これこそが、ボクの人生史上最高の

金糸雀

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昔の話

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「お腹すいた」
鳴りだしそうなお腹を押さえて、ボクはちょっとの絶望と共に呟いた。
「まだ2時間目…」
隣から驚いた小声が聞こえてくる。
「知ってる。ほんとにどうしよう、何かお菓子ない?シマ君。」
ボクは眉をへにょりと下げて、隣のシマ君に小声で返す。
「お菓子?あー?あったかなぁ?」
ごそごそ、ポケットやらカバンを漁る音がする。
ひょっとして何かあったかもとボクもごそごそポケットを探ってみるけど、まぁ無いわな知ってた知ってた。

「どうしたの?」
ごそごそするボクらを後ろから不思議そうに見ていたであろうカナが、やや身体をこちらに寄せて。やっぱり小声で聞いてくる。

「お腹すいたらしい。」
胸ポケをごそごそしながら、シマ君が答えてくれる。
「え?まだ2時間目…。消化早くない?大丈夫??」
心配そうな小声。
大丈夫ってなにが?ボクのお腹??

思わずお腹に目線。

うん、まぁ大丈夫ではないね。そろそろ鳴り出しそうだよ。
「…鳴る。カウントダウン始まりそう。」
「聞こうかな。」
「聞かないで。」
発掘できなかったらしいシマ君が、ずずいっとボクに身を乗りだしてくる。
目線をそっちに動かせば、わりと本気の顔があって驚く。
なんでちょっと乗り気なの?
いやまじで、男の子だってお腹の音は恥ずかしいんですけど。
こっちに来るなとばかりに、肘でシマ君を押し返す。
ちぇっとか言ってるけど、最近シマ君はアキ化してきてちょっと困ります!!



「あ!あった!」

後ろから、嬉しそうな声。
上半身だけ捻って、ボクは後ろのカナを見る。
カナの右手に、棒付きのチョコ。
閉じた状態の、傘みたいなチョコだ。
「昨日部活で後輩が配ってたチョコだよ。」
食べ損ねちゃってたの思い出したんだ。
そう続けながら、カナはボクに向かってそのチョコを差し出してきた。
にこにこ、いつもの笑顔と共に。
「みんな美味しいって言ってたから、きっと美味しいよ。」
「ありがとう!助かるー!」
ボクもつられてぱぁぁっと笑みを浮かべながら差し出されたチョコを受け取ろうと手を出して、
「剥いてあげるよ!」
なぜだかチョコを引っ込められた。
「?自分でやるよ。」
「いいからいいからちょっと待って」
宙で止まっちゃった手を、慌てて伸ばす。
剥いてもらうとか、高校生にもなってそんなこと!
でもカナは上機嫌のまま、チョコの周りの紙を剥がし始めた。
「カナ君はおかんかなぁ。」
隣でシマ君が、ちょっと呆れたようにカナを見てる。
「えぇ?おっきすぎるおかんだねぇ。」
するする剥がされていく紙の包装を見ながら、カナくらい大きなお母さんはちょっとごめんなさいだなぁ、なんて。
でもまぁ、手間省けて良かったかも?なんて。
呑気に思いながらチョコが出てくるのを見ていたら。

「あーん。」

包装紙の剥がされたチョコが、こちらを向いた。

「あーん。」

なんかの反射かな?
ボクはカナのあーんの声にあーんと返して口をぱか。そこにチョコが突っ込んできた。
これまた反射かも。
ボクは突っ込まれたチョコをパクりと咥えて、そのまま、もごもごいただきました。
甘すぎず、ちょっとだけ溶けてるけどこれくらいなら平気。ボク、チョコは硬いのが好きだけどこのくらいの甘さならこのちょい柔らかくても気にならない。
うん。美味しいわこのチョコ。
にこにここちらを見てるカナに、ボクも口をもごもごしながらにっこり。
あとでどこのチョコか聞いてもらおっと。
ご機嫌で前に向き直りながら、その通過途中でシマ君を見たらば。

驚 愕

そんな顔して止まってる。
「??」
どうしたのかと、首を傾けてシマ君をみていると
「…なんでふつーに、あーんしてんの?」
その顔つきのまま、シマ君が呟いた。



「つーか、おいそこ!いちゃついてないで話聞け!」

前からアキが叫んできて、二限目の体育祭準備時間中だったことを思い出した。




カナが泊まって大泣きしたあの日から、ボクはいやいや言わず、体育祭に対峙してる。
嫌だけど。それは変わらないけど。でも心のどこかが軽くなったような、気がする。
ーー仮装徒競走は無くなればいいと思ってますけどね!
とは言え今は、正にその仮装徒競走がお題なんだけども。

「話し合いに参加しねーと、俺の独断と偏見と趣味嗜好で決めちまうぞー。」
「ぅえぇ?」
アキがすかさず、かつかつと黒板に書き連ね始める。

メイド
セーラー服
チアリーダー

そこまで読んで
「それは、ちょ、待って待って!ちゃんと参加します!!」
ボクはガタッと椅子を蹴倒し立ち上がった。
「チアかぁ。ミナミ君に言えば直ぐ持ってきてくれそうだなぁ。」
「えっ…セーラ…?」
隣と後ろから呟きが聞こえたが無視だ無視。
「なんで全部女装なの?仮装だよね?学ランとかでいいんじゃないかな?!」
うちの学校はブレザーだから、学ランは十分仮装です。中学もブレザーだったから、ちょっぴりの憧れもあったりで、ボクは学ランに1票だよ!
「そんなの面白くねーだろーが。学年別対抗戦だぞ。目立たなくてどうすんだ?」
「目立たなくでいいし、面白さもいらないよね!?ね、カナ!」
助けを求め勢いよく後ろを振り返るが。
カナは真剣にスマホ画面を見ていてボクに気づかない。
「カナ?」
「…おへそ出すのは駄目。肩ダシは…ギリセーフ?」
「カ、カナ?」
「白に紺の襟もいいけど、グレーの襟とスカートもアオに似合いそう。」
迷うなぁ。
カナは酷く真剣にスマホに向かって呟く。


え?へそ?肩出し?
紺襟?グレー??


プライバシーの侵害ごめん。
心で謝りつつカナの画面を覗いたボクは。


「迷うなぁあぁぁ!!」

叫んだ。
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