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23. 犬を飼うのも私のため
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ペットショップからの帰り道。犬を連れて帰ろうとするも、
「予防接種をするまで、外には出さないでください」
ペットショップの店員に言われてしまう。
「地面にも菌がたくさんいるので。
お手数ですが、帰る時もケージに入れるか抱っこするかでお願いします」
それで、ケージに入れようとするも、犬は嫌がってケージに入らない。ルーカスが
「クソ犬が!」
なんて、犬を無理矢理ケージに押し込もうとするから、言ってしまった。
「ルーカス様。抱っこして帰りましょう」
犬を抱き上げると、嬉しそうに尻尾をふり、私の顔をぺろぺろと舐める。こんなに喜んでくれて、嬉しい限りだ。だが、私ばかり抱っこしているのでは、申し訳なく思う。
「ルーカス様。……抱っこしてあげたらいかがでしょうか? 」
その瞬間、
「は!? 」
ルーカスは思いっきり嫌そうに私を睨む。抱っこすることに拒否反応を示すのか。だが、抱っこすら嫌なのに犬を飼うだなんて、無茶にもほどがある。やはり、ルーカスが犬を飼うことは不可能なのだ。この犬のためにも、犬を飼うことを諦めてもらったほうがいいのか……
「ルーカス様……やはり、犬を飼うことは……」
やめますか?そう聞こうと思った時だった。
「……貸せ」
ルーカスはぶっきらぼうに言い、顔を背けたまま、私に向かって手を差し出している。だが、その差し出された手が微かに震えているのだ。もしかして、怖いのだろうか。このおとなしい小型犬が、震えるくらい怖いのだろうか。
犬をルーカスの腕に乗せると、ルーカスは震えながら犬を抱きしめる。そして、犬はぺろぺろとルーカスの顔を舐める。それでルーカスは
「ひぃぃぃい」
なんて小声で言いながらも全身で震えていて……なんともみっともないと思ってしまった。
「だ、大丈夫ですか、ルーカス様」
慌てて聞くと、
「これくらい大丈夫だ」
そう告げるが、その声すらも震えている。これはコントだろうか。いや、ルーカスは心底犬が怖いのだ。だが、セシリアのために、何とかして飼おうとしているのだ。
確かに私は犬好きだ。だからといって、ルーカスが犬を飼っているからという理由で結婚することはないと思う。また、犬を飼っていない人と結婚してもいいとも思っている。そこまで犬にこだわるつもりもないのだ。
「る、ルーカス様。無理になさらなくても……
セシリア嬢との結婚は、犬がいるかどうかは関係ないかと思いますが……」
おずおずと言う私を、ルーカスは犬に舐めなられながらも睨む。
「それでも、セシリアの好きなものは全て揃えたいんだ!」
その気持ちは嬉しい。だが、ルーカスが無理をしていることは明らかだ。
「せ、セシリア嬢は、ルーカス様が無理をしていると悲しむでしょう」
思わずそう言うと、ルーカスは犬を抱いて顔を舐められプルプル震えながら、青ざめた顔で私を睨んだ。
「お前にはセシリアの気持ちが分かるのか!? 」
分かる。私がセシリアだから。だなんて、言えるはずもない。
「俺はセシリアのためなら、どんなことだって我慢するし受け入れる。
犬だって、きっと好きになってやる」
その言葉は嬉しいし、ルーカスの気持ちも本当だと思う。だが、やっぱり私のために無茶をするのはやめてほしいと切に思う。
ルーカスは犬を抱いて死んだような顔をしながら、少し震える声で告げた。
「こ、このクソ犬の名前はマッシュにしよう」
「……え!? 」
「俺はキノコ嫌いを克服する。同じく、犬嫌いを克服するのだから」
だからといって、嫌いなキノコの名前を付けられるだなんて、この犬には迷惑だろう。もっと別の名前はないのだろうか。そもそも、ルーカスは冗談を言っているのかもしれない。悪ふざけの延長で犬を飼い、マッシュと名付けているだけかもしれない。私は必死に考えるが、ルーカスは犬を抱いたまま歩き始めてしまう。緊張しているせいか、酷くカチンコチンな歩き方で。
「ま、待ってください、ルーカス様!」
慌てて彼を追いかける。このまま震えに震えて、犬を落としてしまったら大変だ。
「い、犬は私が持ちます。ルーカス様に荷物を持たせるのはいけません!」
苦し紛れに告げるが、
「いい。俺はマッシュを抱きたいのだ」
ルーカスは相変わらずしかめっ面で答える。
「俺は、必ずセシリアに認めてもらえる男になる」
それなら、あなたの近くにいる私を大切にしてよ!と叫びたくもなった。
こんなわけで、ルーカスは犬を飼うことになった。犬の名前もマッシュに決まったようだ。マッシュには申し訳ないが、由来を知らなかったら可愛くていい名前だとも思う。そのため、マッシュという名前の由来は忘れることにした。
館に帰ってひと息つくと、マッシュはここが新しい家だと分かったらしく、いたずらっ子の本領を発揮し始めた。きゃんきゃん吠えて部屋中を駆け回り、ルーカスの書類を口に咥えてぶんぶん頭を振った。ペットショップにいた時の大人しさが嘘のようだ。それでルーカスが完全に怯えてしまったため、片付けやしつけは私がすることになるだろう。
「こ……こんな礼儀知らずのクソ犬だとは思わなかった」
ルーカスは震える声で呟いたが、私はルーカスに告げていた。
「どんな犬でも、迎えた人に責任はあるのです。
マッシュがせっかく館に来てくれたのですから、ルーカス様とマッシュがお互い心地よく暮らせるように頑張りましょう」
「予防接種をするまで、外には出さないでください」
ペットショップの店員に言われてしまう。
「地面にも菌がたくさんいるので。
お手数ですが、帰る時もケージに入れるか抱っこするかでお願いします」
それで、ケージに入れようとするも、犬は嫌がってケージに入らない。ルーカスが
「クソ犬が!」
なんて、犬を無理矢理ケージに押し込もうとするから、言ってしまった。
「ルーカス様。抱っこして帰りましょう」
犬を抱き上げると、嬉しそうに尻尾をふり、私の顔をぺろぺろと舐める。こんなに喜んでくれて、嬉しい限りだ。だが、私ばかり抱っこしているのでは、申し訳なく思う。
「ルーカス様。……抱っこしてあげたらいかがでしょうか? 」
その瞬間、
「は!? 」
ルーカスは思いっきり嫌そうに私を睨む。抱っこすることに拒否反応を示すのか。だが、抱っこすら嫌なのに犬を飼うだなんて、無茶にもほどがある。やはり、ルーカスが犬を飼うことは不可能なのだ。この犬のためにも、犬を飼うことを諦めてもらったほうがいいのか……
「ルーカス様……やはり、犬を飼うことは……」
やめますか?そう聞こうと思った時だった。
「……貸せ」
ルーカスはぶっきらぼうに言い、顔を背けたまま、私に向かって手を差し出している。だが、その差し出された手が微かに震えているのだ。もしかして、怖いのだろうか。このおとなしい小型犬が、震えるくらい怖いのだろうか。
犬をルーカスの腕に乗せると、ルーカスは震えながら犬を抱きしめる。そして、犬はぺろぺろとルーカスの顔を舐める。それでルーカスは
「ひぃぃぃい」
なんて小声で言いながらも全身で震えていて……なんともみっともないと思ってしまった。
「だ、大丈夫ですか、ルーカス様」
慌てて聞くと、
「これくらい大丈夫だ」
そう告げるが、その声すらも震えている。これはコントだろうか。いや、ルーカスは心底犬が怖いのだ。だが、セシリアのために、何とかして飼おうとしているのだ。
確かに私は犬好きだ。だからといって、ルーカスが犬を飼っているからという理由で結婚することはないと思う。また、犬を飼っていない人と結婚してもいいとも思っている。そこまで犬にこだわるつもりもないのだ。
「る、ルーカス様。無理になさらなくても……
セシリア嬢との結婚は、犬がいるかどうかは関係ないかと思いますが……」
おずおずと言う私を、ルーカスは犬に舐めなられながらも睨む。
「それでも、セシリアの好きなものは全て揃えたいんだ!」
その気持ちは嬉しい。だが、ルーカスが無理をしていることは明らかだ。
「せ、セシリア嬢は、ルーカス様が無理をしていると悲しむでしょう」
思わずそう言うと、ルーカスは犬を抱いて顔を舐められプルプル震えながら、青ざめた顔で私を睨んだ。
「お前にはセシリアの気持ちが分かるのか!? 」
分かる。私がセシリアだから。だなんて、言えるはずもない。
「俺はセシリアのためなら、どんなことだって我慢するし受け入れる。
犬だって、きっと好きになってやる」
その言葉は嬉しいし、ルーカスの気持ちも本当だと思う。だが、やっぱり私のために無茶をするのはやめてほしいと切に思う。
ルーカスは犬を抱いて死んだような顔をしながら、少し震える声で告げた。
「こ、このクソ犬の名前はマッシュにしよう」
「……え!? 」
「俺はキノコ嫌いを克服する。同じく、犬嫌いを克服するのだから」
だからといって、嫌いなキノコの名前を付けられるだなんて、この犬には迷惑だろう。もっと別の名前はないのだろうか。そもそも、ルーカスは冗談を言っているのかもしれない。悪ふざけの延長で犬を飼い、マッシュと名付けているだけかもしれない。私は必死に考えるが、ルーカスは犬を抱いたまま歩き始めてしまう。緊張しているせいか、酷くカチンコチンな歩き方で。
「ま、待ってください、ルーカス様!」
慌てて彼を追いかける。このまま震えに震えて、犬を落としてしまったら大変だ。
「い、犬は私が持ちます。ルーカス様に荷物を持たせるのはいけません!」
苦し紛れに告げるが、
「いい。俺はマッシュを抱きたいのだ」
ルーカスは相変わらずしかめっ面で答える。
「俺は、必ずセシリアに認めてもらえる男になる」
それなら、あなたの近くにいる私を大切にしてよ!と叫びたくもなった。
こんなわけで、ルーカスは犬を飼うことになった。犬の名前もマッシュに決まったようだ。マッシュには申し訳ないが、由来を知らなかったら可愛くていい名前だとも思う。そのため、マッシュという名前の由来は忘れることにした。
館に帰ってひと息つくと、マッシュはここが新しい家だと分かったらしく、いたずらっ子の本領を発揮し始めた。きゃんきゃん吠えて部屋中を駆け回り、ルーカスの書類を口に咥えてぶんぶん頭を振った。ペットショップにいた時の大人しさが嘘のようだ。それでルーカスが完全に怯えてしまったため、片付けやしつけは私がすることになるだろう。
「こ……こんな礼儀知らずのクソ犬だとは思わなかった」
ルーカスは震える声で呟いたが、私はルーカスに告げていた。
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