花野井一家の幸せ。

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美醜感覚

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「では、気づいたらさっきの場所に?その前の記憶後ないと?」


「「「そうなんです。」」」



あれから何分か…何十分かかけて現状を説明した。
桔梗が混ざるとややこしくなるので、三姉妹で交互に説明した。
三つ子だからか息ぴったりで交代しながら説明できた。
人であるという説明だけで大分かかったが、ようやく納得してもらえた。
ちなみに荷馬車は動いてる。



「それは気の毒に…帰る場所の記憶も無くしてしまったなんて…それも全員…。」



異世界転移の説明はどうしていいかわからないので、記憶喪失の旅人にした。
4人とも記憶喪失って無理があるかと思ったけど、なぜかすんなり受け入れられた。
人がよすぎるだろうこの夫婦…大丈夫か?



「はい。なのでこの近くの街でとりあえず稼ごうかと思って。」


「そうかいそうかい。こう言っちゃなんだが、あんたたちなら働かなくてもそこら辺の人たちみんなに貢いでもらえるぞ?」


「いやそれはちょっと…。贅沢したいわけじゃないので。」


「なんて謙虚な天使たちだ。」


「ありがたやありがたや。」



苦笑いする花野井一家。
どうやらこの世界、美醜の感覚が自分たちとは違うみたいなのだ。
話していくうちに自分たちの容姿がめちゃめちゃいいらしいことをきかされた。
この世界の女性は皆太っていて細い人がおらず、目鼻立ちで美醜を判断するようだ。
切れ長のすっきりした一重に、低めの鼻、小さめの唇が美人の証らしい。
逆にぱっちりした二重はギョロギョロと気味が悪く、高い鼻は魔女のようで、大きな口は化け物のようだとか。
体型は細目の方がいいらしいがこの世界にはおらず、また神様からもらった容姿を変えることはできないらしく、ダイエットなど意味ないらしい。
男性はふくよかな方がモテて、細い方が醜いらしい。更に筋肉なんかつけていれば完全に化け物扱いになるとか。顔の造形は女性と同じ扱いだ。
つまり、男性はふくよか一重低い鼻がモテるのだ。女性は一重低い鼻がモテて、更に細ければなおよしらしく…そう、つまりは花野井一家の容姿まんまなのだ。驚くことにザ・東洋人がモテる世界に転移してしまったらしい。
そんなこんなで固まるほどこの夫婦(旦那さんがフランクさんで奥さんがハンナさんとなのってもらった)は驚いてしまったのだ。
驚いたのはこちらだが、と花野井一家はだれもつっこまずに胸にしまった。



「天使たちにこんなこと言うのは気か引けるが…実は私たちは食堂を営んでいてね、近々誰か雇うつもりだったんだが、どうだい?うちに雇われてくれるかい?」



フランクさんがぽよんとしたお腹を叩きながら提案してくれた。
ちなみにフランクさんちょっとぽっちゃりさんで糸目鼻ぺちゃの大きめな口だ。大体の人がこんな感じらしくこれが標準なのだそう。
ハンナさんはフランクさんよりぽっちゃりさんの糸目鼻ぺちゃの大きめな口で、これも標準だそう。
ちなみに、糸目よりはまぶたが薄めな一重が美人らしい。
ほぼぽっちゃりさんなので必然的にまぶたも厚くなってしまうそうだ。



「ぜひ、お願いしたいです。」


「お願いします!」


「わぁ!助かります。」


「何から何までありがとうございます。」



4人それぞれに礼を述べ、夫婦の大衆食堂で働くことになった。







そこで冒頭に戻るわけである。



「いやー、ほんとに助かるわ。」


「可愛くて綺麗なだけじゃなく、働き者で性格もいいなんて…ほんとに天使のようだ。」




一段落ついた食堂では遅めの昼食を皆で食べていた。
ちなみに、最初の数日は大人気の花野井一家を見たいがために開店から閉店までずっと満員だったが、食堂の夫婦が迷惑だ、このままだと天使たちが辞めてどこかに行ってしまうぞ怒鳴ると、街の住民たちで話し合い長居せず、1日1回と決まり事を作って落ち着きを取り戻した。
貴族に囲われたくはないという天使たちの願いから、街の中で花野井一家のことを留め広がらないようにしているのも住民たちの力だ。
もはや住民たちにとってこの一家は崇めて守るべき存在となっているのだ。



「皆が優しいからとても働きやすいですよ。」


「そうですよ。とっても良くしてくれてこちらこそありがたいです。」


「フランクさんとハンナさんにも雇ってもらえて助かりました。」


「感謝してもしきれません。」



4人それぞれ感謝を告げる。
街の住民たちはまだ三つ子の違いがわからない。
桔梗もときどき三つ子の誰かと間違われるくらいだ。
一家は特に気にすることもなく過ごしている。
元の世界でもまちがわれていたし、違いがわかる人なんていなかったからだ。



「こっちこそありがとう。」



目見麗しい4人に感謝され、夫婦は照れ臭そうに笑った。 



「さて、夕食の時間もが来る。そろそろ準備にとりかかろう。」



フランクさんが皆に掛け声をかけて動き出す。
それぞれ自分の食器を片付けて午後の準備を始めた。






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