243 / 577
第四章
3『お土産』
しおりを挟む
見慣れぬ木の箱の蓋を開けると、信じられないほど薄い紙に包まれた、純白の総レース地が現れた。
それと共にアラクネ絹が収められていて、その貴重さはこの場にいるものならわからないものはいない。
「なんて見事な……
王妃様、ご覧くださいませ。
この布はひょっとして」
「ご無礼かとも思いましたが、私がいつも身につけているアラクネ絹です。
お好きな色がわからなかったので白生地に致しましたが、もしお望みならこちらで染めさせていただきます」
それは “ 唯一無二 ”のドレスを仕立てるという事。
王妃を仰いだ女官長は、歓喜の笑みを浮かべた。
「リーナ様、本当にありがとう。
私……とっても嬉しいの」
アンナリーナの手を握りしめ、ポロポロと涙を零す王妃の様子にたじろいでしまう。
「リーナ様……ありがとうございます」
女官長も侍女たちも、涙、涙なのだが皆笑っている。
そのへんの事情がわからないアンナリーナは、さらっとスルーする事にしたようだ。
手許の、ビーズ刺繍のバッグからベルギーレースのハンカチを取り出し、そっと王妃の涙を拭う。
「リーナ様……」
「王妃様、どうかリーナと呼び捨てて下さいませ」
「そんな事……」
「リーナと」
「では、ふたりきりの時はお姉様と」
「それもずいぶん問題があると思いますが」
周りの女官長たちが祈るような面持ちで見つめている。
「では、そういたしましょう。
王妃様、お土産はまだまだあるんですのよ」
表情を明るくした王妃が、何度も頷く。
「王妃様、お茶会のテーブルに参りましょう。
もう辺境伯夫人も参内しているはずでございます」
女官長の言葉に、侍女たちが王妃の化粧を直し、庭に向かった。
後宮でも王妃のためだけにあるローズガーデンの、今一番見ごろの枝振りの正面に茶会の場が設えてあった。
ギィ辺境伯夫人・ヴィヴィアンヌがカーテシーで出迎える中、王妃、続いてアンナリーナが現れた。
和やかな挨拶が交わされ、茶会が始まる。
「リーナのお噂は色々聞かせてもらっていたの。
エレアント公爵が、リーナのところでとても珍しいものをご馳走になったと」
「あっ!」
「どうなさったの?」
アンナリーナは一瞬、口を開けて、慌てて掌で覆い隠した。
「私、忘れてました……
王妃様の侍女の方々へのお土産を用意してたんです。
あとでお渡ししますね」
教育の行き届いた侍女たちは、表立ってはしゃいだりしないが、その瞳は喜びに輝いている。
「そのお土産って、私も見たいわ」
王妃のその言葉で、新たに運ばれてきたテーブルに箱が積み上げられる。
「これはマカロンと言います。
あまり日持ちしませんのでなるべく早く召し上がって下さいね。
それと、この薄い箱にはハンカチが入っています……何人くらいいらっしゃるんですか?
これで足りるのかしら」
そう言ってアンナリーナが土産の品々を取り出すのは、空間付与したビーズバッグの中からだ。
「マカロンっていうの、私も食べたいですわ」
ウルウルと瞳を潤ませて女官長を見上げる王妃。
その姿はまるで小動物のようにかわいらしい。
「しょうがありませんわね。
リーナ様、申し訳ございませんが御前で毒味させて頂きます」
「どうぞ、当然の事ですわ。
ではもう一種類、出しましょうか」
ゴデ○バの、デザイン性に優れたパッケージに包まれた、食するのが惜しくなるようなチョコレートの数々に、アンナリーナ以外の全員が目を瞠る。
「こちらは少し甘みが強いので、お茶にお砂糖は入れない方が良いですね」
この世界にはないチョコレートの社交界デビューである。
それと共にアラクネ絹が収められていて、その貴重さはこの場にいるものならわからないものはいない。
「なんて見事な……
王妃様、ご覧くださいませ。
この布はひょっとして」
「ご無礼かとも思いましたが、私がいつも身につけているアラクネ絹です。
お好きな色がわからなかったので白生地に致しましたが、もしお望みならこちらで染めさせていただきます」
それは “ 唯一無二 ”のドレスを仕立てるという事。
王妃を仰いだ女官長は、歓喜の笑みを浮かべた。
「リーナ様、本当にありがとう。
私……とっても嬉しいの」
アンナリーナの手を握りしめ、ポロポロと涙を零す王妃の様子にたじろいでしまう。
「リーナ様……ありがとうございます」
女官長も侍女たちも、涙、涙なのだが皆笑っている。
そのへんの事情がわからないアンナリーナは、さらっとスルーする事にしたようだ。
手許の、ビーズ刺繍のバッグからベルギーレースのハンカチを取り出し、そっと王妃の涙を拭う。
「リーナ様……」
「王妃様、どうかリーナと呼び捨てて下さいませ」
「そんな事……」
「リーナと」
「では、ふたりきりの時はお姉様と」
「それもずいぶん問題があると思いますが」
周りの女官長たちが祈るような面持ちで見つめている。
「では、そういたしましょう。
王妃様、お土産はまだまだあるんですのよ」
表情を明るくした王妃が、何度も頷く。
「王妃様、お茶会のテーブルに参りましょう。
もう辺境伯夫人も参内しているはずでございます」
女官長の言葉に、侍女たちが王妃の化粧を直し、庭に向かった。
後宮でも王妃のためだけにあるローズガーデンの、今一番見ごろの枝振りの正面に茶会の場が設えてあった。
ギィ辺境伯夫人・ヴィヴィアンヌがカーテシーで出迎える中、王妃、続いてアンナリーナが現れた。
和やかな挨拶が交わされ、茶会が始まる。
「リーナのお噂は色々聞かせてもらっていたの。
エレアント公爵が、リーナのところでとても珍しいものをご馳走になったと」
「あっ!」
「どうなさったの?」
アンナリーナは一瞬、口を開けて、慌てて掌で覆い隠した。
「私、忘れてました……
王妃様の侍女の方々へのお土産を用意してたんです。
あとでお渡ししますね」
教育の行き届いた侍女たちは、表立ってはしゃいだりしないが、その瞳は喜びに輝いている。
「そのお土産って、私も見たいわ」
王妃のその言葉で、新たに運ばれてきたテーブルに箱が積み上げられる。
「これはマカロンと言います。
あまり日持ちしませんのでなるべく早く召し上がって下さいね。
それと、この薄い箱にはハンカチが入っています……何人くらいいらっしゃるんですか?
これで足りるのかしら」
そう言ってアンナリーナが土産の品々を取り出すのは、空間付与したビーズバッグの中からだ。
「マカロンっていうの、私も食べたいですわ」
ウルウルと瞳を潤ませて女官長を見上げる王妃。
その姿はまるで小動物のようにかわいらしい。
「しょうがありませんわね。
リーナ様、申し訳ございませんが御前で毒味させて頂きます」
「どうぞ、当然の事ですわ。
ではもう一種類、出しましょうか」
ゴデ○バの、デザイン性に優れたパッケージに包まれた、食するのが惜しくなるようなチョコレートの数々に、アンナリーナ以外の全員が目を瞠る。
「こちらは少し甘みが強いので、お茶にお砂糖は入れない方が良いですね」
この世界にはないチョコレートの社交界デビューである。
5
あなたにおすすめの小説
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革
うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。
優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。
家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。
主人公は、魔法・知識チートは持っていません。
加筆修正しました。
お手に取って頂けたら嬉しいです。
ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします
未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢
十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう
好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ
傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する
今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
幼女と執事が異世界で
天界
ファンタジー
宝くじを握り締めオレは死んだ。
当選金額は約3億。だがオレが死んだのは神の過失だった!
謝罪と称して3億分の贈り物を貰って転生したら異世界!?
おまけで貰った執事と共に異世界を満喫することを決めるオレ。
オレの人生はまだ始まったばかりだ!
【完結】天下無敵の公爵令嬢は、おせっかいが大好きです
ノデミチ
ファンタジー
ある女医が、天寿を全うした。
女神に頼まれ、知識のみ持って転生。公爵令嬢として生を受ける。父は王国元帥、母は元宮廷魔術師。
前世の知識と父譲りの剣技体力、母譲りの魔法魔力。権力もあって、好き勝手生きられるのに、おせっかいが大好き。幼馴染の二人を巻き込んで、突っ走る!
そんな変わった公爵令嬢の物語。
アルファポリスOnly
2019/4/21 完結しました。
沢山のお気に入り、本当に感謝します。
7月より連載中に戻し、拾異伝スタートします。
2021年9月。
ファンタジー小説大賞投票御礼として外伝スタート。主要キャラから見たリスティア達を描いてます。
10月、再び完結に戻します。
御声援御愛読ありがとうございました。
【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……
buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。
みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……
城で侍女をしているマリアンネと申します。お給金の良いお仕事ありませんか?
甘寧
ファンタジー
「武闘家貴族」「脳筋貴族」と呼ばれていた元子爵令嬢のマリアンネ。
友人に騙され多額の借金を作った脳筋父のせいで、屋敷、領土を差し押さえられ事実上の没落となり、その借金を返済する為、城で侍女の仕事をしつつ得意な武力を活かし副業で「便利屋」を掛け持ちしながら借金返済の為、奮闘する毎日。
マリアンネに執着するオネエ王子やマリアンネを取り巻く人達と様々な試練を越えていく。借金返済の為に……
そんなある日、便利屋の上司ゴリさんからの指令で幽霊屋敷を調査する事になり……
武闘家令嬢と呼ばれいたマリアンネの、借金返済までを綴った物語
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる