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第二章
77『フランクとの晩ご飯』
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マリアの容態は随分改善していた。
熱は下がり、扁桃腺の腫れもほとんど引いていて食欲もあるようだ。
そして反対に心配されてしまって苦笑を隠せない。
照れ隠しにゼリーを出して誤魔化して、今日調合していたハーブ茶の話で盛り上がっているところにジャマーが入ってきた。
「薬師殿、お待たせしたな」
話し合いは案外あっさりとかたがついたようだ。
……やはり山賊に身を落としていようと、真っ当な暮らしに憧れる。
もしも、そのチャンスがあるのなら挑戦してみたいと声が上がったそうだ。
「今なら、デラガルサでどさくさに紛れて荒稼ぎ出来ると思います。
そのあとは……さすがにこの国で派手に動くと、変に勘ぐるものが出てくるだろうから、国は移らなきゃならないだろうけど」
「そのへんは俺たちも話し合った。
明日、朝一番に監視者をデラガルサにやる。
ダンジョン化の兆しが見えたらすぐに動けるようにな」
「そう、じゃあ私もポーション作りに取りかからなきゃ。
もちろん、マリアさんの薬もね」
「明日、薬師殿と一緒に来た連中からデラガルサについて聞き取りをする予定だ」
「うん、いいアイデアよ。
それと、ここには薬草やポーション瓶はありますか?
それよりも、こんな商売やってるんだからアイテムボックスは持ってますよね?」
「アイテムボックス?あるにはあるが?」
「じゃあ、ポーションの量だけど、どのくらい作ったらいいかしら。
悪いけど、私はまったく見当つかないの」
このあと2人は、明日また話をする事にしてアンナリーナは部屋をあとにした。
「フランク、晩ご飯食べた?
まだなら一緒に食べようよ」
来た時には姿が見えなかったフランクが、ちゃんとドアの前で待っていた。
アンナリーナの誘いにわかりやすく喜びを露わにする。
「食べる!食べる! なあ、今夜は何だ?」
「トサカ鳥のトマトソース煮。
今日は忙しかったから他は大したもの作ってないけど量だけはたくさんあるから勘弁して?」
もちろん文句などない。
フランクは今まで、具の少ないスープと硬いパン……という食事が当たり前だった。
そんな彼にとって今の食生活は夢のようなものなのだ。
「なんか簡単なものを作るから座ってて」
そう言い置いて、アンナリーナはドアの向こうに消えていく。
フランクは剣を剣帯ごと外して椅子に掛けた。
皮の上着も脱いでリラックスする。
そして考えた。
こうしてアンナリーナと、まるで家族のように一緒に食事を摂るようになって何日たつのだろうか、と。
自分でも餌付けされてしまっている自覚はある。
このままずっと一緒にいたいと思っていることも確かだ。
そして、まだ少女でしかないアンナリーナに寄せる思慕は抑えられないところまできていた。
「おっ待たせ~
はいはい、受け取って!」
ドアから身を乗り出してフランクを呼ぶアンナリーナの手の、大きな深皿に山盛りの鳥肉が入っている。
それと今作ったのだろう料理は薄い緑色していた。
「何だこれ?」
「ショートパスタのアボガド、明太子ソース温泉玉子のせ」
テーブルに着いたアンナリーナが、食器や水差し、パンを取り出し、温泉玉子の入った籠も出した。
取り皿にアボガドと5㎝くらいのきしめん状のパスタを取り分け、上から温泉玉子を割り入れた。
明太子のソースは【異世界買物】で購入した既製品だ。
「はい、食べてみて? 美味しいよ?」
アボガドの濃厚な風味と、幾分濃い目の明太子ソース、それにトロトロの黄身が絡まって……
「美味い!!」
毎回驚かされる、アンナリーナの料理。実は前世の知識と【異世界買物】のおかげなのだが、フランクはこれが薬師の引き出しの多さだと思っている。
まるで魔法のような料理はまた、心を捉えてしまう。
「トマト煮も食べてみて」
缶詰のホールトマトを使ったトマトソース煮は完熟トマトのコクと甘みが引き立っていて、一度胡椒をきかせて焼き上げたトサカ鳥もほろりと肉がはがれるほど柔らかい。
うっとりとしながら咀嚼するフランクを見て、アンナリーナが笑っている。
ツリーハウスに戻ったアンナリーナは、マリアのための解熱剤を作った。
これは一番初期に老薬師から習ったレシピだ。
幸い材料は十分にあったので60包ほど完成させる事が出来た。
「どうしてあんなに混ぜ物を、それも常用すれば毒になるものを入れたのかしら」
その答えは簡単だ。
いつの頃からかわからないが、素材を集める手間と、高価なのを嫌って、誰かがレシピを書き換えたのだ。
同じように書き換えられた風邪薬を本来のレシピで作り瓶に収めていく。
最後にプルーンのジャムを作り、リビングに戻ってきた。
熱は下がり、扁桃腺の腫れもほとんど引いていて食欲もあるようだ。
そして反対に心配されてしまって苦笑を隠せない。
照れ隠しにゼリーを出して誤魔化して、今日調合していたハーブ茶の話で盛り上がっているところにジャマーが入ってきた。
「薬師殿、お待たせしたな」
話し合いは案外あっさりとかたがついたようだ。
……やはり山賊に身を落としていようと、真っ当な暮らしに憧れる。
もしも、そのチャンスがあるのなら挑戦してみたいと声が上がったそうだ。
「今なら、デラガルサでどさくさに紛れて荒稼ぎ出来ると思います。
そのあとは……さすがにこの国で派手に動くと、変に勘ぐるものが出てくるだろうから、国は移らなきゃならないだろうけど」
「そのへんは俺たちも話し合った。
明日、朝一番に監視者をデラガルサにやる。
ダンジョン化の兆しが見えたらすぐに動けるようにな」
「そう、じゃあ私もポーション作りに取りかからなきゃ。
もちろん、マリアさんの薬もね」
「明日、薬師殿と一緒に来た連中からデラガルサについて聞き取りをする予定だ」
「うん、いいアイデアよ。
それと、ここには薬草やポーション瓶はありますか?
それよりも、こんな商売やってるんだからアイテムボックスは持ってますよね?」
「アイテムボックス?あるにはあるが?」
「じゃあ、ポーションの量だけど、どのくらい作ったらいいかしら。
悪いけど、私はまったく見当つかないの」
このあと2人は、明日また話をする事にしてアンナリーナは部屋をあとにした。
「フランク、晩ご飯食べた?
まだなら一緒に食べようよ」
来た時には姿が見えなかったフランクが、ちゃんとドアの前で待っていた。
アンナリーナの誘いにわかりやすく喜びを露わにする。
「食べる!食べる! なあ、今夜は何だ?」
「トサカ鳥のトマトソース煮。
今日は忙しかったから他は大したもの作ってないけど量だけはたくさんあるから勘弁して?」
もちろん文句などない。
フランクは今まで、具の少ないスープと硬いパン……という食事が当たり前だった。
そんな彼にとって今の食生活は夢のようなものなのだ。
「なんか簡単なものを作るから座ってて」
そう言い置いて、アンナリーナはドアの向こうに消えていく。
フランクは剣を剣帯ごと外して椅子に掛けた。
皮の上着も脱いでリラックスする。
そして考えた。
こうしてアンナリーナと、まるで家族のように一緒に食事を摂るようになって何日たつのだろうか、と。
自分でも餌付けされてしまっている自覚はある。
このままずっと一緒にいたいと思っていることも確かだ。
そして、まだ少女でしかないアンナリーナに寄せる思慕は抑えられないところまできていた。
「おっ待たせ~
はいはい、受け取って!」
ドアから身を乗り出してフランクを呼ぶアンナリーナの手の、大きな深皿に山盛りの鳥肉が入っている。
それと今作ったのだろう料理は薄い緑色していた。
「何だこれ?」
「ショートパスタのアボガド、明太子ソース温泉玉子のせ」
テーブルに着いたアンナリーナが、食器や水差し、パンを取り出し、温泉玉子の入った籠も出した。
取り皿にアボガドと5㎝くらいのきしめん状のパスタを取り分け、上から温泉玉子を割り入れた。
明太子のソースは【異世界買物】で購入した既製品だ。
「はい、食べてみて? 美味しいよ?」
アボガドの濃厚な風味と、幾分濃い目の明太子ソース、それにトロトロの黄身が絡まって……
「美味い!!」
毎回驚かされる、アンナリーナの料理。実は前世の知識と【異世界買物】のおかげなのだが、フランクはこれが薬師の引き出しの多さだと思っている。
まるで魔法のような料理はまた、心を捉えてしまう。
「トマト煮も食べてみて」
缶詰のホールトマトを使ったトマトソース煮は完熟トマトのコクと甘みが引き立っていて、一度胡椒をきかせて焼き上げたトサカ鳥もほろりと肉がはがれるほど柔らかい。
うっとりとしながら咀嚼するフランクを見て、アンナリーナが笑っている。
ツリーハウスに戻ったアンナリーナは、マリアのための解熱剤を作った。
これは一番初期に老薬師から習ったレシピだ。
幸い材料は十分にあったので60包ほど完成させる事が出来た。
「どうしてあんなに混ぜ物を、それも常用すれば毒になるものを入れたのかしら」
その答えは簡単だ。
いつの頃からかわからないが、素材を集める手間と、高価なのを嫌って、誰かがレシピを書き換えたのだ。
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最後にプルーンのジャムを作り、リビングに戻ってきた。
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