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第三章
83『公爵の再来』
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今回のお話には個別の病気、症状、状況などに過度な表現、そしてそれに関しての批判などが出てきますが、これはすべて小説上のフィクションです。
気分が悪くなると思われた方はブラウザバックをお勧めします。
この件についての批判はお受けしませんのでよろしくお願いします。
エレアント公爵が学院に着いたのは、午前中ではあるが、昼に近い時間だった。
「これではまるで、昼時を狙って来たようだな」
付き従う従者にそう話しかけながら、女子寮に向かう。
本来、男性の立ち入りは禁止されているのだが、ツベルクローシス事件の余波は3日経っても収まることはなかった。未だに生家の使用人や、家族が訪れている者がほとんどだったのだ。
「【錬金薬師】様、お邪魔致します」
従者のノックに、まるでそこで待っていたかのようなアラーニェが応え、扉が開く。
「公爵様、ご足労いただきありがとうございます」
アラーニェの宮廷女官のような優雅な礼に公爵は目を細める。
「主人はすぐに参ります。
どうぞこちらでお待ち下さい」
先日も勧められたソファーに腰を降ろした公爵は、手早く用意されたハーブ茶に手を付ける。
「良い香りだ……これは一体何だね?」
「主人が、魔力の多い森で採取した薬草を煎じたものです。
疲労回復の効用があるのでございます」
香りを楽しみ、味を楽しむ。
ハーブ茶とは女子供が飲むものだと思っていたが、これからは自分も嗜んでみても良いと思っている。
「申し訳ございません、公爵様。
お待たせ致しました」
奥まった扉から姿を現したアンナリーナは公爵の前で略式の礼をした。
「今朝は調薬の機材を設えておりました。
本当にバタバタしていて、いつまでも落ち着きません」
「調薬?
薬師殿はここで調薬をなさるのか?」
「はい、ハンネケイナのギルドに卸さねばなりませんし、懇意にしている商家もあります」
「で、この部屋に調薬室を?」
「はい、学院の設備を使うことは出来ませんので。この部屋なら十分な部屋数がありましたので」
王侯貴族でもないものがこの部屋に入ったと聞いて憤慨しているものも多いと言う。
公爵としても、娘にこの部屋を使わせるのは無理だった。
「公爵様、もしよろしければ軽く昼食などいかがですか?」
「いただこう」
アンナリーナの前で、公爵がにっこりと笑った。
今日の昼食は、ショートパスタのボロネーゼをメインに、公爵であろうと初めて目にするだろう鳥の唐揚げや、豆と胡桃の香草マヨネーズ和え、ベビーリーフとスプラウトの柑橘ドレッシングなどだ。
「これはこれは……何とも美味そうな」
「どうぞ、ごゆっくりお召し上がり下さい」
公爵は、品良く盛り付けられた料理に舌鼓を打った。
そして食事は終わり、話は令嬢の件に移っていく。
「公爵様はご自分の立場とお嬢様、どちらに重きを置いておられますか?」
食後のお茶を楽しんでいるところに突然、話の種類が変わった。
「それは一体?」
「公爵様のお心によってはこれからのお話、ずいぶん辛いものになりましょう」
「それは娘サリアの事か?」
「はい、公爵様。
お嬢様はこの学院を卒業後、国王陛下の側室に上がられるとお聞きしましたが、それには問題があるのです」
「何と?」
「お嬢様にお子を孕む能力がありません」
公爵は絶句した。
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エレアント公爵が学院に着いたのは、午前中ではあるが、昼に近い時間だった。
「これではまるで、昼時を狙って来たようだな」
付き従う従者にそう話しかけながら、女子寮に向かう。
本来、男性の立ち入りは禁止されているのだが、ツベルクローシス事件の余波は3日経っても収まることはなかった。未だに生家の使用人や、家族が訪れている者がほとんどだったのだ。
「【錬金薬師】様、お邪魔致します」
従者のノックに、まるでそこで待っていたかのようなアラーニェが応え、扉が開く。
「公爵様、ご足労いただきありがとうございます」
アラーニェの宮廷女官のような優雅な礼に公爵は目を細める。
「主人はすぐに参ります。
どうぞこちらでお待ち下さい」
先日も勧められたソファーに腰を降ろした公爵は、手早く用意されたハーブ茶に手を付ける。
「良い香りだ……これは一体何だね?」
「主人が、魔力の多い森で採取した薬草を煎じたものです。
疲労回復の効用があるのでございます」
香りを楽しみ、味を楽しむ。
ハーブ茶とは女子供が飲むものだと思っていたが、これからは自分も嗜んでみても良いと思っている。
「申し訳ございません、公爵様。
お待たせ致しました」
奥まった扉から姿を現したアンナリーナは公爵の前で略式の礼をした。
「今朝は調薬の機材を設えておりました。
本当にバタバタしていて、いつまでも落ち着きません」
「調薬?
薬師殿はここで調薬をなさるのか?」
「はい、ハンネケイナのギルドに卸さねばなりませんし、懇意にしている商家もあります」
「で、この部屋に調薬室を?」
「はい、学院の設備を使うことは出来ませんので。この部屋なら十分な部屋数がありましたので」
王侯貴族でもないものがこの部屋に入ったと聞いて憤慨しているものも多いと言う。
公爵としても、娘にこの部屋を使わせるのは無理だった。
「公爵様、もしよろしければ軽く昼食などいかがですか?」
「いただこう」
アンナリーナの前で、公爵がにっこりと笑った。
今日の昼食は、ショートパスタのボロネーゼをメインに、公爵であろうと初めて目にするだろう鳥の唐揚げや、豆と胡桃の香草マヨネーズ和え、ベビーリーフとスプラウトの柑橘ドレッシングなどだ。
「これはこれは……何とも美味そうな」
「どうぞ、ごゆっくりお召し上がり下さい」
公爵は、品良く盛り付けられた料理に舌鼓を打った。
そして食事は終わり、話は令嬢の件に移っていく。
「公爵様はご自分の立場とお嬢様、どちらに重きを置いておられますか?」
食後のお茶を楽しんでいるところに突然、話の種類が変わった。
「それは一体?」
「公爵様のお心によってはこれからのお話、ずいぶん辛いものになりましょう」
「それは娘サリアの事か?」
「はい、公爵様。
お嬢様はこの学院を卒業後、国王陛下の側室に上がられるとお聞きしましたが、それには問題があるのです」
「何と?」
「お嬢様にお子を孕む能力がありません」
公爵は絶句した。
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