224 / 577
第三章
117『シュトピア到着』
しおりを挟む
ジリジリとその距離を縮めながら、見えない結界内のアンナリーナたちを取り巻いている盗賊たちを尻目に、中では初めて食べるコロッケの味と食感に盛り上がっていた。
『これはヒットだったね~』
『主人様、ではあと同じものを3台購入なさるのですか?』
今、アンナリーナはナビと念話で遣り取りをしている。
最近は安心して統括を任せているナビは、もはや片腕と言って過言ではない。
『うん、宿屋に落ち着いたらね。
あと、ネロはどうしてる?』
『ずいぶん動きも滑らかになってきました。言葉こそ話せませんが意思の疎通は完璧ですね。
生きていた頃の記憶が残っているのか読み書きが出来ますので』
『それは凄い!
次に供与するときには体力、魔力共に100を超えそうだから、何か変化があるかもしれない』
宿のある町に着くのが楽しみである。
「忘れてたけど、盗賊さんたちはまだやって来ないのかしら?」
忘れてたのかとテオドールが突っ込む前に、アンナリーナが【探査】している。
「ふうん、諦める気はないみたいね」
翌朝、まだ襲ってきていなければ馬車で突っ切って、引き離してしまう手もあるのだが、ずっと追いかけられるのも鬱陶しい。
「やっぱり処分してしまった方がいいかな……ねえ熊さん、本当に誘拐屋じゃないんだよね?」
「違うな。
それに本来、誘拐屋でも討伐は有りなんだぜ?」
アンナリーナは【ベルネット・プルルス】との付き合いがあるため誘拐屋に忌避感はないが、本来盗賊も山賊も誘拐屋も討伐対象なのだ。
「じゃあ、向こうから襲ってきたら遠慮なくやらせていただくかな」
実にのんびりとしたものである。
「うわぁ、凄く大きいね!
王都の城壁より大きいんじゃない?」
あれから2日、アンナリーナたちは今、ハルメトリア国最南端の町シュトピアの城壁を前にしていた。
例の盗賊たちは付かず離れずと言ったところで、アンナリーナたちがこの町に入るのを窺っている。
気持ち悪いが仕方ない。
「ようこそ、シュトピアへ。
こんな季節によくたどり着けたな」
門番は、半ば呆れている。
「どうしてもアグボンラオールに行かなくてはならなくてね」
そう言ってダージェが、自分とボリスの身分証とアンナリーナとテオドールのギルドカードを差し出した。
「それと彼女の従魔がいるのだが、申請はギルドで良いのかね?」
門番の兵士に肯定されて、馬車は動き出す。
この後、いつも通りギルドに立ち寄った一行を、物陰から覗く者がいたのに気づく事はなかった。
「2人とも、ここでは2泊するのでそれぞれゆっくりしてくれ」
今夜の、馬車と厩舎の夜番はイジに任せた。
早々に夕食を済ませて、結界を張って部屋に戻る。
「明日は朝から市場を見て回りたい。
熊さんは何か用事はあるの?」
「まぁ……リーナの護衛だな」
「ふふ、よろしくね。
じゃあ、私はあっちに行くからおやすみ」
宿屋の2人部屋の真ん中に、ドンとその存在を主張しているテントに、アンナリーナが入っていく。
「リーナ」
「ん?何?」
「もうこっちには戻って来ないのか?」
置いていかれる子供のような、なんとも言えない寂しそうな表情のテオドールを見て、アンナリーナが微笑んだ。
「じゃあ、テントの方に戻ってくるから、大人しく待っててよ。
お酒は自由に飲んでもいいけど、酔っ払いは追い出すよ」
クスクス笑いながら、アンナリーナがツリーハウスに戻っていくと皆揃って出迎えてくれた。
「皆んなお疲れ様。そしていつもありがとうね。
今夜はネロのステータスを供与します【体力値供与】【魔力値供与】【鑑定】」
ネロ(スケルトン、雄)
体力値 160
魔力値 120
「ネロ、どんな感じ?」
ギシギシと顎が鳴り、スケルトンの口が開いていく。
「ア、ルジサマ……」
「おめでとう、ネロ。
話せるようになってよかったね。
次はこれ、食べてみて?」
アンナリーナが取り出したのは、サクサクのラングドシャだ。
アラーニェがお茶の用意に立ち上がる。
白い、骨だけの指がさりげなくラングドシャをつまみ上げ、口に運ぶ。
シャクシャクと咀嚼し、ゴクンと嚥下して……それはどこ行った!?
この後お茶も飲んだが、漏れ出した気配はなし。
ネロが飲み食いできるのは確かだが、それがどこにいくのかは……謎だ。
「でもこれで一緒にご飯が食べられるね」
ついにネロが、食事と会話の能力を得た瞬間だった。
『これはヒットだったね~』
『主人様、ではあと同じものを3台購入なさるのですか?』
今、アンナリーナはナビと念話で遣り取りをしている。
最近は安心して統括を任せているナビは、もはや片腕と言って過言ではない。
『うん、宿屋に落ち着いたらね。
あと、ネロはどうしてる?』
『ずいぶん動きも滑らかになってきました。言葉こそ話せませんが意思の疎通は完璧ですね。
生きていた頃の記憶が残っているのか読み書きが出来ますので』
『それは凄い!
次に供与するときには体力、魔力共に100を超えそうだから、何か変化があるかもしれない』
宿のある町に着くのが楽しみである。
「忘れてたけど、盗賊さんたちはまだやって来ないのかしら?」
忘れてたのかとテオドールが突っ込む前に、アンナリーナが【探査】している。
「ふうん、諦める気はないみたいね」
翌朝、まだ襲ってきていなければ馬車で突っ切って、引き離してしまう手もあるのだが、ずっと追いかけられるのも鬱陶しい。
「やっぱり処分してしまった方がいいかな……ねえ熊さん、本当に誘拐屋じゃないんだよね?」
「違うな。
それに本来、誘拐屋でも討伐は有りなんだぜ?」
アンナリーナは【ベルネット・プルルス】との付き合いがあるため誘拐屋に忌避感はないが、本来盗賊も山賊も誘拐屋も討伐対象なのだ。
「じゃあ、向こうから襲ってきたら遠慮なくやらせていただくかな」
実にのんびりとしたものである。
「うわぁ、凄く大きいね!
王都の城壁より大きいんじゃない?」
あれから2日、アンナリーナたちは今、ハルメトリア国最南端の町シュトピアの城壁を前にしていた。
例の盗賊たちは付かず離れずと言ったところで、アンナリーナたちがこの町に入るのを窺っている。
気持ち悪いが仕方ない。
「ようこそ、シュトピアへ。
こんな季節によくたどり着けたな」
門番は、半ば呆れている。
「どうしてもアグボンラオールに行かなくてはならなくてね」
そう言ってダージェが、自分とボリスの身分証とアンナリーナとテオドールのギルドカードを差し出した。
「それと彼女の従魔がいるのだが、申請はギルドで良いのかね?」
門番の兵士に肯定されて、馬車は動き出す。
この後、いつも通りギルドに立ち寄った一行を、物陰から覗く者がいたのに気づく事はなかった。
「2人とも、ここでは2泊するのでそれぞれゆっくりしてくれ」
今夜の、馬車と厩舎の夜番はイジに任せた。
早々に夕食を済ませて、結界を張って部屋に戻る。
「明日は朝から市場を見て回りたい。
熊さんは何か用事はあるの?」
「まぁ……リーナの護衛だな」
「ふふ、よろしくね。
じゃあ、私はあっちに行くからおやすみ」
宿屋の2人部屋の真ん中に、ドンとその存在を主張しているテントに、アンナリーナが入っていく。
「リーナ」
「ん?何?」
「もうこっちには戻って来ないのか?」
置いていかれる子供のような、なんとも言えない寂しそうな表情のテオドールを見て、アンナリーナが微笑んだ。
「じゃあ、テントの方に戻ってくるから、大人しく待っててよ。
お酒は自由に飲んでもいいけど、酔っ払いは追い出すよ」
クスクス笑いながら、アンナリーナがツリーハウスに戻っていくと皆揃って出迎えてくれた。
「皆んなお疲れ様。そしていつもありがとうね。
今夜はネロのステータスを供与します【体力値供与】【魔力値供与】【鑑定】」
ネロ(スケルトン、雄)
体力値 160
魔力値 120
「ネロ、どんな感じ?」
ギシギシと顎が鳴り、スケルトンの口が開いていく。
「ア、ルジサマ……」
「おめでとう、ネロ。
話せるようになってよかったね。
次はこれ、食べてみて?」
アンナリーナが取り出したのは、サクサクのラングドシャだ。
アラーニェがお茶の用意に立ち上がる。
白い、骨だけの指がさりげなくラングドシャをつまみ上げ、口に運ぶ。
シャクシャクと咀嚼し、ゴクンと嚥下して……それはどこ行った!?
この後お茶も飲んだが、漏れ出した気配はなし。
ネロが飲み食いできるのは確かだが、それがどこにいくのかは……謎だ。
「でもこれで一緒にご飯が食べられるね」
ついにネロが、食事と会話の能力を得た瞬間だった。
5
あなたにおすすめの小説
毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。
克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。
不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます
天田れおぽん
ファンタジー
ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。
ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。
サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める――――
※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。
罠にはめられた公爵令嬢~今度は私が報復する番です
結城芙由奈@コミカライズ連載中
ファンタジー
【私と私の家族の命を奪ったのは一体誰?】
私には婚約中の王子がいた。
ある夜のこと、内密で王子から城に呼び出されると、彼は見知らぬ女性と共に私を待ち受けていた。
そして突然告げられた一方的な婚約破棄。しかし二人の婚約は政略的なものであり、とてもでは無いが受け入れられるものではなかった。そこで婚約破棄の件は持ち帰らせてもらうことにしたその帰り道。突然馬車が襲われ、逃げる途中で私は滝に落下してしまう。
次に目覚めた場所は粗末な小屋の中で、私を助けたという青年が側にいた。そして彼の話で私は驚愕の事実を知ることになる。
目覚めた世界は10年後であり、家族は反逆罪で全員処刑されていた。更に驚くべきことに蘇った身体は全く別人の女性であった。
名前も素性も分からないこの身体で、自分と家族の命を奪った相手に必ず報復することに私は決めた――。
※他サイトでも投稿中
婚約者を姉に奪われ、婚約破棄されたエリーゼは、王子殿下に国外追放されて捨てられた先は、なんと魔獣がいる森。そこから大逆転するしかない?怒りの
山田 バルス
ファンタジー
王宮の広間は、冷え切った空気に満ちていた。
玉座の前にひとり、少女が|跪い《ひざまず》ていた。
エリーゼ=アルセリア。
目の前に立つのは、王国第一王子、シャルル=レインハルト。
「─エリーゼ=アルセリア。貴様との婚約は、ここに破棄する」
「……なぜ、ですか……?」
声が震える。
彼女の問いに、王子は冷然と答えた。
「貴様が、カリーナ嬢をいじめたからだ」
「そ、そんな……! 私が、姉様を、いじめた……?」
「カリーナ嬢からすべて聞いている。お前は陰湿な手段で彼女を苦しめ、王家の威信をも|貶めた《おとし》さらに、王家に対する謀反を企てているとか」
広間にざわめきが広がる。
──すべて、仕組まれていたのだ。
「私は、姉様にも王家にも……そんなこと……していません……!」
必死に訴えるエリーゼの声は、虚しく広間に消えた。
「黙れ!」
シャルルの一喝が、広間に響き渡る。
「貴様のような下劣な女を、王家に迎え入れるわけにはいかぬ」
広間は、再び深い静寂に沈んだ。
「よって、貴様との婚約は破棄。さらに──」
王子は、無慈悲に言葉を重ねた。
「国外追放を命じる」
その宣告に、エリーゼの膝が崩れた。
「そ、そんな……!」
桃色の髪が広間に広がる。
必死にすがろうとするも、誰も助けようとはしなかった。
「王の不在時に|謀反《むほん》を企てる不届き者など不要。王国のためにもな」
シャルルの隣で、カリーナがくすりと笑った。
まるで、エリーゼの絶望を甘美な蜜のように味わうかのように。
なぜ。
なぜ、こんなことに──。
エリーゼは、震える指で自らの胸を掴む。
彼女はただ、幼い頃から姉に憧れ、姉に尽くし、姉を支えようとしていただけだったのに。
それが裏切りで返され、今、すべてを失おうとしている。
兵士たちが進み出る。
無骨な手で、エリーゼの両手を後ろ手に縛り上げた。
「離して、ください……っ」
必死に抵抗するも、力は弱い。。
誰も助けない。エリーゼは、見た。
カリーナが、微笑みながらシャルルに腕を絡め、勝者の顔でこちらを見下ろしているのを。
──すべては、最初から、こうなるよう仕組まれていたのだ。
重い扉が開かれる。
リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?
あくの
ファンタジー
15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。
加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。
また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。
長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。
リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!
留学してたら、愚昧がやらかした件。
庭にハニワ
ファンタジー
バカだアホだ、と思っちゃいたが、本当に愚かしい妹。老害と化した祖父母に甘やかし放題されて、聖女気取りで日々暮らしてるらしい。どうしてくれよう……。
R−15は基本です。
ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします
未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢
十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう
好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ
傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する
今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる