、提案だ」
クリフさんは甘い声で囁き、髪に触れていた手をそっと私の背中に回す。クリフさんとの距離が近くなり、さらに大きな幸せが襲ってくる。
「エマ。もうそろそろ、城に住んだらどうだ? 」
「……え? 」
見上げると、深い青色の綺麗な瞳と視線が絡まる。
「エマも俺の近くにいたら、安心だろう」
「……」
「そして、聖女ご一行にはこの家に泊まってもらうとしよう。
俺としては、城内に泊まられるのは避けたい。
だが、聖女は特別な存在だ。街に泊まらせて万が一の事態があったら……
白竜国はそれを理由に、また黒竜国に攻め込んでくるだろう」
王城に住むのは嫌だった。私はただの異世界人であるし、周りの人々の視線が気になるから。それに何より、クリフさんとの距離が近付いてしまうから。私はクリフさんに惚れないように、必死だった。
(でも、もう惚れてしまった……)
だから私が、王城に住むことを避ける理由はもはやない。
「分かりました」
頷くと、
「やけに素直だな」
クリフさんは優しく笑い、そっと私に身を寄せる。そんなクリフさんを拒否することも出来ず、私はその甘くて心地よい幸せに酔う。
「だって、里果にクリフさんまで奪われたくないんですから」
苦し紛れに吐き出すと、
「だから大丈夫だと言ってるだろう」
彼は低くて甘い声でぼやき、私に回した腕に力を込める。不覚にもクリフさんの胸に顔を埋めるような形となり、心臓が破裂しそうなほどバクバクと音を立てる。
だが……クリフさんから感じる鼓動も、私と同じように激しく脈打っているのだ。
(ドキドキしているのは、私だけじゃない……)
そう思うと、さらにクリフさんの存在が愛しく思える。
(駄目だな。私、クリフさん中毒だ)
こうやって、この甘い幸せに浸るのであった。
そういうわけで、私はとうとう王城に住むこととなった。クリフさんと食事をした後、メイド服や執事服を着た人々にあれよあれよと身の回りのものを運ばれる。
そして、案内されて初めて入る王城は、予想以上に広くて壮大だった。
大きな竜の像に、遥か高い場所にある天井。城を支える柱は、まるで竜の足のように太い。そしてこの巨大な空間を、黒い騎士服姿の男性たちがいそいそと行き交っている。その中を、クリフさんは私の手を引いて歩く。すると騎士たちは決まってクリフさんに敬礼し、頭を下げる。
分かっていたことだが、クリフさんは一国の王である。私が想像しているよりもずっと崇高で偉い人だということを、目の当たりにするのだった。
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