魔力値1の私が大賢者(仮)を目指すまで

ひーにゃん

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第三章

132『ざまぁ』

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 アッシュピンクの髪に紫の瞳。
 以前は手入れが行き届いていた髪は痛み、見る影もない。
 田舎とはいえ村の有力者の娘だった彼女はいつも比較的上質な服を着ていたものだが、今纏っているローブは、王都では普通のものだ。
 そして今、彼女は猿轡を噛まされ、ロープで縛られ、魔力封じの首輪すらはめられている。
 その彼女、ナタリアは怪訝そうにアンナリーナを見ていた。


「私のこと、忘れちゃった?
 ナタリア」

 指先からの微量なレーザーで猿轡を切ったアンナリーナは、ローブのフードを下ろし、ナタリアを見つめる。

「あなたらしい浅慮さと言うか……
 それでもあなたのした事は許されない事よ」

 ここでようやく、目の前にいるのがアンナリーナだと気づいたナタリアが叫んだ。

「あんた、リーナ!?」

「あら、やっと気づいてもらえたかしら」

 にんまりと黒い笑みを浮かべて威圧をかける。
 ナタリアは地面に押し付けられて動けなくなった。
 その薄汚れたアッシュピンクの髪を鷲掴み、腰を下ろして視線を近づけたアンナリーナがほくそ笑む。

 目の前にいるアンナリーナの、はだけたローブの袷から覗くのは一目でわかるほど高価な絹のチュニックだ。
 その腰のベルトもブーツも、自分には到底手の届かない高級品。
 そして、最初に気づくのが遅れた原因、あまりにも様変わりしているアンナリーナの見目……平凡だった栗色の髪に金髪が混じり、瞳の色さえも変わっている。
 とても以前のアンナリーナと思えないほどの変わりように、ナタリアはほぞを噛む。

「あんた、あんた、村に何をしたのよ!!」

「人聞きの悪い……それじゃ、私が何かしたみたいじゃないの?」

 今はもう、この場にいる全員が耳を凝らして、ふたりの話を聞いている。

「だって、あんたがいなくなってから、村が襲われたそうじゃないの!」

 そこに、テオドールが割って入った。

「話を中断させて悪いがリーナ、一体どういう事なんだ?」

「このナタリアって言うのは、私が生まれ育った村で、と~っても “ お世話 ”になったひと」

 リーナの話し方で、言葉通りでない裏の真実を悟った皆は、さらに冷たい目でナタリアを睨みつける。

「私は昔、魔力を封印されていてね、魔法が使えなかったわけなんだけども……その頃、ねぇ?
 それと村が襲われたのは、魔獣の森に火を放った村人の、自業自得なんじゃないの?」

「なっ! 魔獣の森に火をつけたのか!?」

「私はもうその頃、師匠の庵から旅立っていたから、どうなったのか知らないけど、火事があったのは知ってるわ。
 あなたはその時、魔法学校にいたのよね?」

 アンナリーナはギフト授与式の夜に逃走したため、彼女らのその後のことは把握していなかったが、おそらく首都に向かったはずだ。

「そうよ!
 でも村が魔獣に襲われて、うちもなにもかも失って……たった一学期で辞めざるを得なかったのよ!」

「それは違うと思うわ。
 学校は優秀な人材なら、衣食住の面倒を見てでも学生を手放さない。
 ……あなたは魔法言語はおろか、大陸共通語すら読み書きができないでしょう?早々に放り出されたのよね?
 だって魔力値962……スキルがファイヤーとウォーターだけなんて魔法職って言えるのかしら?」

 子供の頃からオツムの出来は最悪だったものね、と高らかに笑うアンナリーナ。
 ナタリアがせめて大陸共通語だけでもマスターしていれば、最下級の攻撃魔法【火球】や【水球】などを覚えられたかもしれない。
 だが、魔力値が低い彼女の事、すでに先は見えていたのだろう。

「まあ、どちらにしても今回のことでギルドカードは没収、ギルドからは永久追放……あんた、馬鹿ね」

「そんな! 嘘、嘘よーっ!」

「俺たちは次の町でおまえをギルドの保安部に突き出す!
 こんな悪質な嘘つき、ただじゃおかない」

 サムエルの言葉に確固たる決意を感じて、アンナリーナはここで手を引く事に決めた。

「じゃあ、熊さん。行こうか」

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