魔力値1の私が大賢者(仮)を目指すまで

ひーにゃん

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第二章

23『食料品店を襲うゾ!』

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その夜の夕餉は素晴らしかった。

 最初に出されたのは素朴な味の野菜スープ。
 薫製肉で出汁を取って、ざく切りのキャベツや玉ねぎが入っている “ 食べる ”スープだ。

 サラダはシンプルなトマトのサラダ。
 ドレッシングの代わりに刻んだきゅうりのピクルスが散らしてある。

 メインの肉料理は、アンナリーナが提供したトサカ鳥のモモ肉を使ったチキンステーキ。
 皮がパリパリになるように焼かれて、肉自体はジューシー、味付けは塩と胡椒で、特に胡椒が加わるとここまで違うのかと思うほど、美味だ。

 そしてもう一つのメインと言えるのがアンナリーナの見たことのない料理だった。
 それは、深めの皿の三分の一を占めるマッシュポテトと、細かく刻んだキノコとアスパラガスを軽く炒めたもの。
 それに黄身がトロトロの半熟玉子がのっている。
 女将が仕上げに旨香茸の薄切りをかけて一気に混ぜていく。
 はっきり言って見た目はあまりよろしくないが、その味は絶品だった。
 それは、普段は肉類しか食べないセトが口をつけるほど……と言えばわかるだろう。

 今夜は他に客がいなかったため、食事を共にしていた女将と改めて話してみて、今までは気にしていなかった事が色々わかってきた。
 雑貨屋と鍛冶屋に時間を取られ今まで一度も行った事のなかった食料品店の主人も、アンナリーナの来訪を楽しみにしているという事。
 行商人が来なくて、買い取ってもらえるはずのものがだぶついて、困っている農家が多いこと。
 これと言って産業のない村だが、人口が少ない事と実りの多い森が隣接しているので十分暮らしていける事などだ。

 食後、まったりとお茶を……アンナリーナのアイテムバッグから取り出したカモミールのハーブティーを飲み、とりとめない話で盛り上がっているところに、勝手口の方から挨拶の声が聞こえてきて見慣れない男が入ってきた。

「なんだか急ぎのようだから持ってきたぞ! おっと、お客さんがいたのか」

「リーナ、この人がさっき言ってた食料品店の主人、デニスだよ」

「こんばんは、はじめまして。
 明日、お邪魔するつもりでいたんですよ」

 この辺りでは珍しい、獣人(ヒトガタに耳と尻尾が付いている狐の)で、左右に尻尾が揺れている。

「俺はデニスだ。
 嬢ちゃん、歓迎するぜ!」

 このあとアンナリーナは、デニスにあるものを注文してから部屋に引き上げていった。


 翌日は朝から忙しかった。
 まず、デニスの食料品店に向かい、品揃えを確認する。
 ここも、アンナリーナにとってはある意味パラダイスで、当然彼女は自重しない。

「村の人の買い物に影響ない形で、売って頂けるものはなるべく購入したい」

 このアンナリーナの言葉に、デニスは頑張った。
 村の家のどこに何が過剰備蓄されているか、すべて把握しているデニスが、アンナリーナに確認を取りながら使いを走らせていく。
 例のイメヒメ芋も大籠2つ分ほど買うことが出来て、ご機嫌だ。
 ちなみにこの芋、見た目は地球の海老芋(里芋の一種)に似ているがでんぷん質がずっと多い。スープにして美味しく頂けるのはこのおかげだろう。

 キヌアを買えたのも大きい。
 これをとろみのあるスープに入れるのがアンナリーナの好みだ。
 サラダに使うのもいい。
 そして、今回の買い物で最大の収穫は【アボカド擬き】を手に入れたことだ。これは、これからが旬の果実でまだ数は少ないが、前世のアンナリーナの大好物だった。

「これでエビがあれば……」

 涎を垂らさんばかりの囁きが聞こえだのだろう、デニスが夕方には漁から戻るだろうからと慰めてくれたのだが、アンナリーナは決心した。

 エビといい、アボカド擬きといい、最高な腕の持ち主の料理人といい、この村は魅力的すぎる。
 ここに、昨夜憶えたばかりの【転移魔法】の転移位置指定を設置する!
 これは彼女の中で決定事項だ。

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