44 / 577
第二章
23『食料品店を襲うゾ!』
しおりを挟む
その夜の夕餉は素晴らしかった。
最初に出されたのは素朴な味の野菜スープ。
薫製肉で出汁を取って、ざく切りのキャベツや玉ねぎが入っている “ 食べる ”スープだ。
サラダはシンプルなトマトのサラダ。
ドレッシングの代わりに刻んだきゅうりのピクルスが散らしてある。
メインの肉料理は、アンナリーナが提供したトサカ鳥のモモ肉を使ったチキンステーキ。
皮がパリパリになるように焼かれて、肉自体はジューシー、味付けは塩と胡椒で、特に胡椒が加わるとここまで違うのかと思うほど、美味だ。
そしてもう一つのメインと言えるのがアンナリーナの見たことのない料理だった。
それは、深めの皿の三分の一を占めるマッシュポテトと、細かく刻んだキノコとアスパラガスを軽く炒めたもの。
それに黄身がトロトロの半熟玉子がのっている。
女将が仕上げに旨香茸の薄切りをかけて一気に混ぜていく。
はっきり言って見た目はあまりよろしくないが、その味は絶品だった。
それは、普段は肉類しか食べないセトが口をつけるほど……と言えばわかるだろう。
今夜は他に客がいなかったため、食事を共にしていた女将と改めて話してみて、今までは気にしていなかった事が色々わかってきた。
雑貨屋と鍛冶屋に時間を取られ今まで一度も行った事のなかった食料品店の主人も、アンナリーナの来訪を楽しみにしているという事。
行商人が来なくて、買い取ってもらえるはずのものがだぶついて、困っている農家が多いこと。
これと言って産業のない村だが、人口が少ない事と実りの多い森が隣接しているので十分暮らしていける事などだ。
食後、まったりとお茶を……アンナリーナのアイテムバッグから取り出したカモミールのハーブティーを飲み、とりとめない話で盛り上がっているところに、勝手口の方から挨拶の声が聞こえてきて見慣れない男が入ってきた。
「なんだか急ぎのようだから持ってきたぞ! おっと、お客さんがいたのか」
「リーナ、この人がさっき言ってた食料品店の主人、デニスだよ」
「こんばんは、はじめまして。
明日、お邪魔するつもりでいたんですよ」
この辺りでは珍しい、獣人(ヒトガタに耳と尻尾が付いている狐の)で、左右に尻尾が揺れている。
「俺はデニスだ。
嬢ちゃん、歓迎するぜ!」
このあとアンナリーナは、デニスにあるものを注文してから部屋に引き上げていった。
翌日は朝から忙しかった。
まず、デニスの食料品店に向かい、品揃えを確認する。
ここも、アンナリーナにとってはある意味パラダイスで、当然彼女は自重しない。
「村の人の買い物に影響ない形で、売って頂けるものはなるべく購入したい」
このアンナリーナの言葉に、デニスは頑張った。
村の家のどこに何が過剰備蓄されているか、すべて把握しているデニスが、アンナリーナに確認を取りながら使いを走らせていく。
例のイメヒメ芋も大籠2つ分ほど買うことが出来て、ご機嫌だ。
ちなみにこの芋、見た目は地球の海老芋(里芋の一種)に似ているがでんぷん質がずっと多い。スープにして美味しく頂けるのはこのおかげだろう。
キヌアを買えたのも大きい。
これをとろみのあるスープに入れるのがアンナリーナの好みだ。
サラダに使うのもいい。
そして、今回の買い物で最大の収穫は【アボカド擬き】を手に入れたことだ。これは、これからが旬の果実でまだ数は少ないが、前世のアンナリーナの大好物だった。
「これでエビがあれば……」
涎を垂らさんばかりの囁きが聞こえだのだろう、デニスが夕方には漁から戻るだろうからと慰めてくれたのだが、アンナリーナは決心した。
エビといい、アボカド擬きといい、最高な腕の持ち主の料理人といい、この村は魅力的すぎる。
ここに、昨夜憶えたばかりの【転移魔法】の転移位置指定を設置する!
これは彼女の中で決定事項だ。
最初に出されたのは素朴な味の野菜スープ。
薫製肉で出汁を取って、ざく切りのキャベツや玉ねぎが入っている “ 食べる ”スープだ。
サラダはシンプルなトマトのサラダ。
ドレッシングの代わりに刻んだきゅうりのピクルスが散らしてある。
メインの肉料理は、アンナリーナが提供したトサカ鳥のモモ肉を使ったチキンステーキ。
皮がパリパリになるように焼かれて、肉自体はジューシー、味付けは塩と胡椒で、特に胡椒が加わるとここまで違うのかと思うほど、美味だ。
そしてもう一つのメインと言えるのがアンナリーナの見たことのない料理だった。
それは、深めの皿の三分の一を占めるマッシュポテトと、細かく刻んだキノコとアスパラガスを軽く炒めたもの。
それに黄身がトロトロの半熟玉子がのっている。
女将が仕上げに旨香茸の薄切りをかけて一気に混ぜていく。
はっきり言って見た目はあまりよろしくないが、その味は絶品だった。
それは、普段は肉類しか食べないセトが口をつけるほど……と言えばわかるだろう。
今夜は他に客がいなかったため、食事を共にしていた女将と改めて話してみて、今までは気にしていなかった事が色々わかってきた。
雑貨屋と鍛冶屋に時間を取られ今まで一度も行った事のなかった食料品店の主人も、アンナリーナの来訪を楽しみにしているという事。
行商人が来なくて、買い取ってもらえるはずのものがだぶついて、困っている農家が多いこと。
これと言って産業のない村だが、人口が少ない事と実りの多い森が隣接しているので十分暮らしていける事などだ。
食後、まったりとお茶を……アンナリーナのアイテムバッグから取り出したカモミールのハーブティーを飲み、とりとめない話で盛り上がっているところに、勝手口の方から挨拶の声が聞こえてきて見慣れない男が入ってきた。
「なんだか急ぎのようだから持ってきたぞ! おっと、お客さんがいたのか」
「リーナ、この人がさっき言ってた食料品店の主人、デニスだよ」
「こんばんは、はじめまして。
明日、お邪魔するつもりでいたんですよ」
この辺りでは珍しい、獣人(ヒトガタに耳と尻尾が付いている狐の)で、左右に尻尾が揺れている。
「俺はデニスだ。
嬢ちゃん、歓迎するぜ!」
このあとアンナリーナは、デニスにあるものを注文してから部屋に引き上げていった。
翌日は朝から忙しかった。
まず、デニスの食料品店に向かい、品揃えを確認する。
ここも、アンナリーナにとってはある意味パラダイスで、当然彼女は自重しない。
「村の人の買い物に影響ない形で、売って頂けるものはなるべく購入したい」
このアンナリーナの言葉に、デニスは頑張った。
村の家のどこに何が過剰備蓄されているか、すべて把握しているデニスが、アンナリーナに確認を取りながら使いを走らせていく。
例のイメヒメ芋も大籠2つ分ほど買うことが出来て、ご機嫌だ。
ちなみにこの芋、見た目は地球の海老芋(里芋の一種)に似ているがでんぷん質がずっと多い。スープにして美味しく頂けるのはこのおかげだろう。
キヌアを買えたのも大きい。
これをとろみのあるスープに入れるのがアンナリーナの好みだ。
サラダに使うのもいい。
そして、今回の買い物で最大の収穫は【アボカド擬き】を手に入れたことだ。これは、これからが旬の果実でまだ数は少ないが、前世のアンナリーナの大好物だった。
「これでエビがあれば……」
涎を垂らさんばかりの囁きが聞こえだのだろう、デニスが夕方には漁から戻るだろうからと慰めてくれたのだが、アンナリーナは決心した。
エビといい、アボカド擬きといい、最高な腕の持ち主の料理人といい、この村は魅力的すぎる。
ここに、昨夜憶えたばかりの【転移魔法】の転移位置指定を設置する!
これは彼女の中で決定事項だ。
16
あなたにおすすめの小説
毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。
克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。
不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます
天田れおぽん
ファンタジー
ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。
ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。
サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める――――
※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。
罠にはめられた公爵令嬢~今度は私が報復する番です
結城芙由奈@コミカライズ連載中
ファンタジー
【私と私の家族の命を奪ったのは一体誰?】
私には婚約中の王子がいた。
ある夜のこと、内密で王子から城に呼び出されると、彼は見知らぬ女性と共に私を待ち受けていた。
そして突然告げられた一方的な婚約破棄。しかし二人の婚約は政略的なものであり、とてもでは無いが受け入れられるものではなかった。そこで婚約破棄の件は持ち帰らせてもらうことにしたその帰り道。突然馬車が襲われ、逃げる途中で私は滝に落下してしまう。
次に目覚めた場所は粗末な小屋の中で、私を助けたという青年が側にいた。そして彼の話で私は驚愕の事実を知ることになる。
目覚めた世界は10年後であり、家族は反逆罪で全員処刑されていた。更に驚くべきことに蘇った身体は全く別人の女性であった。
名前も素性も分からないこの身体で、自分と家族の命を奪った相手に必ず報復することに私は決めた――。
※他サイトでも投稿中
婚約者を姉に奪われ、婚約破棄されたエリーゼは、王子殿下に国外追放されて捨てられた先は、なんと魔獣がいる森。そこから大逆転するしかない?怒りの
山田 バルス
ファンタジー
王宮の広間は、冷え切った空気に満ちていた。
玉座の前にひとり、少女が|跪い《ひざまず》ていた。
エリーゼ=アルセリア。
目の前に立つのは、王国第一王子、シャルル=レインハルト。
「─エリーゼ=アルセリア。貴様との婚約は、ここに破棄する」
「……なぜ、ですか……?」
声が震える。
彼女の問いに、王子は冷然と答えた。
「貴様が、カリーナ嬢をいじめたからだ」
「そ、そんな……! 私が、姉様を、いじめた……?」
「カリーナ嬢からすべて聞いている。お前は陰湿な手段で彼女を苦しめ、王家の威信をも|貶めた《おとし》さらに、王家に対する謀反を企てているとか」
広間にざわめきが広がる。
──すべて、仕組まれていたのだ。
「私は、姉様にも王家にも……そんなこと……していません……!」
必死に訴えるエリーゼの声は、虚しく広間に消えた。
「黙れ!」
シャルルの一喝が、広間に響き渡る。
「貴様のような下劣な女を、王家に迎え入れるわけにはいかぬ」
広間は、再び深い静寂に沈んだ。
「よって、貴様との婚約は破棄。さらに──」
王子は、無慈悲に言葉を重ねた。
「国外追放を命じる」
その宣告に、エリーゼの膝が崩れた。
「そ、そんな……!」
桃色の髪が広間に広がる。
必死にすがろうとするも、誰も助けようとはしなかった。
「王の不在時に|謀反《むほん》を企てる不届き者など不要。王国のためにもな」
シャルルの隣で、カリーナがくすりと笑った。
まるで、エリーゼの絶望を甘美な蜜のように味わうかのように。
なぜ。
なぜ、こんなことに──。
エリーゼは、震える指で自らの胸を掴む。
彼女はただ、幼い頃から姉に憧れ、姉に尽くし、姉を支えようとしていただけだったのに。
それが裏切りで返され、今、すべてを失おうとしている。
兵士たちが進み出る。
無骨な手で、エリーゼの両手を後ろ手に縛り上げた。
「離して、ください……っ」
必死に抵抗するも、力は弱い。。
誰も助けない。エリーゼは、見た。
カリーナが、微笑みながらシャルルに腕を絡め、勝者の顔でこちらを見下ろしているのを。
──すべては、最初から、こうなるよう仕組まれていたのだ。
重い扉が開かれる。
リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?
あくの
ファンタジー
15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。
加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。
また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。
長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。
リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!
留学してたら、愚昧がやらかした件。
庭にハニワ
ファンタジー
バカだアホだ、と思っちゃいたが、本当に愚かしい妹。老害と化した祖父母に甘やかし放題されて、聖女気取りで日々暮らしてるらしい。どうしてくれよう……。
R−15は基本です。
ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします
未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢
十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう
好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ
傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する
今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる