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第三章
45『兵士のお願い』
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デラガルサ・ダンジョンの第9階層、アンナリーナによる通称 “ ハンバーグ村 ”
今までアンナリーナは、ハンバーグの材料もといオークやミノタウロスにしか興味を示さずにいたが、今回はこの9階層すべてに目を凝らしていた。
この階層は今までの階層と違って格段に広大だった。
ハンバーグ村だけでなくそれを取り巻く森林や草原まである、異例ずくめの階層だ。
「主人様は本当に、興味のあるものにしか目がいかないのですね」
ナビがしみじみ言うように、今までも表示されていたはずの、森や草原での魔獣や素材に無関心だったアンナリーナが、今日初めて目を向けた。
「えへへ……
浅い階層でも、ちょくちょく採取してたけど、ここは品質がいいよね。
やっぱり魔力の濃い場所の素材は効力が上がるのかな」
道端に生えていたオメガ草を手にとって【鑑定】する【最良】判定される。
普通の森では滅多に見ない【最良】で作った回復薬やポーションは効能が上がるのだ。
「魔獣の森の素材も価値が高いですものね。
このダンジョンも、もっと下の階層が楽しみですね」
事と次第では本気で別宅を置こうかと思うアンナリーナだった。
ダンジョンに潜っていても、アンナリーナは快適な生活を送ることが出来る。
だがそれはアンナリーナだからであって、それ以外のものは少しづつ攻略を繰り返し、下層に臨んで行くのだ。
2日間、8階層にテントを置き、9階層と行ったり来たりを繰り返して、ふと思いつく。
「私、ハンネケイナを出て何日経ったかな?」
「8日目、でしょうか。少し長いですかね?」
「そろそろ帰らないと熊さんたちがうるさいかな?
中級Cポーションはいっぱい出来たけど」
「どうなさいます?」
「うん、ちょっと帰ってみようか」
ダンジョンの入り口で、監視役の兵士に挨拶して出て行こうとした時、1人の兵士から声をかけられた。
「薬師殿、ちょっとよろしいか?」
ダンジョン入り口の側に作られた詰所に案内され、椅子を勧められた。
アンナリーナは、いつものようにアイテムバッグから茶器を取り出し、お茶を淹れる。
先日、たくさん焼いたクッキーを茶菓子に、お茶の時間だ。
「実は、ある冒険者パーティが行方不明になっているんです。
何か、思い出される事はありませんか?」
「ひょっとして6人パーティ?
治癒師の人がいる」
「それです、お会いになりましたか?」
「会ったけど……もう3日経ってるんじゃないかな。
ほら、前回私がこのダンジョンから出てきた時、あの前夜に少しお話したけど」
「そうですか」
兵士は黙り込んでしまった。
「あれからまったく上がってきてないのなら……ちょっとヤバいかも、ですね。あの人たち、もうあまり装備に余裕なかったみたいだし、怪我人も抱えてましたしね」
「会ったのは何階層でしたか?」
「8階層ですね。
私が起き出してきた時はもう姿が見えなかったので、上に戻ったのかと思ってたんですけど、下に行ったのでしょうか?」
兵士は考え込んでいる。
「翌日ここに戻ってきて、9階層まで行った時は見かけなかったんですけど、もっと下まで行ったのかしら」
「薬師殿……9階層まで行ってらっしゃるのですか。
……薬師殿、誠に虫の良い願いだと思っておりますが、どうか我々に同行願えないでしょうか?」
まさかの懇願である。
「結構、強行軍ですよ?
付いてこれます?」
彼らは、アンナリーナがブラックリザードを連れているのを知っているので驚かない。
「よろしいのですか?」
「乗りかかった舟でしょ、無視できないじゃん」
兵士たちの準備を待って、アンナリーナは再びダンジョンに潜っていった。
今までアンナリーナは、ハンバーグの材料もといオークやミノタウロスにしか興味を示さずにいたが、今回はこの9階層すべてに目を凝らしていた。
この階層は今までの階層と違って格段に広大だった。
ハンバーグ村だけでなくそれを取り巻く森林や草原まである、異例ずくめの階層だ。
「主人様は本当に、興味のあるものにしか目がいかないのですね」
ナビがしみじみ言うように、今までも表示されていたはずの、森や草原での魔獣や素材に無関心だったアンナリーナが、今日初めて目を向けた。
「えへへ……
浅い階層でも、ちょくちょく採取してたけど、ここは品質がいいよね。
やっぱり魔力の濃い場所の素材は効力が上がるのかな」
道端に生えていたオメガ草を手にとって【鑑定】する【最良】判定される。
普通の森では滅多に見ない【最良】で作った回復薬やポーションは効能が上がるのだ。
「魔獣の森の素材も価値が高いですものね。
このダンジョンも、もっと下の階層が楽しみですね」
事と次第では本気で別宅を置こうかと思うアンナリーナだった。
ダンジョンに潜っていても、アンナリーナは快適な生活を送ることが出来る。
だがそれはアンナリーナだからであって、それ以外のものは少しづつ攻略を繰り返し、下層に臨んで行くのだ。
2日間、8階層にテントを置き、9階層と行ったり来たりを繰り返して、ふと思いつく。
「私、ハンネケイナを出て何日経ったかな?」
「8日目、でしょうか。少し長いですかね?」
「そろそろ帰らないと熊さんたちがうるさいかな?
中級Cポーションはいっぱい出来たけど」
「どうなさいます?」
「うん、ちょっと帰ってみようか」
ダンジョンの入り口で、監視役の兵士に挨拶して出て行こうとした時、1人の兵士から声をかけられた。
「薬師殿、ちょっとよろしいか?」
ダンジョン入り口の側に作られた詰所に案内され、椅子を勧められた。
アンナリーナは、いつものようにアイテムバッグから茶器を取り出し、お茶を淹れる。
先日、たくさん焼いたクッキーを茶菓子に、お茶の時間だ。
「実は、ある冒険者パーティが行方不明になっているんです。
何か、思い出される事はありませんか?」
「ひょっとして6人パーティ?
治癒師の人がいる」
「それです、お会いになりましたか?」
「会ったけど……もう3日経ってるんじゃないかな。
ほら、前回私がこのダンジョンから出てきた時、あの前夜に少しお話したけど」
「そうですか」
兵士は黙り込んでしまった。
「あれからまったく上がってきてないのなら……ちょっとヤバいかも、ですね。あの人たち、もうあまり装備に余裕なかったみたいだし、怪我人も抱えてましたしね」
「会ったのは何階層でしたか?」
「8階層ですね。
私が起き出してきた時はもう姿が見えなかったので、上に戻ったのかと思ってたんですけど、下に行ったのでしょうか?」
兵士は考え込んでいる。
「翌日ここに戻ってきて、9階層まで行った時は見かけなかったんですけど、もっと下まで行ったのかしら」
「薬師殿……9階層まで行ってらっしゃるのですか。
……薬師殿、誠に虫の良い願いだと思っておりますが、どうか我々に同行願えないでしょうか?」
まさかの懇願である。
「結構、強行軍ですよ?
付いてこれます?」
彼らは、アンナリーナがブラックリザードを連れているのを知っているので驚かない。
「よろしいのですか?」
「乗りかかった舟でしょ、無視できないじゃん」
兵士たちの準備を待って、アンナリーナは再びダンジョンに潜っていった。
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