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第三章

60『ハンバーグ村での死闘?』

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 常時展開の【防御】を破った!

 確かにその防御レベルは低いが、ヒトの一撃などは余裕で弾くはずの【防御】を破ってアンナリーナに傷をつけたのはおそらく【風魔法】系の衝撃波だろう。

 アンナリーナは【防御】を最高レベルまで上げ、結界をも纏う。
 そうしてから、ゆっくりと相手を観察した。

 ミノタウロス・ツァーリは今、得物の戦斧を軽々と振り回している。
 もしもアレが当たったとしても、結界にほころびはないだろうが用心に越したことはない。

「主人、俺が片づける」

 アンナリーナを庇うように立ち上がったセトがブレスを吐こうと口を開いた。

「待って! 出来るだけ無傷で手に入れたいの」

「無茶を言う。
 どうするつもりだ?」

「こうするつもりよっ!」


 ミノタウロス・ツァーリに率いられたオークナイトの戦斧やメイスが結界を叩く。
 そんな中、アンナリーナは結界を強化し、魔力を捏ねはじめた。

「もし、私が出来るだけやっても効果がなかったら、殺っちゃって!」

「了解! 主人も存分にやってくれ!」

「OK! いっくよー」


 結界内に膨大な魔力が充満していく。
 それだけでオークは立っていられず、次々と膝をついて、肩で息をし始める。
 ミノタウロス・ツァーリは初め、あたりを見回していたがその原因に気づいたのだろう、アンナリーナを睨みつけてくる。

「そんな顔、いつまでしてられるかしら……サファケイト!!」

 通常は、目に見えるものではない魔力の渦が、水色を纏って凄い勢いで収縮していく。
 限界まで張り詰めたそれが弾けた瞬間、ミノタウロス・ツァーリ以外はなぎ倒されるように、地に伏した。

 これでもまだ立っているのはさすがだったが、もう一波襲いかかった真空の渦にミノタウロス・ツァーリが咆哮をあげる。
 だが、吐き出し尽くした酸素を補給することはもう叶わずそのまま、まるで弁慶の立ち往生のように立ち尽くした。

「【血抜き】」

 念には念を入れて、生物として存在するためには欠かせない血液も奪い取って【鑑定】する。

 ミノタウロス・ツァーリ(王種) 死亡

「よっしゃ! やったー!!」

 結界を解き、ハンバーグ村に駆け込んだアンナリーナは、いつものように食材(オーク、ミノタウロス)とその得物を回収した。
 そして、仁王立ちしたままのミノタウロス・ツァーリの元にいき、うっとりと見上げる。



 ある意味機嫌よく、テオドールの部屋に戻ってきたアンナリーナは、狩りから帰ってきた彼らと鉢合わせした。

「あ、お帰り~」

 そんなアンナリーナを見つめて茫然していたテオドールが、その顔面に怒りを滲ませて近づいてくる。
 何を怒っているのかわからないアンナリーナ。
 ガッチリと脇を掴まれ、頬に優しく触れられる。

「どうしたんだ? これ」

 激情を胸に込めた、震える声。
 太い指が頬のある部分に触れると、ぬるりとする感触を感じる。

『あ、ヤバっ』

「おまえ、こんな怪我なんかして、一体っ!」

 興奮して言葉にならないテオドールが鬼神のような顔をしている。
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