魔力値1の私が大賢者(仮)を目指すまで

ひーにゃん

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第二章

43『旅の道連れとお騒がせ女』

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鉱山の町デラガルサからやって来た客たち……男性4人、女性2人の6人は今、自分たちが2泊した宿屋の玄関ホールに集まっていた。
 彼ら、測量士のグスタフ、元鉱夫のキンキとジンガ、キャサリンとロバート夫妻、老婦人のマチルダ、といった面々は今回の事情を詳しく説明されていて、この中には血の気の多いものもおらず、粛々と馬車を待っていた。

「お待たせしました。
 どうぞ、お乗りください」

 ザルバがにこやかに ドアを開けて入って来た。
 宿賃は昨日のうちに支払い済みだ。
 結局、2泊分を組合が負担する事になり、金貨4枚と銀貨8枚、ザルバが立て替えている。

「おはようございます」

 彼らが外に出て一番に目に入って来たのは、どう見ても10代前半の小さな少女だった。

「この嬢ちゃんはリーナ。
 ここから領都まで一緒に行く事になりました。
 知人の縁者で、まだ幼いのでこの旅の間、私が後見して行きます。
 ちゃんと正規の運賃をいただいたお客様なので、よろしくお願いします」

「リーナです。よろしくお願いします」

 ペコリと頭を下げて、そしてさっさと乗り込んでいった。
 そして御者台のちょうど後ろ、普段は護衛の一人が座る所に陣取った。

 乗客たちも乗り込んで来て各自座席の下の、ベンチの蓋に当たる所を開けて荷物をしまっていく。
 かなりの量の荷物を持っている、元鉱夫のキンキとジンガはフランクに手伝ってもらいながら外の最後部にある収納箱にしまっている。
 それでも大きな背負い袋を馬車内に持ち込んで来た。

 アンナリーナはすでにカモフラージュ用の背負い袋をしまい終えている。
 座る直前に蓋を開けて薄いクッション様のものを取り出した。
 実はこの馬車の旅で一番に問題になるのは、座り心地だ。
 ザルバの馬車には備え付けの毛皮や毛布もあるが、長時間乗る場合自分で用意するのが普通だった。
 特に女性は。

 アンナリーナは異世界小説の知識で知っていたため【異世界買物】でドーナツクッションを買い、カバーを縫ってその形状を隠し、持ち込んでいた。
 これさえあれば、楽ちんである。


「この後、ギルド出張所に寄って後続の馬車と合流します。
 もし、何か買い物があればここからしばらくは手に入らないのでよろしくお願いします」

「ねえ、どういう事?」

 ザルバの話を聞いて、アンナリーナが小声でこっそりとフランクに聞く。

「乗り合い馬車が出発するときには大概、臨時の売店ができるんだよ。
 ここで水袋や干し肉、堅パン、今日の昼や夜の分の弁当を買ったりするんだ」

「ほう、ほう」

「領都まで、何事もなければ7日。
 雨が強かったりしたらもう少し延びる。
 休憩や夜営用の中継地はあるが、ここから先には領都までもう村はないんだ。だからしっかり準備しなきゃならない」

「なるほどー」

「全然実感こもってないじゃないか。まあ、リーナだからしょうがないか」

 旅の準備など関係なしである。
 アンナリーナにとって日常となんら変わりないのだ。
 その思いはすでに今日を除く6日間の献立に向かっていた。

「なあ、昼食はなに?」

「内緒~」


 程なく到着したギルド出張所兼宿屋はドアを開け放って、その内外の出店が声を上げていた。

「旅のお方、パンの用意はお済みですか?
 旅の初めには、日持ちする柔らかいパンもございますよ」

「湯を注ぐだけで戻る乾燥野菜はいかが?」

 そして見知った、イゴルのところの女将の姿もある。
 あとでもし、イゴルのところの商品が売れ残っていたら、全部買い上げても良いと思う。
 アンナリーナは軽く手を振っておいた。

 見るとは無しに見て回る。
 フランクを従え、ホールの中をぶらぶらしていると、板敷きの階段をヒールが踏む音が聞こえてきた。
 反射的に音の聞こえた方を見上げて、思わず呻いたアンナリーナを責めるものは誰もいないだろう。

「げ……」

 けばけばしく、派手派手しい、品のない、綺麗な女。
 趣味の悪いドレスはとても旅装だとは思えない。

『なるほど、これが諸悪の根源か』

 ふむふむと納得して、関わり合いになりたくないアンナリーナはフランクを引っ張ってその場を離れようとした。
 その時。

「そこのあなた、ありがたく思いなさい。この私の身の回りの世話に使ってあげてよ」

 趣味の悪い女が何か言っている。
 だがアンナリーナは元からその存在をシャットアウトしているので無視だ。
 しかし、その態度が気に入らない女が再度喚いていた。

「ちょっと、そこのあなた、あなたよ、小さな女の子。
 小間使いに使ってやるって言ってるのよ!」

 アンナリーナのなかで何かがプチリと切れた音がした。

「はあ?何言ってるの?
 頭煮えてるんじゃない?
 なんで私があんたなんかに使われなきゃいけないのよ、おばさん」

 この女、ザルバも言っていたが鉱山町の娼館の売れっ子娼婦だった。
 最近年季が明けて、今回は領都に引っ越す旅なのだが、実は受け入れ先は決まっていない。
 普通なら身請けする男の1人や2人居そうなものなのだが、見かけは良くても性格に難がある、という事なのだろう。

 睨み合う2人の間にザルバが慌てて飛び込んできた。

「ちょっとあんた、やめてくれ!
 俺は組合から今回の事を任されているザルバだ。
 だがな、あんたのところの馬車を引き受けたわけじゃなく、後ろを付いてくる事を認めただけだ。
 だからこれ以上、面倒をかけないでくれ」

「そんなの、話が違うわ」

「どんな話なのか知らないが、俺が組合から頼まれたのはそれだけだ。
 だから金輪際、うちの客に接触しないでくれ」

 フランクがその背に庇うようにアンナリーナを下がらせた。
 そのまま外へと向かう。

「ひとつだけ忠告しといてやろう」

「いったい何だって言うのよ!」

 最早、ヒステリックに喚くばかりの女が、次の言葉に色をなくす。

「あんたらの人数分の水や食料、準備出来てるのか?
 俺らは一切手助けしないからそのつもりで」

 女は悲鳴のような叫びをあげて、飛び出していった。


 そうこうしていると向こうから一台の箱馬車がやって来た。
 それはなんと言うか……馬車の上にてんこ盛り荷物を積んでいて、大丈夫かと思うくらいだ。
 護衛の2人は馬に乗って続いている。

 その御者と何やら一言二言かわして、顔色を変えた御者と女はまた宿の前に戻ってきたのだ。

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