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ep8
ep8『愚者の宝石と盲目の少女たち』 証拠隠滅
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「……大丈夫か?血は出てないか?」
俺がそう尋ねると脱力したような上野は小さく頷いた。
「────ヘーキ……」
俺は改めてハンカチの上の宝石を見た。
こんなんが身体の中に入っていたのか。
ここで素朴な疑問が湧き起こる。
俺が出さなかったらずっとコレが入ったままだったのか?
上野は自分で病院に行くのは無理と言っていたし─────────
しかし、無事に出てきた今となってはもうそんなことはどうでもいいだろう。
俺は上野を改めて見た。
「……あ!?」
何かに気付いた上野は両手で顔を覆った。
「え!?どうしたんだ?」
どこか痛むのか、と俺が慌てて聞き返すと上野は首を振った。
「……あーし……なんか───────」
ふと、シーツに視線を落とすと─────────小さく濡れた滲みのようなものが出来ていた。
「……ちょっと漏らしちゃったかも……」
上野はまた涙目になる。
「あ!?いや、そんなことはねぇだろ!?」
俺は咄嗟にそれを否定する。
「ほ……ほら!ションベンぽい匂いとかしねぇし!なんか違うんじゃね!?」
ローション2つ使ったからシーツに溢れたんだろ!?と俺がフォローするように言うと上野は項垂れた。
「わかんない……けど、どーしよ……佐々木っちにバレちゃう─────」
確かにそうだ。
どうしよう。
俺はカーテンを掻き分け、机の方向に向かった。
デスクの横に置いてあるキャビネット。
その中に小型冷蔵庫がある。
小泉が美術準備室に置いているコンセント式のものとは違い、保冷剤を入れるタイプのごく小さなものだ。
俺はそれを開け、中にあるリンゴジュースを2本取り出した。
ベッドに戻ると一本を上野に手渡す。
「……ほら、これ飲んで落ち着けよ──────」
俺はグスグスと泣く上野の頭を軽く叩いた。
「ここで俺がリンゴジュース勝手に飲んで溢した事にしとくからさ。お前は落ち着いたら教室に戻ってろよ」
俺がそう言うと上野は驚いたように目を見開いた。
「え……佐藤っちはどうすんの─────」
「シーツをベッドから剥がして家で洗って明日持ってくる」
証拠隠滅にはそうするしかねぇだろ?と俺が告げると上野はまた泣き出した。
「……ごめん。ホントにごめんね……」
上野が悪いんじゃない。
多分、何も知らねぇ中学生相手に怪しい商売やってるインチキカリスマが悪いんだよ。
おれは上野にショーツを履くように促した。
「ほら、ちゃんとパンツ履いとけって。教室に戻んなきゃなんねぇんだし」
俺がそう言うと上野はもじもじとした様子を見せる。
「……ん……なんか───────さっきから股がベタベタヌルヌルしてて……」
そっか。
ローションまみれだったもんな。
俺はズボンのポケットからポケットタイプのウェットティッシュを取り出した。
「ほら。これやるし。全部使ってもいいから拭いて綺麗にしとけ」
俺がそれを手渡すと上野はポカンとした様子で俺の顔を見た。
「なんで佐藤っちはいろんな物がポッケに入ってんの───────」
なんかドラえもんみたい、という上野の言葉を俺は否定した。
「ドラえもんだったらもっといい道具持ってるだろ?少なくともこんな事態にはなってねぇよ」
罪悪感。
打ち消しようのないそれは確実に俺の中にあった。
俺が出しゃばらなければ、或いは俺がもっと上手くやってれば────────
上野にこんな思いはさせてなかったかもしれない。
宝石が体内から取り出せたまでは良かったんだが、本当にこれは正しかったんだろうか。
俺の中の迷いが、上野を急かした。
「ほら、あんまり戻るのが遅いと怪しまれるだろ?」
佐々木が帰ってきたら厄介だから早く教室に戻れって、と俺が言うと上野は頷いた。
「……そーだね。あーし、早く戻んなきゃだね」
少し乱れた着衣を整え、上野は保健室を後にする。
「……ね、佐藤っち──────お願いだから今日のことは誰にも……」
そう言いかけた上野の言葉を俺は遮る。
「わーってるって。絶対、誰にも言わねぇよ」
ありがとね、と俺の顔を見ずに呟いた上野は足早に保健室から遠ざかった。
これでひとまずはミッションコンプリートだろうか。
思わず全身の力が抜けた俺はベッドに座った。
さっき持ってきたリンゴジュースを手に取る。
一気に疲れが出たのでストローを挿し、それを飲んだ。
冷たい甘さが五臓六腑に沁み渡る。
やっぱり果汁ジュースはリンゴに限る。
ぼんやりと天井を眺めていると───────急に視界に入ってきたのは佐々木の顔だった。
「……随分とお疲れのようね」
「!?」
は!???佐々木!???
────────てか、いつからそこに居た!???
俺がそう尋ねると脱力したような上野は小さく頷いた。
「────ヘーキ……」
俺は改めてハンカチの上の宝石を見た。
こんなんが身体の中に入っていたのか。
ここで素朴な疑問が湧き起こる。
俺が出さなかったらずっとコレが入ったままだったのか?
上野は自分で病院に行くのは無理と言っていたし─────────
しかし、無事に出てきた今となってはもうそんなことはどうでもいいだろう。
俺は上野を改めて見た。
「……あ!?」
何かに気付いた上野は両手で顔を覆った。
「え!?どうしたんだ?」
どこか痛むのか、と俺が慌てて聞き返すと上野は首を振った。
「……あーし……なんか───────」
ふと、シーツに視線を落とすと─────────小さく濡れた滲みのようなものが出来ていた。
「……ちょっと漏らしちゃったかも……」
上野はまた涙目になる。
「あ!?いや、そんなことはねぇだろ!?」
俺は咄嗟にそれを否定する。
「ほ……ほら!ションベンぽい匂いとかしねぇし!なんか違うんじゃね!?」
ローション2つ使ったからシーツに溢れたんだろ!?と俺がフォローするように言うと上野は項垂れた。
「わかんない……けど、どーしよ……佐々木っちにバレちゃう─────」
確かにそうだ。
どうしよう。
俺はカーテンを掻き分け、机の方向に向かった。
デスクの横に置いてあるキャビネット。
その中に小型冷蔵庫がある。
小泉が美術準備室に置いているコンセント式のものとは違い、保冷剤を入れるタイプのごく小さなものだ。
俺はそれを開け、中にあるリンゴジュースを2本取り出した。
ベッドに戻ると一本を上野に手渡す。
「……ほら、これ飲んで落ち着けよ──────」
俺はグスグスと泣く上野の頭を軽く叩いた。
「ここで俺がリンゴジュース勝手に飲んで溢した事にしとくからさ。お前は落ち着いたら教室に戻ってろよ」
俺がそう言うと上野は驚いたように目を見開いた。
「え……佐藤っちはどうすんの─────」
「シーツをベッドから剥がして家で洗って明日持ってくる」
証拠隠滅にはそうするしかねぇだろ?と俺が告げると上野はまた泣き出した。
「……ごめん。ホントにごめんね……」
上野が悪いんじゃない。
多分、何も知らねぇ中学生相手に怪しい商売やってるインチキカリスマが悪いんだよ。
おれは上野にショーツを履くように促した。
「ほら、ちゃんとパンツ履いとけって。教室に戻んなきゃなんねぇんだし」
俺がそう言うと上野はもじもじとした様子を見せる。
「……ん……なんか───────さっきから股がベタベタヌルヌルしてて……」
そっか。
ローションまみれだったもんな。
俺はズボンのポケットからポケットタイプのウェットティッシュを取り出した。
「ほら。これやるし。全部使ってもいいから拭いて綺麗にしとけ」
俺がそれを手渡すと上野はポカンとした様子で俺の顔を見た。
「なんで佐藤っちはいろんな物がポッケに入ってんの───────」
なんかドラえもんみたい、という上野の言葉を俺は否定した。
「ドラえもんだったらもっといい道具持ってるだろ?少なくともこんな事態にはなってねぇよ」
罪悪感。
打ち消しようのないそれは確実に俺の中にあった。
俺が出しゃばらなければ、或いは俺がもっと上手くやってれば────────
上野にこんな思いはさせてなかったかもしれない。
宝石が体内から取り出せたまでは良かったんだが、本当にこれは正しかったんだろうか。
俺の中の迷いが、上野を急かした。
「ほら、あんまり戻るのが遅いと怪しまれるだろ?」
佐々木が帰ってきたら厄介だから早く教室に戻れって、と俺が言うと上野は頷いた。
「……そーだね。あーし、早く戻んなきゃだね」
少し乱れた着衣を整え、上野は保健室を後にする。
「……ね、佐藤っち──────お願いだから今日のことは誰にも……」
そう言いかけた上野の言葉を俺は遮る。
「わーってるって。絶対、誰にも言わねぇよ」
ありがとね、と俺の顔を見ずに呟いた上野は足早に保健室から遠ざかった。
これでひとまずはミッションコンプリートだろうか。
思わず全身の力が抜けた俺はベッドに座った。
さっき持ってきたリンゴジュースを手に取る。
一気に疲れが出たのでストローを挿し、それを飲んだ。
冷たい甘さが五臓六腑に沁み渡る。
やっぱり果汁ジュースはリンゴに限る。
ぼんやりと天井を眺めていると───────急に視界に入ってきたのは佐々木の顔だった。
「……随分とお疲れのようね」
「!?」
は!???佐々木!???
────────てか、いつからそこに居た!???
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